【第3回】コンタクトセンターだからできる!!効果的な顧客満足度の可視化

澁谷 毅

顧客満足度の課題は把握をしているが、実際に可視化したり、数値化することが難しいという問題は良く聞きます。今回は、コンタクトセンターを有効活用して、顧客満足度を「必要な時に」、「必要な形」で、「必要な量」を可視化し、潜在的な課題を顕在化させる仕組みについて紹介します。

顧客満足度調査の現状

前回でも述べたようにお客様の価値や行動は多種多様化してきています。
それに応えるために企業もオムニチャネル化やVOC(お客様の声)の活用をしていますが、重要なのは「お客様目線」の考え方となります。
では、顧客満足度調査は、どう可視化していくのか?
以下に一般的な調査方法とそれぞれの優位性をまとめてみました。

バーチャル的な顧客満足度の活用で「欲しい時に」、「欲しい形」で、「欲しい量」を取得!!

バーチャル的な顧客満足度の活用で「欲しい時に」、「欲しい形」で、「欲しい量」を取得!!いずれの方法も、お客様自身に実施をして頂くため、以下のような課題があります。

 a.回答率にばらつきがあり、想定サンプル数に満たない
 b.定型アンケートのため、具体的な改善ヒントが見えない
 c.頻繁に調査を実施できない(毎回実施は、それだけで逆に満足度を下げる)
 d.キャンペーンやプロモーション、災害時等のピンポイント検証に使いづらい
 e.ツールや運用フローを構築する事前準備が必須
 f.①②は顧客情報が必須(Email、アドレス、住所、氏名等)

要するに、最大の課題は、「必要な時に」、「必要な形」で、「必要な量」が取れないことだと考えています。
この点においては、従来の調査方法では、限界があり、多様化しているお客様や企業のニーズに沿わなくなってしまいます。

前回でも紹介しましたが、当社の応対品質可視化は、バーチャル的顧客満足度調査(VCSS:Virtual Customer Satisfaction Survey)というスタイルを導入しています。これは、顧客満足度調査の代用に非常に有効であると考えます。
そもそも当社の「個に寄添う応対」は、一人ひとりの個に寄添い、顧客満足度を向上させるという考え方がベースとなっています。
通話録音の音源さえあれば、スコア化が可能です。そのため、キャンペーンのこの期間だけ、夕方以降の時間だけ、商品やサービスに関しての満足度など、スポット的な活用が可能です。もちろん過去にさかのぼった音源でも可能です。それに加え、最も優位性が高いのは、アンケートでは取れない「お客様の温度感」を測ることです。同じ「不満」でも温度感や緊急度の高低も可視化できます。
ゆえに従来のアンケート式の課題点についても、全てカバーできます。(図1.顧客満足度調査の方法と優位性参照)

また、クライアント企業の要望によって、調査項目をフレキシブルにカスタマイズできます。このように、コンタクトセンターを有効活用することで、クライアント企業の「必要な時に」、「必要な形」で、「必要な量」の調査が可能となり、より効率の良い調査が実現できます。

但し、調査するにあたり重要となるのが、「電話応対品質」です。通話録音の音源を元にするので、そもそも通話の中で「有効な情報」を引き出せていない、もしくは一問一答の会話となり、満足度を測定する要素がないなどは、実際、測定効果が出にくいケースもあります。

ヤマトコンタクトサービスでは、VCSSの測定効果を最大化するために2つの取組(エンジン)を、コンタクトセンターのオペレーションで実践しています。

バーチャル的顧客満足度の重要エンジン①HCP

当社では、継続的な応対品質向上を実現するために、全国の拠点でオペレーター50名に対して、1名の専門の知識を持つ、育成専任者HCP(Hospitality Communication Partner)を配置しています。
HCPの役割は、以下の二つとなります。

 ①「お客様の立場になった満足度」をスコア化
 ②「お客様になり替わり、感情を読み取る」力の向上

①は、実際に通話録音を聞きますが、お客様になり替わり、商品、サービスに対する意見、満足度などをジャッジしていきます。顕在化されている情報は当然ですが、お客様の声色、話し方に集中し、言葉に表していなくても、全体的な表現で、感情を読み取ります。トレーニングは初期段階で3か月の基礎研修、OJTを実施しますが、社内認定後も毎月、本社品質部門と定期的に「お客様になり替わり、感情を読み取る」トレーニングを継続的に実施します。

②は、具体的な応対スキル向上のトレーニングです。お客様は様々な切り口で言ってきます。商品やサービスの理解度も様々です。つまり、お客様は状況や要望、感情を全てきれいに整理して出してはくれません。
どんなお客様でも、状況や感情を感じ取り、お客様に代わって話を要約し、要望を引出し、「会話の中で有効な情報を、オペレーターが整理する」トレーニングを中心に実施しています。
方法としては、実際の録音を使用し、「この通話のお客様対応」として、何を感じ取れなかったのか、お客様の意見やアラートを見過ごしてなかったか、お客様が他にも感じていることはなかったか、などをHCPとオペレーターがマンツーマンでディスカッションします。これを毎月、定期的に行い、「お客様になり替わり、感情を読み取る」力をオペレーターにも、習得させていきます。

