【第5回】♠欲しい!をもたらす表現マジック〜動画コンテンツを1000倍の人に観てもらう方法〜

幅 朝徳

 ゲーム産業という異業種からやってきた、EC業界の「新参者」がお届けする、ボーイ・ミーツ・ガール風コラム。ゲーム業界で培った最先端技術で、EC業界に新風を巻き起こします。
消費者のみなさんに「欲しい!」と思ってもらえるための、まるでマジックのような表現や手法を、実際のユースケースや豊富なデモとともにご紹介。

 FLASHが動かない!
 全画面でしか動画を再生できない!
 複数動画の同時再生や自動再生もできない!

そんな「ないものだらけ」の、まるで牢獄のような「スマホ動画」の世界を、ミドルウェア技術のチカラで解放します。

マジックは、タネ明かしよりもパフォーマンスのほうが好き!という方にはピッタリなコラムです。毎号、カップヌードルの待ち時間くらいで読めるボリュームでお届けします!

CRI・ミドルウェア
エヴァンジェリスト
幅朝徳

【第4回】〜ラスベガスで感じた世界EC潮流 (CES2017報告)〜
https://www.ecnomikata.com/column/13078/

【第3回】〜「スマホウェブ or スマホアプリ」?〜
https://www.ecnomikata.com/column/12782/

【第2回】〜動画がECに効く3つの理由とは?〜
https://www.ecnomikata.com/column/12425/

【第1回】〜ゲーム産業からこんにちは!〜
https://www.ecnomikata.com/column/11973/

先日、私が、コンサルティングを担当したお客様(ハウステンボス株式会社)の新しいスマホ向けWebサイトが公開になりました。

CRIのWEB動画ミドルウェア「LiveAct PRO」、
ハウステンボス公式スマートフォンサイトに採用
http://www.cri-mw.co.jp/newsrelease/2017/e78k1e000000jqmv.html

年々増え続けるスマホからのアクセスに対して、PCと同様もしくはそれ以上に、ハウステンボスのパークやアトラクションの魅力を「動画」でアピールするための仕組みをご提供しました。

▲動画の自動再生にこだわった、ハウステンボスの新しいスマホ向けWebサイト

現時点では、直接「ECの事例」ではありませんが、ECでの動画が抱える課題と同じ「自動再生」がポイントになっている案件でした。

参考:ハウステンボス株式会社
http://www.huistenbosch.co.jp/
※必ずスマホでアクセスしてください

そこで今回は、この「自動再生」についてご紹介したいと思います。


私たちが生きている世界には、とても数多くの「自動◯◯」が存在します。
それらの「自動◯◯」は、私たちの暮らしを支えるための、当たり前のものになっています。

朝起きて駅に向かい、「自動改札」をとおって電車に乗ります。

まだ冷え込みの激しい2月、コートのポケットに両手を入れたままでも、「自動ドア」があなたをオフィスビルに迎え入れてくれます。

そして、「エスカレーター(自動階段)」や「エレベーター(自動昇降機)」を使って、自分の職場へとたどり着きます。

ランチで食べた美味しい料理をSNSでシェアしたくなり、スマホで写真撮影。
スマホ画面に映った料理の部分を軽くタップするだけで、「自動フォーカス」等の機能が気軽に最適なモードで写真を残してくれます。
お店の名前も、GPS情報から推測されて「自動的にタグ付け」。

仕事が終わり帰宅すると、「全自動洗濯機」が洗濯から脱水、乾燥までをすべて勝手にやってくれます。

お風呂の準備も、あらかじめセットしておいた水位で「自動湯張り」してくれます。

週末のおっくうな掃除も、「自動掃除機」が毎日コツコツとキレイにしてくれているので、あっという間に終わります。

休日のドライブでは、ETCカードを挿し込んでおくだけで、高速道路をつかっても「自動料金収受」システムのおかげでスムーズにICを通過できます。

観たかったTV番組も、HDDレコーダーが持ち主の嗜好を分析して「自動録画」してくれているので安心です。数週間分の全チャンネル前番組を「自動録画」してくれる機種があれば、週末の余暇の過ごし方には事欠きません。

スマホやパソコンでのショッピング。「自動リコメンテーション機能」のおかげで、検索エンジンを使いこなせなくても、複数の類似製品を比較して検討したり、一緒に購入すべき周辺グッズの検討がとっても捗ります。

