【第1回】 なぜ今、台湾なのか ~最新台湾EC事情~

小野 雄輝

近年、越境ECやインバウンドマーケティングなど、ビジネスにおける海外進出に関する話題をよく耳にします。

飽和しつつある日本市場の停滞や、海外の日本製品への需要の高まりなどを背景として、日本国外へのEC展開を検討される企業が増えているのです。その中で、最近注目されつつある台湾。それはなぜなのか、本連載を通じて最新の台湾のEC事情についてお伝えしていきます。

台湾は参入しやすい市場?

台湾は、日本と同じようにインターネットやスマートフォンが普及し、年間110%超のEC成長率を誇る魅力的な市場です。

クレジットカードや代金引換、コンビニ支払など決済方法も多様化し、物流網も整い、EC比率(小売売上全体に占めるEC購入額の比率)は小売業界の規模を超えています。

(参考情報)
https://www.ecnomikata.com/ecnews/10130/
https://www.ecnomikata.com/ecnews/11222/

ここだけ聞くと、今すぐにでも飛び込みたい市場ですが、果たして実態はどうなのでしょうか?

成功の背景にあるものとは?

誤解を恐れずにお伝えしますと、自社でECサイトを展開する企業はまだまだ少なく、一昔前の日本のようなモール中心のEC市場で成功している企業はごく一部です。

未だ、「商品が届かなかったらどうしよう?」「不良品だったらどうしよう?」などといった消費者心理があるように感じる一方で、Yahoo!奇摩・PChome・MOMOといった台湾のモールはブランドと知名度が確立しており、店舗への集客力に加えて消費者への信頼度が高いです。

Yahoo!奇摩は、購物中心・超級商城・拍賣の3つがあり、購物中心がB2C、超級商城がB2B2C、拍賣(オークション)がC2Cです。

PChomeは台湾EC市場における、ECの老舗で台湾版Amazonとも言われています。出展店舗は1万5,000店を超え、取扱商品数は1,000万件以上の台湾最大のショッピングモールです。

MOMOは、EC・カタログ通販・TVショッピングのチャネルをがあり、女性顧客をターゲットにしているECサイトです。

また、台湾のWEBマーケティングにおいて、インフルエンサーであるKOL(Key Opinion Leader)が良く活用されるのも、KOL(Key Opinion Leader)に対する信頼が背景としてあるでしょう。

ECで購入されている商品のカテゴリのメインが、生活用品、衣服、文房具などであることから、台湾ECは、台北などの北部集中に発展している北高南低の経済事情や、発達した決済や物流を背景に、「便利さ」や「手軽さ」で育った市場であると言えると思います。

台湾へ越境ECを行うメリットは?

私のこれまでの経験から、このような台湾EC市場おいては、モールだけではなく自社ECでの展開をお勧めいたします。

モールは前述の通り、集客力に加え、消費者への信頼があるため、比較的物が売りやすいです。一方の自社サイトは、顧客との関係構築や顧客の分析がしやすく、データ分析に基づいて施策を打つことが可能です。

台湾は、日本と比べてインターネット広告の媒体費が安価であり、台湾ECでテストマーケティングを展開されている企業の成功事例が出てきています。また、台湾ECにおいては顧客との関係構築や顧客分析を十分にできている企業が少ないです。これらの理由から、新規顧客獲得からCRMまでの一連の流れを、日本で培ったノウハウを持ち込んで実施できれば、ビジネスをスケールさせることができる大きな可能性を秘めていると思います。

親日国台湾は、日本と同じようにインフラが整っているが、モール中心で自社ECでの成功例が少ない。
これこそが私が台湾ECをお勧めする最も大きな理由です。


(次回、第2回は、「日本と台湾のECの違い」を予定しています)


著者

小野 雄輝 (Yuki Ono)

2005年サイバーエージェント入社。東京で自社メディアの代理店向けセールスを担当後、自社メディアの大阪営業所の立ち上げに参画。2008年にはインターネット広告事業本部へ異動し、関西、九州エリアのダイレクトマーケティング領域における新規顧客開拓に従事。2011年、2013年にインターネット広告事業本部管轄の全体総会にて、半期営業MVPを受賞。2015年、サイバーエージェント 台湾支店を立ち上げ、台湾現地日系企業のWEBマーティング支援に従事。