長崎県との連携で、離島に光を。冴えるヤマトの知恵

石郷“145”マナブ

 ヤマト運輸、、、と聞いて何を浮かべるだろうか?・・・配送?

 実は、ヤマト運輸株式会社等、ヤマトグループは、全国の地域のいいものに着目し、それらをきっかけに、その地域の発展を目指す動きをしているのは、ご存じだろうか。また、その活動の一翼を担うのがECでもある。

ヤマト運輸と長崎県の取り組みの全容

 僕が今回注目したのは、ヤマトグループと長崎県の取り組みである。両者は、「ながさき「しまねこ」プロジェクト」という協定を締結することで、長崎離島(五島、壱岐、対馬、小値賀、新上五島、宇久、高島)の食材に光をあてる。

 具体的には、収穫(漁獲)された離島の旬の食材を、関東へ翌日午前中に届ける仕組みを作っており、そこに、ECが絡む。つまり、事業者向けに「しまねこECサイト」を設置し、離島の食材を産地直送するというのだ。生産者にとっては、安心して販路の拡大ができ、より品質の高い産品の生産に専念でき、一方で飲食店は、特色ある食材を使ったメニュー開発で、他店との差別化を図る。

長崎のどんな想いをヤマトグループは送り届けようというのか

 そして、冒頭の写真にあるのは、隅田川の屋形船の中での光景で、長崎で海女さんをやっている大川香菜さんと話をしたときのものである。同プロジェクトは、東京の墨田区観光協会の協力を得ることで、同区内にある飲食店に、そうした食材を紹介しようということで、屋形船を使って離島食材の試食商談会を行っていたのだ。

 大川さんに僕が聞いたのは、純粋に、長崎の良さについて、だった。彼女は、東日本大震災をきっかけに、人生は一度きり。やりたいことを貫かないといけないと岩手にいたにもかかわらず、一念発起して、海女さんになるべく長崎に来た。長崎への思いは並ではない。

 そんな彼女が言う。長崎の離島というのは、他の手を借りることなく人間が生活でき、自給自足が出来てしまうくらいにあらゆる生き物と自然が整っていると。自ら魚を釣り、それを料理して食べ、そして、残ったものは畑に還元して、優れた農作物を生む。地下水も豊富で、水をくみ上げられる環境があるので、稲作が盛んであると。そして、そのどれもがそうした自然の摂理にかなって生まれたものだけに、心から美味しいと思えるものばかりであり、体に力を与える食材となっているのだそうだ。でも、と少し顔を曇らせる。

ヤマトグループがつなぐ、長崎離島の生産者の想い

ヤマトグループがつなぐ、長崎離島の生産者の想い

 それは、離島ゆえに今まで、配送がネックとなっていて、全国には広まることはなかなかないということだ。これだけ素晴らしいのに、けど、その食材を知っている人は少ないと。だからこそ、こうしたヤマト運輸の一つ一つの行動は、自分達の誇りある食材を広める、心から応援したいプロジェクトだと話し、期待を込めたいい笑顔を浮かべた。

 長崎の生産者の想いを託す、屋形船で出ていた食材ひとつひとつを、ここで紹介しよう。

・「刺身」=くえ(若松町中央漁協)、あなご(海風商事)、旬の魚5種(五島ライブカンパニー)、壱岐赤雲丹(壱岐東部漁協)、あらかぶ(壱岐東部漁協)
・「刺身蒲鉾」=あじかんぼこ(しまおう)、あご刺身蒲鉾(上五島水産)。
・「天ぷら」=いか一夜干し(上五島水産)、岩牡蠣(マルオト)、鳥ささみ(さざなみ農園)、鶏むね肉(さざなみ農園)、パプリカ(五島市物産協会)
・「揚げ物」=あじすりみ(しまおう)、エビ天(しまおう)
・「碗もの」=五島手延うどん(五島手延うどん協会)、あごつゆ(長崎五島うどん)
・「ご飯もの」=マグロ丼(徳丸)
と言った具合だ。どれか興味を持ってもらえたら、幸いだ。

 僕は改めて思う。今までヤマトグループが築いてきたのは、お客様の想いと想いをつなぐ道である。単純に、それを配送と表現するのは、あまりにつまらない。荷物には、送り手の想いと、受け取る側の感謝がある。いろんなものを結びつけ、つないできた誇りがあるからこそ、ヤマト運輸は、このプロジェクトがある。

 つまり、いまだ気づいていない日本のいいものを掘り起こし、かつ自らがつなぎ手となって、両者に新たな価値をもたらす、ということなのだ。だから、僕は、この動きには拍手を送りたい。長崎に光を。離島に笑顔を。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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