・・・と、こんなふうに、私たちの暮らしを振り返ってみると、じつに多くの「自動◯◯」に囲まれて生きているということを実感できます。

もちろん、上記すべてを体験している方は少ないかもしれませんが、1つも経験したことがない!という方は、このコラムの読者のなかにはいらっしゃらないと思います。

いまはまだ「当たり前」ではなくても、近い将来、私たちの生活に普及していくとされているもののなかにも、実に多くの「自動◯◯」の技術が含まれています。

▲CES2017でお披露目された自動運転カーAudi AI(nVidiaブースにて筆者撮影)

その代表格が「自動車の自動運転」

膨大な数のセンサーと、それらから得られた情報をリアルタイムに計算し、状況に応じてリスクを予測し、目的地へと自動的に導いてくれます。ハンドルを握らずとも、あるいは、免許を持たずとも、好きな場所に行けるようになるかもしれない夢の技術。

ご存知のとおり、自動運転の実現は、すでに秒読み段階になっています。

完全な自動運転の実現にはまだもう少し時間がかかりそうですが、高速走行中に安定走行するための「自動クルーズ機能」や、前方のクルマや障害物との距離やクルマの状況に合わせて作動する「自動ブレーキ機能」、難しい車庫入れをドライバーに代わって担当してくれる「自動車庫入れ機能」など、クルマにまつわる「自動◯◯」は、日々、増加の一途をたどっています。

趣味の領域だけでなく、産業界や物流の領域でもますます注目の集まるドローンも、その中身は「自動◯◯」技術の塊です。なかでも、ホバリングや緻密な移動を実現するための「自動制御」系の技術は、ドローンのコアテクノロジといっても過言ではありません。

このように、「自動◯◯」というのは、操作や制御を「ラク」にし、「誰でも」その恩恵を受けられるようにすることで、私たちの生活をより「便利」にしてきました。同時に「自動◯◯」は、コストダウンや合理化の実現やビジネス機会の拡大といった、企業側のメリットも数多く存在します。

たとえば、コラム冒頭でもご紹介した「自動ドア」

この「自動ドア」が、お店の自動ドアであると仮定してみましょう。

手動のドアよりも、自動ドアのほうが、入りやすいですよね。
気になるお店であっても、入り口が重々しいと、なんとなく敬遠してしまいがちです。
入りやすさの雰囲気づくりという意味で、自動ドアってとても大事な役割を果たしています。

また、自動ドアなら「うっかり締め忘れ」も防いでくれます。暖房や冷房など空調のことを考えると、じつはけっこう大事なポイント。

また、たくさんの買い物をしてくれたお客様がお店をあとにしようとするとき、両手に荷物を抱えたままドアを開けるのは大変ですよね。自動ドアならラクラクです!


当連載コラムでもご紹介してきたように、インターネットコンテンツにおいて「動画」の占める役割はますます大きくなってきています。

企業ホームページのトップや、各種キャンペーンのランディングページなど、「動画」を主体にしたウェブサイトづくりはとても一般的になってきています。

ここで問題になるのが、やっぱり、スマホ動画。

PCブラウザよりも、スマホブラウザからのアクセス数(PV)が多い、というケースはもはや当たり前。8〜9割以上の訪問者が「スマホブラウザ」からアクセスしている、というログ解析結果を持っている企業も珍しくなくなりました。

レスポンシブデザインは、すでにPCファーストではなく、SPファースト(スマホファースト)の考え方で臨むべき、と言えます。

ECにおいても、また然り。

ECに動画を活用する事例は日に日に増えてきていますが、その実装方法はベストものとは程遠いというのが現実です。

スマホ動画のWebへの実装における問題点はいくつか存在しますが、とくに大問題なのが「再生制御」です。別の言い方をすると「ユーザが再生ボタンを押さないと動画の再生が始まらない」という問題です。

好きなアーティストのMV(ミュージックビデオ)や、観たかった映画の鑑賞、話題のPPAP系ユニーク動画の再生(笑)など、お客様が「その動画を観たい!」という強いモチベーションを有している場合であれば、「再生開始ボタン」をユーザに押してもらう、というUI(ユーザインタフェース)でも問題はありません。

しかし、ECにおいて、自社の製品やサービスを説明したりイメージしてもらうための動画の場合、ユーザに能動的な行動を期待するのは間違いです。「鶏が先か?卵が先か?」的な視点になりますが、お客様の興味を喚起するために「動画」を活用しているのであれば、その動画は「自動的に再生されるべき」です。

