【第1回】ユーザーにしか分からないコトを発見しよう 〜初めてのユーザーテスト〜

清水 竜一

初めてのユーザーテスト 中小ネットショップさん向けに、ユーザーテストの活用方法をお届けします。(モデル 茜さや、photo すしぱく)

社内で練りに練って作り上げたネットショップのインターフェース。サービスを何も知らない人に実際に操作してもらったところ、目も当てられない結果が…。

サービスを知ってしまっている人間には到底想像が付かないコトがあると気付かせてくれた調査手法、ユーザーテスト。全5回でその価値や簡単に初められる実践方法をお届けしてまいります。

【第2回】リモートユーザーテストをオススメする2つの理由 〜初めてのユーザーテスト〜
https://ecnomikata.com/column/13490/

想像もできないような事が起こる

想像もできないような事が起こるユーザーさんには道のりが霞んで見えているかも…(photo 小林央)

2年ほど前のある時期、私は某ネットショップの決済ステップをより使いやすくするための改善案をあれこれ考えていました。私一人ではなく、周りのスタッフも巻き込みながら。

ひょんなことからユーザーテストという調査手法の存在を知りました。当時は「ほうほう、なんだそりゃ」くらいのテンションでしたが、とにかく調査は進んでいきました。そして調査が完了し、被験者さんの画面操作の様子と発言が記録された動画が納品され、それを再生しました。

するとそこには、まるで思い通りに操作ができず終始イライラしている様子が映し出されていました。ダミーのクレジットカードの番号にまで矛先が向き、「こっち(我々が渡したハイフン入りの番号)が間違ってるじゃないですか!」と指摘。えー、ハイフンは取って欲しいな…。操作してもらった後の設問「注文のしやすさはどうでしたか?」に対し、「最悪です。」という解答。

他にも、ラッピングを設定するのにあっちへ行ったりこっちへ行ったり…。


このようにサービスを知らない利用者がこんなにも迷ってしまうことなど、夢にも思いませんでした。あんなに時間をかけて考えていたのは何だったのだろう…。

実際にこのような思いをしながらサイトを利用しているユーザーさんがどれだけ居るのだろう…。

ともあれ、これがユーザーテストの価値を知るきっかけとなり、その後も『致命的な注文間違いをしてしまう』『ちょっとしたキャッチコピーが重要な判断材料になる瞬間』などを目撃してきました。


サービスを知っている人がいくら考えても発見できない(しにくい)課題が見つかることのあるユーザーテスト。それを驚くほど簡単に実施できるサービスが存在します。

2時間も3時間も頭を悩ませた結果答えが出ないくらいなら、同じ時間を使って簡単に実施できるユーザーテストで一つでも新しい課題が発見できれば、その方が良いと思うのです。

5回の連載で、簡単に実施できるユーザーテストについて、具体的にご紹介していきたいと思います。

サービスを知らない人でなければ分からないコトが分かる

サービスを知らない人でなければ分からないコトが分かる実際に利用する人(ユーザー)に聞いてみよう(モデル OZPA/北野佑々、photo すしぱく)

サイトの運営に関わっている人間は、技術的な知識、サイトの設計や都合などを知ってしまっています。ですから、ちょっとした文言一つを取っても「これなら伝わるかな?」という予測までしかできません。サイトに少し手間のかかる操作があったとしても、技術的に仕方ないと考えてしまうことがあります。

ユーザーにはそのような都合は関係ありません。それが原因で離脱してしまうかもしれません。大事なのは困りごとを解消できるかどうかです。

サービス運営サイドはユーザーになりきれない…であれば、ユーザー(に近い人)に聞くしか無い。ということで利用される調査手法の一つが『ユーザーテスト』です。

そういえば、あるメニュー内の『文言』が伝わるかどうかをユーザーさんに直接聞きに行った時、文言のことのみならずメニューの順番についても同時に指摘を受けました。想定外のことを指摘されるケースも多々あります。

アクセス解析が手を出せない領域のコトが分かる

アクセス解析が手を出せない領域のコトが分かるお店の『外』の様子を見てみよう(モデル 河村友歌、photo すしぱく)

アクセス解析ツールは、サイト内の行動を知ることができます。一方、ユーザーテストはサイト外のことも調査できます。検索エンジンでどんなサイトをどう見ていたのか、競合サイトはどのように見ているのか…

ひょっとすると、貴社サイトの商品を求めている人がよく使うキーワードでは流入が取れていない、ということが分かるかもしれません。

ユーザーテストでは分からないコトもある

ユーザーテストでは分からないコトもあるユーザーテストを過信せず、定量的なデータも活用する(photo すしぱく)

もちろん、ユーザーテストは万能薬ではありません。

もしかしたら、情報収集する際に多くの方が利用しているのはGoogleではなくInstagramかもしれません。

もしかしたら、電車移動中にスマホで情報を集めておき、帰宅後にパソコンでゆっくり閲覧しているかもしれません。

人によっては、ネットで見たあとに実店舗で購入しているかも。

こういったコトはユーザーテストで突っ込みにくい領域です。アクセス解析ツールやネット・店頭アンケートなど、他の手法で補足する必要があります。


このように弱みもありますが、確実にメリットもあるユーザーテスト。なんだか取っ付きにくく感じるかもしれませんが、第2回目以降は、私がこれ以上手軽なユーザーテストは無いと信じてやまない手法をご紹介して参ります。


著者

清水 竜一 (Ryuichi Shimizu)

お買い物体験研究家

静岡県出身。地元の専門学校で3DCGや映像制作を学んだ後、なぜかネットショップ運営支援の有限会社SAVAWAY(現在のNHN テコラス株式会社)に入社。
中小ネットショップを中心に、8年以上サイトのデザインや商品撮影といったビジュアル面での支援をしてきたが、ある日『ユーザーテスト』に触れユーザーが実際にサイトを操作する様子と、自身のイメージとのギャップに衝撃を受けた。以来ユーザー目線での定性的な調査を啓蒙するため活動中。

おかいもの研究室:https://okaimonolab.jp/