【第5回】ユーザーテストを実施したら確認したい3つのポイント〜初めてのユーザーテスト〜

清水 竜一

初めてのユーザーテスト 中小ネットショップさん向けに、ユーザーテストの活用方法をお届けします。(モデル 茜さや、photo すしぱく)

社内で練りに練って作り上げたネットショップのインターフェース。サービスを何も知らない人に実際に操作してもらったところ、目も当てられない結果が…。

サービスを知ってしまっている人間には到底想像が付かないコトがあると気付かせてくれた調査手法、ユーザーテスト。全5回でその価値や簡単に初められる実践方法をお届けしてまいります。

【第1回】ユーザーにしか分からないコトを発見しよう 〜初めてのユーザーテスト〜 
https://ecnomikata.com/column/13489/

【第2回】リモートユーザーテストをオススメする2つの理由 〜初めてのユーザーテスト〜
https://ecnomikata.com/column/13490/

【第3回】ユーザーテスト実施前に確認すべき3つのポイント 〜初めてのユーザーテスト〜
https://ecnomikata.com/column/13491/

【第4回】調査依頼は2〜3分で完了! 〜初めてのユーザーテスト〜
https://www.ecnomikata.com/column/13492/

前回は、実際にユーザーテストを実施するまでの流れをご紹介しました。今回(最終回)では、被験者さんがアップした動画をどんな視点でチェックしたら良いか、ご案内します。

必要とされる情報が揃っているか

必要とされる情報が揃っているか欲しいと思った情報がなかった時のがっかり感を与えないように(photo カズキヒロ)

例えば、ギフト用のお肉であれば相手の嗜好と照らし合わせられる情報があるか、送料が見つけられず諦めてしまっていないか、商品の質感写真は十分か、といった『求められている情報』を届けられているか。

競合サイトと差別化するための付加価値に魅力を感じてもらえているか、『気付いてもらいたい情報』に興味を持ってもらえているか、といった物もあります。

商品そのものではなく、運営会社に対する安心感を求める人も居ます。

商材やビジネスモデルの特徴も考慮しながら、不安なく買い物ができるよう情報が届いているかを確認しましょう。

使い勝手は悪く無さそうか

使い勝手は悪く無さそうかパッと見てどう使ったらいいかすぐ分かるのが理想(photo すしぱく)

情報が揃っていても、使い勝手が悪いと感じると次からアクセスしてもらえなくなる可能性があります。

商品や情報を探すのに必要以上に多くの時間を要していないか、被験者さんの環境での表示速度やレイアウトは適切か、サイト内で迷っている時間が長くないかなど、見えている画面や操作の様子を観察しましょう。

課題の重み付け

課題の重み付け課題に重み付けをすることで方向性を決められる(photo すしぱく)

恐らくいろいろな発見点があると思いますが、何を優先したら良いか迷ってしまうかもしれません。

そこで、優先順位を付けるため課題に重み付けをします。そのためには、再び『ユーザビリティ』の定義を活用します。

特定の利用状況において、
特定のユーザによって、
ある製品が、
指定された目標を達成するために用いられる際の、
有効さ、効率、ユーザの満足度の度合い

今回活用するのは5行目の部分です。

■有効さ

有効さとは、商品情報が足りず買うことはできないなど、目標が達成できていなかった場合に分類します。その人にとってはそもそも買うことなど不可能…という課題はここ。

■効率

効率とは、達成するまでの道のりが想定よりも遠かった場合に分類します。ボタンを見つけるのに時間を要してしまった、本来3ステップで到達できるところを4〜5ステップ要してしまった…などが該当します。

■ユーザの満足度

ユーザの満足度は、操作している中で読み込みが遅いなどの不快感があった場合に分類します。発言に現れない程度の物も含め、軽微なものはここに分類します。

また、同じような課題が別の被験者さんから現れたら、同じ課題が複数回発生したということを下記の手順で整理します。

課題をまとめる

課題をまとめる書き出した課題のまとめ方の例

このようにして書き出しと重み付けをした課題は、下記のような表を使うと整理がしやすいです。

こうすると、より重い課題が左側に来ます。また、同様の課題が別の被験者さんからも見つかった場合は『頻度』として表の上の方へ分類します。つまり、左上に書かれた課題ほど優先して対応するべき、と言うことが分かります(一番左上に課題があったら、かなり致命的ですが…)。

このようにして対応すべき課題が発見できたら、チームのなるべく多くのメンバーと共有し、課題を解決するべくチームで一丸となって取り組みましょう。できれば、動画そのものもチームで共有できると良いと思います。

注意

解決策を考える際、被験者さんの言うことを鵜呑みにすることが正しくない場合もあります。詳しくはここでは触れませんが、本質を見抜くことでより効果的な課題解決が可能となります。

例:入力項目の多いフォームの離脱率が高いと言う課題を、力に必要な時間や準備しておくべき情報を解説する1ページを、あえて『追加』したことで改善できた

例:読み込みが遅いが技術的に改善が難しいという課題に対し、プログレスバーやスケルトンスクリーンで不安を低減する

まとめ

5回に渡り、『中小ネットショップさん向け!初めてのユーザーテスト』としてメリットや実践方法をお届けしてまいりました。

本音を言うと、ユーザーテストを利用していただくことが目的ではありません。何度かユーザーテストを実施していると、『お買い物体験を向上させる』ことに対する感度が高まってくると思います。

もっとこんな調査が必要なのではか、実はこんなソリューションがあったほうが便利なのではとか、実店舗でフォローできることがありそうだとか。

とことんユーザーの目線でサービスを設計していくための、足がかりとして活用して頂ければ幸いです。

もし、実践に当たっての疑問やさらに深い調査をしたいなどのご希望がございましたら、こちらからお気軽にお問い合わせください。
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それでは、最後までお読み頂いた方、ありがとうございました!


著者

清水 竜一 (Ryuichi Shimizu)

お買い物体験研究家

静岡県出身。地元の専門学校で3DCGや映像制作を学んだ後、なぜかネットショップ運営支援の有限会社SAVAWAY(現在のNHN テコラス株式会社)に入社。
中小ネットショップを中心に、8年以上サイトのデザインや商品撮影といったビジュアル面での支援をしてきたが、ある日『ユーザーテスト』に触れユーザーが実際にサイトを操作する様子と、自身のイメージとのギャップに衝撃を受けた。以来ユーザー目線での定性的な調査を啓蒙するため活動中。

おかいもの研究室:https://okaimonolab.jp/