【第9回】価格を下げると「お店の価値」と「商品価値」も同時に下がる?

古屋悟司

究極の安売り。締め切り16時の即日発送。この二つを武器にして花を売り上げ会社は急成長。しかし、神様は僕に試練を与えた。

売上7割減。花を仕入れるお金もない状況から、ビジネスモデルを大幅に変更し、モノを売らずにコトを売るを実践。その結果、約18カ月でV字回復を果たしたが、その道のりは平坦なものではなかった。

花農家さんとのつながり、市場との連携、管理会計の恩恵。全てが複雑に絡み合い価格競争から抜け出すことに成功。ゲキハナという名の花屋はカゲキなシゲキを受けながら、カンゲキを売る花屋に生まれ変わった。

全10回。すべてを惜しみなくあなたにお伝えしようと思います。僕に起こったウソみたいなホントの話を。

※過去のコラムはこちらから
https://www.ecnomikata.com/column/12409/

ベンツ半額!グッチ半額!エルメス半額!田園調布の豪邸半額!

こんなキャッチコピーを見たら、恐らく全国から大勢の人が殺到し、ものすごい売れ行きでモノが売れていくと思います。

憧れのステイタス商品が、いきなりあり得ない価格で販売されれば、爆発的に売れるのは当たり前です。しかし同時に、その商品の持つステイタスも一気に落ちてしまい、魅力も半減してしまう可能性を秘めています。今日はそんなお話と、コトを売る事のメリットについてお伝えしていきたいと思います。

商品価値は価格と比例しやすい

安くて悪いもの。安くても良いもの。高くて良いもの。高くて悪いもの。全ての商品をもしも、品質と価格を軸にして分類するとするならば、この4つになると思います。しかし今のご時世、安くて悪いものと、高くて悪いものは正直なところ売れませんし、あまり見かけなくなりました。

安くて良いものは、“それなりに良質なもの”であって、安くて最高なものというのはなかなか存在しません。あるとするならば、それはイノベーションを起こした商品ではないでしょうか。

一般的に、売れ行きが良く品質の高い商品は、比較的高価な商品が多いのも事実です。また、高価な商品は、所有する喜びを感じることが多いのではないでしょうか。

商品の価値というものは、ざっくりと考えると5つの価値に分類されます。

品質が高い商品であるという価値(スペック)
・所有する喜びがある価値(ドヤリング)
・稀少性という価値(レア)
・知る人ぞ知る商品である価値(自己満足)
・そのお店や地域、社会に貢献できる価値(サポート)
・みんなが持っている流行の商品である価値(ミーハー)


上記5つの商品の価格が安かった場合、実際に友達や周りの人に自慢する事ができません。この心理が重要で、所有する喜びや、貢献できている実感などは、ある一定の身銭を切ったほうが実感しやすい傾向になると思います。

苦労して手に入れたものや経験は、いつまでも大切にします。もしも、お正月にみんなで食べる「おせち」が、3,000円で販売されていたら?それをわざわざ選んで、家族で楽しみにするのは少しわびしい気持ちになります。おせちは、普段買わないであろう高価な食材で作られていて、ちょっと高いからこそ、新年を迎えるとっておきの瞬間にふさわしい料理なのです。

それだけ、人はお金というものに、ある一定の価値を置いています。そのため、価格が平均よりも高いものは、良いものであるのではないだろうかと考えるのです。

もちろん、価格だけが高く満足度の低い商品は、クレームになるかSNSで炎上するか、どちらにせよ迷惑しかかけません。

そのため、ただ単に値上げをすれば価値が高まるという、短絡的な答えにはなりません…が、相応の価格に設定する事で、商品が持つ価値は高まる傾向にあります。

価格を下げるとお店の価値は下がるのか?

価格を上げれば商品の価値が高まる傾向にあります。しかし反対に価格を下げた場合、商品価値だけではなく、お店の価値も一緒に下がってしまうのではないでしょうか?

