ECサイトを成功に導くターゲットの設定のポイントとは?

田島 嵩之

この連載では、中小企業の皆様が、ECサイトを活用し、売上を伸ばしていくためのヒントをご紹介します。

【第1回】中小企業がECサイトを活用できていない3つの理由 : https://www.ecnomikata.com/column/10932/
【第2回】ECサイトの成功の鍵とは?成否を分ける「リピート顧客」攻略法: https://www.ecnomikata.com/column/11848/

今回はECサイトを始める時に、「誰にこの商品を紹介するのか」「どういう人に対して商品価値を提供するのか」という【ターゲット設定】の基本的な考えをご紹介します。

ありがたいことに私どもは、通販企業の方とプロモーションに関するご相談をよくいただきます。その中で、よくあるのが下記のようなお話です。

「○○という商品を売っています、これは△△という成分が入っており、□□という特徴があるから、絶対に売れます。(売れないとしたら広告手法が悪い)」
「リスティングもアフィリエイトもリターゲティングも上手くいかない。何かいい広告枠はありませんか?」

これらは“非常に危うい”考えです。なぜなら、どちらも購入する顧客の心理がおざなりになっているからです。

ECサイトこそターゲット設定が必要な2つの理由

例えば、ラーメン屋を始めようと思ったら、下記のようなことはイメージがしやすいと思います。

こってり大盛りラーメンを売りたい→学生が多い地域で価格設定を安めに設定する
あっさり系塩ラーメンを売りたい→OLが多いビジネス街で軽いお酒も飲めちゃう

ところが、実店舗ではないECサイトになると、途端に「どうターゲット設定をすればいいのか?」がわからなくなる方も多いようです。

しかしECサイトこそ、ターゲットの設定やユーザーへの適切な訴求が大切な理由が2つあります。

理由1:ユーザーはニーズをもって検索をしているので、ニーズに合わないと興味すら持ってもらえない

現在、ネット広告で主流なのはやはり“検索”に関係する広告です。

そのため、検索をした人が何を求めてサイトに訪れるのかをイメージして、目的に合うような情報を返してあげることが重要です。つまり、○○という悩みを持った人に対して、「○○を解消できるものがあります!」と正確に提示する。ダイエットサプリを探している人に対して、「これを飲んだら肌がキレイになるよ!」と言われても当然興味を持ってもらえません。


理由2:競合商品との比較が簡単だから、「自分に一番合っている!」と認識させることが必要

更に実際に検索をしてみると、ライバル企業の広告や情報も表示されます。ECサイトは実店舗よりも商品の比較・分析がしやすいので、ユーザーは数ある中から自分にメリットのある選択をします。

その中でユーザーの興味を惹くためには、「この商品が、自分には一番合っている!」と認識していただく必要があります。ランディングページで訴求する内容ももちろんですが、興味のマッチングが人によって異なるので誰に向けて訴求をするのかも重要なことがわかります。

ターゲット設計ができている例・できていない例とは?

ターゲット設計ができている例・できていない例とは?

その違いとは、「商品の訴求軸がハッキリしていること」です。良い例と悪い例を1つずつご紹介します。

【ターゲット設定ができているケース:ロート製薬 セノビック】

セノビックは身長に悩んでいるお子さんを持つママさんに向けた訴求をしてみます。実際にサイトを見ると、どういうターゲット設定なのかわかります。

子供の年齢は小学生中~高学年(10歳前後)、どちらかというと男の子でランディングページにも男の子が使われています。ターゲットとして40歳前後のママ向けの訴求をする必要があることからおそらく同年代ほどの女性が入っているように見受けられます。

当然ながらカルシウムの訴求がメインとなり、付随して鉄やビタミンDを訴求しています。“成長期応援飲料”というキャッチコピーもママさんの子供に対しての気持ちを上手く表現したコピーといえます。セノビックという商品名もバッチリですね。

逆にターゲット設定ができていないのは、下記のようなケースです。例えば、こんなサプリメントを想像してください。

【ターゲット設定ができていないケース:ダイエットサプリメント】
・ダイエットサプリで食事の置き換えができる
・美容にも良い成分が入っている
・便通も良くなり、ハーブでストレスも軽減できる
・ランディングページには外国の方を使っている
・ナチュラル系のパッケージ

この商品は訴求軸が複数あるため、各訴求が非常に薄くなっています。結局何に対して効果があるのかがよくわかりませんし、悩みを持った顧客に対して価値を提供できていません。そもそも男性に向けているのか、女性に向けているのか、何歳くらいの人をお客さんとして想定しているのかが不明瞭です。