このような、HCPとオペレーターのトレーニングは、原則、マンツーマンの形で実施します。また、リアルな自身の通話を聞くことにより、客観的に自身の強みと弱みを把握し、自身で解決を導き出します。

このHCPの活動こそが、当社のバーチャル的顧客満足度調査を支える重要なエンジン①となっています。

バーチャル的顧客満足度の重要エンジン②スモールラボ

当社では、オペレーター7~8名を一つのチームに編成し、スモールラボ(小さな研究所)活動に取り組んでいます。
当社の企業理念である「Happy Clover」でも掲げている、私たちは「想いをつなぐコミュニケーション・パートナー」という存在を目指すにあたり、従来の活動自体の見直しを行いました。

開始当初は、業務改善や効率化等、どうしても自社目線の活動が多くありました。そこで名称も「スモールラボ」という小さな研究所という建付けに変更しました。まずは、「企業研究」としてクライアントの企業理念や商品、サービス、ターゲティング等を研究します。これは実際にお客様対応に従事するメンバー自身が、インターネットで調べたり、営業のヒヤリング情報を参考に各自持ち寄り、ディスカッションします。実際、クライアント企業に直接質問したり、ディスカッションに参加していただくケースもあります。
ここで実際にお客様対応するメンバーが「企業のイメージ」を共通認識します。また、「お客様研究」は年齢層や想定されるニーズ、利用状況、問合せシーン等をイメージし、ディスカッションします。

このような活動を通じて、実際にお客様と対話するオペレーターが、「企業」と「お客様」を具体的にイメージし、知ることで、より、その企業に沿った軸での顧客満足度向上実現を目指します。

このスモールラボ活動こそが、当社のバーチャル的顧客満足度調査を支える重要なエンジン②となっています。

①HCP活動で、「お客様になり替わり、感情を読み取る」力を習得し、②スモールラボ活動で、企業のブランディングや戦略に沿った「顧客満足度」を創りだす。このサイクルこそが、当社のバーチャル的顧客満足度を実現できるエンジンとなっています。

コンタクトセンターの有効活用

上記のように、「個に寄添う応対」というポリシーに、重要となるエンジンの①HCP、③スモールラボで「バーチャル的顧客満足度」は成り立っています。
実際に従来型の顧客満足度調査との比較では、バーチャルが若干低め(厳しい)スコアになっています。単に平均点での比較ではなく、リアルとの相違レポーティングも可能です。
また、いわゆる「良いお客様」は、アンケート評価も高くなるので、リアルでも実際にブレが出ます。大切なのは、「お客様が満足しているか」という潜在的な部分も含めて判断するということです。
お客様の温度感や、重要なキーワードなど、定型アンケートでは、見えない事柄が明確に見えてきますし、定型アンケートの質問内容の不備や有効性など、アンケート自体の課題も見えてきます。収集する顧客層に関しても、新規顧客、リピーター、ロイヤルカスタマーなどの区分別、また、従来型では、実際の購入者、利用者に限られますが、購入検討段階のお客様など、幅広く網羅できます。

電話応対品質や顧客満足度、VOC分析は、ニーズはありますが、実際は、「最初から自社でやるには時間がかかる」、「IT導入に費用がかかる」、「テスト的に試したいけど可能なのか」などの声も聞きます。
当社のサービスを活用すれば、「必要な時に」、「必要な形」で、「必要な量」で実施したいという多様なニーズにも応えられます。

今までは、「コンタクトセンター」のアウトソースというと、電話対応を全て委託するというイメージが強いと思います。
このコラムを読んでいただいて、「カスタマーサポートをあきらめない」ためにも、自社のニーズに合わせ、上手にコンタクトセンターを活用するヒントになれば幸いです。

お客様には、「個」に寄添う応対を、オペレーターには「個」に合わせたパーソナルトレーニングを実施している当社ですから、当然、EC事業者の皆様にも、「個」に合わせた「必要な時に」、「必要な形」で、「必要な量」のサービスを提供していきたいと考えております。また、電話応対研修も1日から、応対品質の可視化も数十通話分のモニタリングから、実施可能です。アウトソースを有効活用し、現在の自社の状況を客観的に数値化したり、潜在的な課題を顕在化するには、スポット的に活用されるのも有効かと思います。

次回、第4回目は、VOCの精度・質・量の最大化や活用についてご紹介します。


著者

澁谷 毅 (Takeshi Shibuya)

ヤマトコンタクトサービス株式会社 経営戦略部長 兼 CS推進部長

中古車オークション会場のカスタマーサービスを経て、官公庁、地方自治体のコールセンター設計、構築、運営に携わり、コールセンターアナリスト、アーキテクチャとして活動。現職では経営戦略部門と品質部門の責任者として、コールセンターを活用したブランディング戦略や顧客目線のKPIマネジメントを担う。コールセンターの世界標準規格COPC VMO規格登録コーディネータ。日本コンタクトセンター教育検定協会理事。

コーポレートサイト:http://www.y-cs.co.jp/