第5回(最終回):今後の台湾ECが遂げる進化とは~最新台湾のEC事情~

小野 雄輝

これまで台湾のECについて、「日本との比較」や「SNS」という点から話をさせていただきましたが、最終回の今回は、それらを踏まえて今後台湾のECがどうなっていくかを予想してみたいと思います。

ただ、全体としてはアメリカや日本の後を追って発展していくことは間違いないと思いますので、「市場規模」や「決済」、「物流」などのマーケット全体や、「オムニチャネル」「BtoBコマース」といった、日本でテーマになっていることが台湾ではどうなるのかを予想するのではなく、どのような台湾らしい変化が起きて、どういった台湾らしい進化を遂げるかについて考えてみます。

日本では、自社ECサイトを構築するためのオープンソースやASP、クラウドサービスなどの様々なタイプのサービスがリリースされていますが、サイトの独自性や機能性が高いものの、購買率をどうやって高めるか、訪問者のWEBサイトからの離脱率をどう下げるかを考え尽くされた結果、かなりテンプレート化されている印象があります。

リアルの店舗に例えるなら、マーケティングの理論を駆使して店舗構成されたチェーンストアがたくさん存在するといったところでしょうか。台湾の消費者が必要とするのは、こういったチェーンストアではなく、いきつけの飲食店で「おまかせ」が注文できたり、いきつけの八百屋が「おすすめ」を紹介してくれるような安心できるストアです。

サイトの世界観やホスピタリティの出し方ではなく、パーソナライゼーションをいかにコストを掛けずに追求できるかがポイントです。

そこで力を発揮するのが、第3回で少し触れさせていただいた「買いやすさを追求したECサイト」と「Facebookページ」に加え、「アプリ化されたECサイト」だと思っています。

ECサイト自体は、極端に言えばカートのみ(ストレスなく商品を買うことができるレベル)で問題ありません。アクセススピードを重視するためにスマートフォンのみに特化してしまって良いと思います。

アプリ化されたECサイトは、日本ではそこまで浸透していない印象がありますが、定期購入が定着しておらずスマートフォン利用率が高い、またアプリの利用については抵抗感のない台湾において、これほど売る側にも買う側にもメリットのあるスキームはないと思います。

どこまで機能を追加する必要があるかは商品によって変わってくると思いますが、ログイン情報によってマイページをパーソナライズさせ、PUSH通知で適切なタイミングで適切な情報を消費者に提供できるアプリ化されたECサイトが、台湾のECのベースになる日がいずれやってくると予想しています。

また、ソーシャル活用の新しい動きとしてはソーシャルログイン可能なECサイトが日本以上に増えてくると思います。

元々、台湾の消費者は企業のFacebookページにコメントを積極的に投稿しますので、ソーシャルログインすることでECサイトがパーソナライズされ、コメントもできれば一石二鳥です。

そしてこのソーシャルログインが前述の「買いやすさを追求したECサイト」と「Facebookページ」と「アプリ化されたECサイト」とを結び付け、台湾の消費者にとって快適なECサイトが出来上がるというわけです。

今後も消費者の行動パターンが変わり、消費者が使うデバイスが変わり、リアルとオンラインの関係もどんどん変わっていくと思いますが、台湾のECの未来は「スマートフォン×SNS」の先にあることは間違いないと確信しています。


【あとがき】
全5回に渡る「最新台湾EC事情」の連載コラム記事を、最後まで読んでいただきありがとうございました。少しでもみなさんにとって有益な情報となれば幸いです。


著者

小野 雄輝 (Yuki Ono)

2005年サイバーエージェント入社。東京で自社メディアの代理店向けセールスを担当後、自社メディアの大阪営業所の立ち上げに参画。2008年にはインターネット広告事業本部へ異動し、関西、九州エリアのダイレクトマーケティング領域における新規顧客開拓に従事。2011年、2013年にインターネット広告事業本部管轄の全体総会にて、半期営業MVPを受賞。2015年、サイバーエージェント 台湾支店を立ち上げ、台湾現地日系企業のWEBマーティング支援に従事。