【第四回】意外と知らない海外ユーザーの実態Part2~利用者約1.9億人のPayPalが語る決済~

野田 陽介

 こんにちは。PayPalの野田陽介です。今回は「越境ECの始め方」についてご案内する、と前回お話していたのですが、昨年末に弊社と調査会社IPSOSが実施しているユーザーアンケートの最新版がリリースされました。よって今回は、最新の調査結果をもとにユーザー実態の紹介Part2をご案内していきたいと思います。特に、日本からの輸出が大きい中国とアメリカのユーザーに焦点を当てていきます。

【第二回】フィンテック法規制
https://www.ecnomikata.com/column/11154/

【第三回】意外と知らない海外ユーザーの実態
https://www.ecnomikata.com/column/12069/

 はじめに、現在世界のEC市場はどれくらいの規模があるのか?そしてそのうち越境部分がどれくらいあるのか?今回の調査では主要32ヶ国のユーザーの実態に加えて、統計情報(GDP、人口、オンライン販売等)やアンケート情報を基に各国のEC市場規模を算出しました。

 2016年時点で、主要32ヶ国のEC市場は約160兆円となっています(1ドル=110円換算)。そして以下が国別の市場規模です。

 上位2国がアメリカと中国、次いで日本、イギリス、フランスとなっています。上位2国で全体の約60%のシェアを占めており、如何にこの2国が世界のEC市場を牽引しているかが分かります。一方で、今後インターネット人口の増加やインフラ整備が整っていくことを考えると、他国も大きく伸びていくと予想できます。2015年〜2018年の年平均成長率では、インドが最も高く38%となっています。

 そのような中、越境ECの規模(各国ユーザーがどれくらい越境で購入しているか)については以下のような結果となりました。

※日本はデータ不足により越境については対象から除外

 越境ECに関してもアメリカ・中国が全体の約60%を占めており、この2国が活発に越境で購入していることが分かります。今回、日本はデータ不足により越境について対象から除外されましたが、特筆すべきはインドが第3位にいることではないかと思います。規模だけで言うとまだ上位2国に及ばないところはありますが、輸出先としてインドは有望な市場であることに間違いなさそうです。

 続いて各国、特に中国・アメリカの越境ユーザーの実態を詳細に見ていきたいと思います。まず各国ユーザーが、どの国から商品を購入しているのか?

 日本が韓国と同率で第1位です。日本からみると“爆買い”の印象が強い中国ですが、中国から見ても購入先として日本が1番となっています。その理由として、「商品の品質(日本から購入した中国バイヤーの59%が回答)」、「自国で買えないこと(59%)」、そして「ショップへの信頼性(40%)」が上位にあがっています。一般的に中国ユーザーは価格に敏感であるとは言え、日本に対しては品質を求めています。価格勝負はせず、品質・信頼性を前面に押すことが大事であるといえます。

 一方、以下がアメリカの越境ユーザーが購入している先です。

 日本はユーザーからみると第4位の購入先です。日本に対しては「価格」と「新しい商品の発見」が購入動機の上位にありました。「価格」に関しては為替が大きな影響を与えますが、日本独自の商品を発信していくことが重要と読み取れます。

 次に越境ユーザーがどのようなサイトで購入しているのか?もしくは、越境に対する考え方を聞いた結果が以下になります。

 個人的には少し意外でもあったのですが、中国・アメリカの両ユーザーともにグローバルプラットフォーム(例、AmazonやeBay)での購入を好んでいます(中国では72%、アメリカで75%が同意)。越境が身近になっているとは言え、サイトのブランドが店舗/商品の信頼性を補っている形です。

 ちょうど先週、別の調査機関(International Post Corporation)から越境ユーザーに関するアンケート結果が発表されていました。そちらでは越境ユーザー購入の65%がAmazon、eBay、Alibabaの3サイトで占められている、と報じています。既に自社サイトで越境やられている方は別ですが、これからという方はまずこれら3大モールを検討先にするのが良いと思います。

 他、前回ご案内した「よく購入されている商品カテゴリー」や「越境バイヤーが購入を決める理由、諦める理由」などは最新版でも大きな変化はなく。中国・アメリカの越境ユーザーの購入のドライバーとなっているのは送料や配送リードタイムです。

 前回に続き海外ユーザーの実態をご案内してきましたが少しは参考になったでしょうか?

 当然ネットの世界ですのでこれ以外にもニッチな市場はたくさんあるかと思いますが、“木を見て森を見ず”にならないよう越境ECについて大きなトレンドを把握してもらえれば幸いです。
 
 次回は越境ECの始め方についてご案内したいと思っています(が、今回同様変更する場合はあしからずご容赦ください)。


著者

野田 陽介 (Noda Yosuke)

 事業開発部 部長

 電機メーカーで設計開発に従事後、ベンチャーキャピタルにて米国を担当。ITにフォーカスした投資および日本におけるビジネスディベロップメントを担当した後、シリコンバレーにてスタートアップ立ち上げ。その後、PayPalに参画し事業開発を担当。

PayPal Pte. Ltd. https://www.paypal.com/jp

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