いかがでしたか?
実際はこのサプリメントのケースのように「この成分もいい、こっちの成分もいいものが入っているのだからみんな買ってね!」と顧客を無視した商品訴求をしているケースは非常に多いです。

具体的なターゲット設定の考え方のポイントまとめ

それでは、具体的にどのようにターゲット設定をすればいいのでしょうか。

ターゲット設定に必要なのは
① 誰に向けてのサービスなのか
② 商品の独自性、特徴、強みが何か
という2軸を別々に考えます。

①誰に向けてのサービスなのか
対象の商品をWeb上でプロモーションする上で誰に向けたサービスかを明確にします。
ここではある程度、詳細にターゲットの設定を意識しましょう。

・性別:男性/女性
・年齢:○○歳~○○歳(範囲5歳ほど)
・結婚:既婚/未婚
・世帯年収:○○○万円
・商品に対して想定される状況(例):最近肌のくすみを気にし始めた。通販で幾つかの石鹸を試してきたが、あまり効果を実感できない。更に洗顔後ピリピリと肌が荒れるようになってきたので、天然由来の石鹸やツッパリ感のない石鹸や新しい手法を見つけたい。
・他の悩み(例):くすみ・乾燥肌・シワ・肌荒れ・化粧ノリが悪い・毛穴が開いている

このように切り分けると、明確な顧客像ができます。この顧客像を軸に、ランディングページ作成や広告配信をしましょう。

また、さらに実際に上記のユーザーになりきってみて、商品に対する先入観を排除して検索から商品に至るまでを“時間軸”もイメージしてみるのもおすすめです。

例)敏感肌向けのスキンケア商品の場合
1. 乾燥肌、かさつきが気になり始め、洗顔方法の見直しを意識し始める
2. 色々な石鹸を沢山使ってきたが、どれもいまいち実感がわかない、あるいは肌に合わず、何かいい洗顔方法(美顔器、パック、蒸しタオル等)を調べている
3. 肌が突っ張ったりすることが、実は敏感肌じゃないかと気付く
4. 不安になり、敏感肌向けの洗顔方法を模索する
5. 検索して一番上に来た商品を実際に購入して試してみる

当然ながらそれぞれユーザーに時間軸において、訴求内容や商品は変化します。

例えば、敏感肌向けの石鹸を訴求するのであれば、【4】の時間軸のユーザー、くすみを取るような美顔器であれば【2】のユーザーといった形です。

必ず、どの属性のユーザーに対して、どの時間軸で訴求するのかを明確にしましょう。

②商品の独自性、特徴、強みが何か
自社の商品の独自性をはっきりさせることは大切です。そのために、自社の商品が他社と比べてどういった優位性があるのか、それは成分か配合量か産地かなど自社商品の強み、また弱点を洗い出します。下記の問の答えを考えてみてください。

・他社にない自社の強みはなにか
・他社でも既に訴求している、自社の強みはなにか
・他社ではまだ訴求していない、自社の強みはなにか
・顧客にどのような価値(メリット)を提供できるのか
―その価値があると、何が、どのようになるのか(ユーザーの悩み不安、それに対してどのように解決をするか?)

このように一度商品に対しての情報を洗い出してみると、悩みをもつユーザーが感じるメリットと、実際の商品とのギャップが明確になります。このギャップを埋めるのが大切です。


そもそも商品価値・提供価値・販売価格が適正であれば、ECサイトで成功する可能性は上がります。広告表現の変更で、適切に顧客に対してメリットを提供できるのかどうかは、考えてみてください。

ECサイトの費用の中で、広告費の比率は決して小さくありません。その投資を効果的にするために、売上規模に関わらずしっかり「ターゲット設定」をするようにしましょう。


著者

田島 嵩之 (TAJIMA TAKAYUKI)

WEBマーケティング戦略推進本部 販売代行2部
1988年群馬県生まれ。成城大学を卒業後、株式会社チャンスイット(現:インフォニア株式会社)へ入社。通販王国と言われる福岡営業所の立ち上げに参画し、その後一貫して“単品リピート通販”クライアントを担当。商品企画設計・販促企画・クリエイティブ、CRM企画まで多岐にわたり、社内表彰ではMVP継続受賞の実績。その後“単品リピート通販”向けの販売代行モデルに共感し、ソウルドアウト株式会社に入社。地方中小の通販クライアントの利益追求を目指す。

ソウルドアウト株式会社 http://www.sold-out.co.jp/