ヤマト運輸を提携へと動かしたマネーフォワード躍進の理由

石郷“145”マナブ

Fintechで脚光を浴びるマネーフォワード

 先日、ヤマト運輸株式会社(以下、ヤマト運輸)の記事を見ていたら、株式会社マネーフォワード(以下、マネーフォワード)という社名が挙がっていて、業務連携まで果たしていた。マネーフォワードはECサイトの運営者にはまだ、おそらく馴染みのない会社であるが、ヤマト運輸は自らの事業の価値向上のため、その会社に着目するあたりが、さすがだと思った。この会社は、今後、特に中小企業で必要となるであろうツールを提供している。実態と中身を知りたくて、マネーフォワード社に伺ったところ、執行役員の田平公伸さんが出てきてくれた。

 マネーフォワードが提供するツールとは「MFクラウドサービス」と言う。この着想の原点はマネーフォワード社というBtoC向けアプリ、その名も「マネーフォワード」にあって、要は、銀行口座と同期して、アプリ上で常に通帳の金額が更新される仕組みだ。貯金をおろせば、アプリ上の口座の金額も自動的に連携して減るのだから、セキュリティの部分も考えれば、画期的なアプリだとして脚光を浴びた。

同社はアプリ上の金額を活用し、アプリで自分のお金の管理をしていく家計簿として使えるようにして、誕生から4年弱で、400万人が利用していると昨日発表されたばかりだ。

「MFクラウドサービス」はマネーフォワードの知見をBtoBに生かしたもの

 「MFクラウドサービス」は、それをBtoB向けにアレンジしたもので、アプリ「マネーフォワード」と同様に、3600以上の口座から取引データを自動で取得することができ、それも家計簿と同じ要領で、会計・確定申告、経費、消込、請求書、マイナンバー、給与の処理ができるようになっている。

 項目や機能にあたっては、実際に、会計事務所と組んで、より良い形に更新をしていくことで、利便性はこの何年かで格段にアップした。経理の際、面倒な仕分けルールすらも、人工知能を取り入れ、学習させ、使うほどに使い勝手がよくなる仕組みだ。

 つまり、ヤマト運輸はこの「MFクラウドサービス」にある「MFクラウド請求書」の機能を、ヤマトビジネスパートナーズという会員向けに「請求業務クラウドサポート」として、提供を始めたというわけだ。ヤマトには、自社グループにヤマトシステム開発がありながら、この企業と連携していることからも、マネーフォワードの機能に対しての高い評価と、信用を置いているということがうかがえる。

ヤマト運輸も業務提携に乗り出した、その背景は?

 ヤマト運輸によれば「請求書の関連業務は紙への手書きや表計算ソフトへの手入力が多く、ITの力を生かし切れておらず、多くが請求書を表計算ソフトで作成している」としており、一方で、マネーフォワードは「MFクラウド請求書を活用した企業では1枚の請求書作成にかかる時間が6割に軽減されるというデータもあり、実際の業務効率化を実現している」とある。ヤマトビジネスメンバーズは75万を超える法人や個人事業主がいて、このメンバーであることのメリットをこのサービスによって享受できるというわけだ。

 ヤマト運輸の会員サービスの中でこれらを実感してもいいし、完璧にいろいろ使いこなしたいということであれば、マネーフォワードと直接、その装備をフル活用するのもいいだろう。いずれにせよ、EC業界は中小零細企業や個人事業主が少人数で店舗を運営していることが多く見られる。MFクラウドサービスのようなものは、売上に直結するものではないが、本当に、手間がかかる確定申告などで、その作業効率が軽減されることは、必ずや歓迎される向きは強いと考えている。

アスクルも同社と業務提携に、乗り遅れないために必要なのは・・・次のページで

ECサイトの運営者にもメリットあり

 他にも、アスクルとも業務提携をはかり、MFクラウドfor ASKULというサービスを開発しており、ヤマト運輸と同じように、ASKULの先にも様々な企業が存在して、ここにMFクラウドサービスを提供しているのである。あわせて、BtoBの「マネーフォワード」の家計簿機能は、LOHACOと連携させて、相乗効果を狙おうとしている。

 マネーフォワードが提供するこうしたサービスを、最近はFintech、いわば、Financial technologyと呼んでいて、今までにはなかった新たな切り口のビジネスと言える。このFintech の波は業種業態を超えて広がり、ごく当たり前にそれらのテクノロジーが取り入れられる機会が増えている。

 個人的に思ったことだが、BtoC向けの機能を活用すれば、メルカリなどと連携しても面白いのではないかと思った。なぜなら、ライトな感覚でCtoC売買を進めているが、いざ何個購入し、何個販売したのかが、家計簿と連携していたら、有効活用する人たちも出てくるのではないかと思うから。

 業務のあり方を根本から変えようとする、この時代の流れを掴まずして、自分たちの事業の発展はありえない。時代は刻々と進んでいて、あわせてECサイトもこうした波に乗り、BtoBのMfクラウドサービス等は、業務の効率化に直結する。ECの売上げばかりではなく、こういう部分でも効率化を図り、一層の発展を狙うべきだろう。自ら時代を受け入れ、変化することがすべての企業にとって急務な話ではないか。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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