例えば、

「レクサス激安!今なら半額!超お買い得!」

というポスターが、レクサスのショールームに強調して貼られていたら、一瞬目を疑うと思います。そして「訳あり品かな?」とか、「え?なんで?」と感じてしまいます。もちろん素直に、「チャンスだ!買おう!」と思う人もいるかもしれませんが、前者の方が多いような気がします。

なぜこのような思考回路になってしまうのでしょうか?なぜならレクサスは、高級車(高価で価格が高い車)であるというブランドイメージを持っているからです。そして、レクサスブランドを展開するトヨタも、そういったステイタスを売りたいと、ブランド作りに励んでいます。

レクサスのドアを開けた瞬間の皮の香りや、シートに座ったときのドキドキ感。道で颯爽と走る姿を見て「かっこいい。いつか乗ってみたい。」と思う憧れの気持ち。これらは全て、その車が持つ品質だけではなく、所有するハードルが高いが故に得られる「コト」です。

もしも20代の免許取り立ての若者や、フリーターがレクサスを乗り回していたら、世の社長殿たちはレクサスに乗りたがらないはずです。そして、レクサスの価値は下がり、ステイタスを感じない車になってしまいます。

「普通の人よりも良い車に乗っているんだぜ!」というドヤリングは少なからずあるはずで、「安全を極めているから」とか「燃費が最高に良いから」というようなスペックが魅力なのではありません。(外車に比べて故障しない信頼はありますよね)

もしも、レクサスの定価が半額以下になってしまったら、レクサスのブランドイメージは一般的な車というイメージになります。そして高級店だというお店の魅力も、一流だと思っていたデザイナーの魅力も、スタイリッシュな車のデザインの魅力も、下がってしまうのです。

価格を上げるとクレームがお問い合わせに変化する

これは、激安店から比較的高価格帯へとビジネスモデルを変化させた僕が、実際に体験した現象です。

激安店を営んでいる時には、非常にクレームも多く、「指定した時間に届かない」「商品がイメージと違う」などと言ったようなお叱りを受ける事もしばしばでした。

しかし、高価格帯へと商品をシフトした際には、同じ状況なのにも関わらず、「指定した時間に商品が届かないがどうしたら良いでしょう?」「商品がイメージと違うのですが、元々こう言うものですか?」と言ったように、お客さんが冷静に質問を投げかけてくれるようになりました。

もちろん、丁重にお詫びをしながら、真摯にご対応はさせていただく事には変わりはないのですが。以前と変わりお客さんが冷静な状態なので、コミュニケーションもしっかり取れ、きちんとしたご対応が取りやすくなりました。

安いからクレームが出やすいという事ではないと思います。しかし、この状況に対して、お客さんの心理状態の仮説を立てていくと次のようになります。

・それなりの金額のきちんとした商品を購入しているので、何かの間違いではないだろうか?
・きちんとした会社(であろう)所から買っているので、まずは聞いてみよう。


お客さんはこういった心理を持っているのではないでしょうか?また、僕はそのような雰囲気をメールや電話の向こう側から感じました。商品の価値は、価格を工夫することによって伝わり方も変化していくのです。

もちろん、圧倒的にこちらに非がある様なミスの場合には、「高い金額を払っているのにどうなっているんだ!」と、大きなお叱りを受ける事は言う間でもありませんが。

価格を引き上げるだけでは、効果なし?商品の価値を伝える方法とは…次のページへ

コトを語り商品価値を高める

これまで販売価格が高額なことによる、商品価値の高まりをお話ししてきました。しかし、単に販売価値を引き上げるだけですと「ただ高いだけ」「他店の方が安くて良かった」と思われる事もあります。「価格の高さ=期待の大きさ」でもあるのです。

そんなお客さんの期待にしっかり応えるためには、本来その商品が持つ価値を、キッチリと伝える事が不可欠です。

「農家さんが400日間、1日も休まず、我が子のように育てたお花」であったり、「土は蒸気消毒、種はオーガニック、もちろん無農薬で育てたパクチー。本場タイのさわやかな香りが特徴です。」とか。商品価値を最大限に引き出す事で、適正な価格で購入しても損はないと思っていただけます。そして「ちょっと高かったけど買って良かった」と、お客さんに喜びを与えることができるのです。

全く同じ商品を値引きをして「8時間限定半額!送料無料!」というような、価格主体の価値を訴求する方法。これも、価値を引き出す方法の1つですし、僕自身それを否定する事はしません。価格の価値を訴求する方法はとてもパワフルで、圧倒的に支持されやすく、爆発力があるのですから。