にもかかわらず、ほとんどのサイトでは、この「動画の自動再生」に対応していません。ユーザが「再生ボタン」を押すことで、初めて動画が再生されます。

つまり、商品をカートに入れてもらったり、購入してもらったり、といったCV(コンバージョン)の前に、「動画の再生を開始してもらう」という新たな障壁としてのCVを増やしてしまっているだけなのです。

ユーザ自身が「その動画を観たい!」という強い動機を持っていない限りは(ECにおいては、残念ながら、多くのユーザはその動機を持っていないでしょう)、せっかく商品の魅力を伝えるための動画なのに、再生すらされないという状況になってしまうわけです。そして「ECに動画は効果なし!」という誤った結論を出してしまうことになります(実際には、実装方法が間違っているのです)。

逆に言うと、たとえば現行のECサイトで、訪問者のうち「0.1%の人しか動画を再生してくれない」が「動画を再生してくれた人は80%の確率で商品を購入してくれる」という場合、動画を「自動再生」に対応することで、「動画コンテンツを観てくれる人は1000倍になる!」(サイト来訪者=動画視聴者となるため)ことになり、さらに、動画の視聴が購入確率に強く影響することが解っているので、商品購入者も(論理的には)大幅に増加することになります。

これが、ECにおける「動画」活用の魅力なのです。

▲ますます広がるECサイトでの「自動再生」動画対応のうごき

冒頭でご紹介した「ハウステンボス」さんの事例も、ECではありませんが、PCサイトやSNSアプリ等ではあたりまえである、動画の「自動再生」にこだわってスマホサイトを構築した事例です。

ハウステンボスに興味のあるお客様が検索エンジンやリンクバナー等で同社のサイトを訪れた際、スマホであっても、ユーザは何らの操作をすることなく、自動的に再生される魅力的な「動画」によって、同施設の魅力を体感するというわけです。

ちなみに、同社のスマホサイトでは、トップページに5つ以上もの自動再生動画が埋め込まれています(2017年2月9日現時点、正方形のサムネイル動画を含む)。スマホの画面でスクロールしていくと、ハウステンボスのさまざまな魅力を、複数の自動再生対応の動画で感じることができるような設計になっています。


また、ECサイト構築大手のecbeingさんも、動画の自動再生機能に対応していますので、ぜひご参考ください。

スマホアプリ不要の「動画自動再生機能」
機能詳細・体感デモ
http://www.ecbeing.net/lp/cri.html

そもそも、「スマホ動画の自動再生ってどうやるの?」と疑問に思った方は、ぜひ当コラムのバックナンバーも併せてご参考ください。

【第2回】〜動画がECに効く3つの理由とは?〜
https://www.ecnomikata.com/column/12425/

上記のコラムでは、自動再生の技術的な難しさや、アニメーションGIFとの違いやリスク、詳しい実現方法について、分かりやすいデモとともにご紹介しております。

「自動ドア」のように、お客様が躊躇なく、また、遠慮なく自然にお店に入ってこられるような、そんな動画マーケティングを実現してみませんか?あなたのECサイトでも、動画を「自動再生」に対応させるだけで、1000倍の人に観てもらえるようになるかもしれません。もちろん売上もアップすること間違いナシ!

いよいよ本格化する「ECサイト・シンギュラリティ」を、動画の積極活用で乗り切りましょう。

Stay Tuned…

それでは次号【第6回】のコラムでお会いしましょう。
みなさんのビジネスが、ドラマティックでマジカルなものになりますように!


著者

幅 朝徳 (Haba Tomonori)

学習院大学卒業後、CSK総合研究所に入社。ゲームプランナーを経て、現CRIに創業期から参画。任天堂・ソニー・マイクロソフトの家庭用ゲーム機向けビジネスに従事する傍ら、モバイル事業の責任者としてスマートフォン向けの新規事業立ち上げを行う。その後、ゲームで培った技術やノウハウを異業種に展開すべく、大手製薬会社向けのSFAシステムを開発、業界シェアNo.1を獲得。最近は、大手電機メーカーへのコンサルティングや異業種領域での「動画の活用手法」のエヴァンジェリスト活動などを手掛ける。

2016年10月、満を持して、EC業界でのミドルウェア事業をスタート。

Web上のあらゆる動画を手軽に扱うことのできる技術「LiveAct PRO」や、MP4等の動画ファイルサイズが画質そのまま半分になる「DietCoder」など、EC業界でも急速にニーズが高まりつつある技術やソリューションの研究開発や事業推進のために、多忙な日々を送っている。

Web動画ソリューション「LiveAct PRO」:http://www.cri-mw.co.jp/liveact/
CRI・ミドルウェア:http://www.cri-mw.co.jp/