【第2回】AIとの上手な付き合い方②AIは人の仕事を奪う、は本当か?

大目 菜々子

みなさん、こんにちは。株式会社WACULで広報をしております、大目(だいめ)と申します。弊社ではWebサイトの分析から、CV改善のための提案まで自動で行う人工知能「AIアナリスト」というサービスを提供しております。

本コラムは「ECの新常識!知っておきたい人工知能の話」と題し、今話題の人工知能にまつわるお話を書いています。第一回では「その悩みAIに相談してみませんか?」をテーマに、ECサイトを運営する中で、人工知能とはどのように付き合っていけばいいのかというお話をさせて頂きました。

ECの新常識!知っておきたい人工知能の話①その悩みAIに相談してみませんか?
https://www.ecnomikata.com/column/12994/

第2回の今回は「AIは人の仕事を奪う、は本当か?」というテーマでお話をさせて頂きます。

日本の労働人口の約半分は、人工知能で代替可能に!?

 10~20年後、日本の労働人口の約49%の就いている職業が、人工知能やロボット等で代替できる。約1年前、そんな衝撃的な調査結果が発表されました。(※1)この結果を見て、自分の仕事も人工知能に奪われてしまうのではないか、と不安になった人も多いのではないでしょうか。仕事を奪うだけでなく人工知能が人間を超えるなどと言われたり、不安を煽るようなニュースも散見されるようになってきましたが、実際のところAIの存在はそんなに人を脅かすものなのでしょうか。

仕事を「奪う」ではなく、人間の能力を「拡張」するAI

 みなさんは「ヒューマン・オーグメンテーション(Human Augmentation)」という言葉を耳にしたことがありますか?私もWACULに入社して初めて知ったのですが、道具によって人間の能力を拡張することをこう呼ぶそうです。例えば、メガネをかけて今まで見えなかった遠くのものを見る能力を得る、電卓を使って人間の脳では不可能なスピードと正確さで計算を行うことはその例といえます。

 より最近の例では、皆さんが日々使っているパソコンも、まさにヒューマン・オーグメンテーションです。今や存在が当たり前になったパソコンですが、登場した当時は世の中に衝撃が走り、今の人工知能と同じことを言われていたようです。「人の仕事が奪われる」と。しかし、結局パソコンの普及が進んでも、今現在人の仕事はなくなっていません。もちろん、当時と仕事のかたちが変わった人は多くいるかもしれません。しかし、最終的にはパソコンを使い「能力を拡張」させてより高次元の仕事をするようになっただけです。

 弊社は人工知能「AIアナリスト」を提供していますが、パソコンと同じく、人工知能が普及しても、人間の仕事を奪うことはないと思っています。人工知能が人に代わるのでなく、人がやらなくてもいいところを補ってくれ、人にしかできない仕事に人間が集中していく環境を整えてくれる。それが人間と人工知能との理想的な関係だと思うのです。人工知能の研究開発でトップ争いをするマイクロソフトは、2016年の夏に独自の人工知能の開発原則を発表しました。その内容も人間の「置き換え」ではなく、「能力の拡張」を目指す立ち場をとり、人間の幸福の増進に役立つ「人間中心」の発想を核に設計するというものでした。(※2)

人間の能力を「拡張」する人工知能の活用事例

 実際に、人間の能力を拡張させ、人にしかできない仕事に人間が集中していく環境を整えてくれる人工知能の活用は様々な分野で始まっています。

 例えば今年(2017年)1月、日本経済新聞社は人工知能を使った『決算サマリー』の配信を開始しました。上場企業が発表する決算データをもとに人工知能が完全に自動で文章作成を行うというもので、一見するとAI記者の登場に人間の記者の存在意義が揺らぎそうにも聞こえます。しかし、約3,600社もある日本国内の上場企業の決算情報を文章にして提供するには膨大な作業が必要です。決算記事のような速さと正確さが重要となってくる記事を人工知能に任せることで、人間にしかできない丁寧に取材をした質の高い記事を書くことに記者達はより集中することができるようになるのではないでしょうか。(※3)

 またGoogleは、成人の失明の主要な原因である糖尿病性網膜症を特定する人工知能を開発しました。現在ほぼ眼科医と同じ精度で症状を特定できるようになったのだそうですが、これも人間の能力を「拡張」する人工知能の事例と言えます。プロジェクトを監修する医師であり生物医学工学者のリリー・ペンも"AIが医者に代わるということではない。糖尿病性網膜症が早期発見されれば、失明はほとんどの場合が防げる" (http://wired.jp/2017/02/07/googles-ai-prevent-blindness/)と述べています。つまり、症状の特定という作業を人工知能に任せることで、医師は人間にしかできない治療に専念することができるようになるのです。
人工知能が人に代わるのでなく、人がやらなくてもいいところを補って、人にしかできないところに集中して質を高めていくというのは、このように様々な業界で進みつつあります。

ECサイト運営者の「能力を拡張」させる人工知能とは?

 ECサイトの運営者さまならご存知であろう、Web接客ツールも人工知能かどうかは別にして「能力拡張」の一例といえるでしょう。Web接客ツールは、訪問者に対してただ接客をしてくれるだけではありません。サイトの分析やサイト訪問者の分類を行い、最適化したかたちで接客を行い効果検証までをAIが自動で行ってくれます。結果、担当者は戦略の立案や意思決定といった「人間がやるべき仕事」に集中できるようになります。

 もちろん、弊社の提供する人工知能「AIアナリスト」もその一例と言えます。「AIアナリスト」は人工知能がWebサイトのデータを様々な角度から読み解き、CVRをあげるための改善提案を自動で行うサービスです。Webサイトの大量のデータの分析を人間が行うと、膨大な時間がかかります。この分析を「AIアナリスト」に任せることで分析時間は99.5%削減されました(5日間→約10分)。そうすると、「もう人間はいらないですよね」と言われることもあるのですが、決してそんなことはありません。「AIアナリスト」では一番重要な部分は、クライアント様にお任せしています。それはWebサイトのゴール設定と、改善施策実行の意思決定です。Webサイトで一体何をしたいのか、AIの提案一覧の中から費用対効果を考えどの施策を実施するのか、このような重要な意思決定はAIでなく、必ず人間がすべきことだと思っています。Webサイトを運営する方々が「人間がやるべき仕事」に集中できる環境を整えるお手伝いを「AIアナリスト」はしているのです。

 自分の仕事も人工知能に奪われてしまうのではと漠然と不安に感じていた方は、ぜひ「自分がやるべき仕事」は何かを考えながら、それをサポートしてくれる人工知能を探してみてください。

参考
※1:日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に~601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算~(株式会社野村総合研究所)
※2:人間中心のAIめざす 「代替」より「能力拡張」 米マイクロソフトCEOに聞く(日本経済新聞)
※3:AIを活用した「決算サマリー」配信スタート(日本経済新聞社)


著者

大目 菜々子 (Daime Nanako)

1988年生まれ、石川県出身。
筑波大学卒業後、大手メーカで営業を経験後、PR会社へ転職。多様な業種のPR業務を担当する。2016年6月にWACULへ入社、広報部門を立ち上げ会社初の専任広報となる。

◆株式会社WACUL https://wacul.co.jp/
◆AIアナリスト https://wacul-ai.com/