ただし、その商品の持つ価値が高まるかというと、高まりにくいというデメリットも含んでいます。ページでいくら説明しても、価格が安いという価値の印象が強いためです。

そして、どちらの方法を選択するのか自体、お店のブランディングにも深く関わってきます。そのため、それぞれがれっきとした手法であり、販売方法の1つだと思っていただければ幸いです。

コトに共感して価値を買う

今はモノ余りの時代。日常生活を送る上で必要なものは、ほぼ24時間365日いつでも手に入るようになりました。「モノが無い」ということで、困る事は無くなりましたし、便利に生活できるような時代です。

そして自分たちが販売している商品が、お客さんにとっては、ほぼ不要不急のモノになってしまいました。

では、なぜわざわざ自分が取り扱う商品を選んで買ってくれるのか。そして、わざわざ僕らのお店で買わなければならないのか。理由が必要だと思います。その理由がなければ、全てはAmazonでワンクリック購入するだけで、その日のうちに商品が手元に届きます。


僕のお店の商品ではないのですが、感動した商品がありましたので、最後にそのお話をさせていただこうと思います。

お歳暮でりんごをいただきました。僕も8年ほど前から知っているお店なのですが、僕自身はそのりんごを買った事がありませんでした。たまたまお歳暮でいただき、箱を開けると1枚の説明書が入っていました。

そこには「りんごを真っ赤にするために、普通は収穫前に木から葉を摘んで赤くなるようにします。でも、りんごにとってその葉は甘みを増やすために大切な役割をになっています。私たちのりんごは色は悪いですが、葉を最後まで残し、甘みを引き出すためにあえて葉を取っていません。それが私たちの【葉とらずりんご】です。」

「へ〜!そうなんだ!」と思い、早速りんごを食べる事にしました。一口食べた瞬間のシャキッとした歯ごたえと、溢れる果汁、そして濃厚な甘み、鼻を突き抜ける香り。その説明がなかったら気づかなかったかもしれない視点が共有され、そのりんごをとても美味しく食べる事ができました。

もちろん、他と比べても、いただいたりんごは美味しいりんごです。しかし、“葉を取らないことで他のりんごよりも甘い”という視点を共有してもらったからこそ、美味しさに気づけたのだと思います。

その農家さんの作り方の姿勢や、りんごへの想い、そして美味しさに感動。僕はいつもお歳暮にはビールを送っているのですが、今年はそのりんごにしたほどでした。

このりんごよりも美味しいりんごは他にあるかもしれませんし、もっと安いりんごもあるかもしれません。でも、「葉を取らないという価値」に共感し、あの大切な人も喜んでくれるだろうと思い、お歳暮用に購入したわけです。「コトに共感して価値を買う」とはまさにこの事だなと実感しました。お歳暮キャンペーンでポイント10倍とか、10%オフクーポンは確かに嬉しいです。しかし、そんな企画をしていてもいなくてもあまり関係のない購入のきっかけが、このりんごのお話しです。


※「葉とらずりんご」は、楽天市場の「かめあし商店」でご購入できます。

次回は最終回

今回も、最後までお読みいただきありがとうございました。

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次回のお話は最終回
1月10日(火)の更新です。

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ここからコメントが直接僕に届きます!
http://item.rakuten.co.jp/gekihana/column/

著者

古屋悟司 (Satoshi Furuya)

1973年東京生まれ。「さしすせそ」がうまく言えない東京育ち。
大学卒業後、トヨタのディーラーに就職。新人賞を獲得後、さらなる収入アップのために悪の道へと足を踏み入れる。
悪徳訪問販売で荒稼ぎするも、自宅が火事になり全てのやる気をなくし退職。
2002年再起をかけ花屋ゲキハナを開業。2004年楽天市場へ出店。
倒産の危機を経験し、三方よしを学ぶ。
好きな食べ物は、ラーメンとカレー。
現在、管理会計の本を執筆中。近日発売予定!

ゲキハナ初心者さんのお花屋さん
http://store.shopping.yahoo.co.jp/gekihana/
ゲキハナ感激安心のお花屋さんポンパレモール店
http://store.ponparemall.com/gekihana/
黒字会計
http://www.gekihana.com

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