R∞活用のCRM施策、タワーレコードの売上向上の秘密

ECのミカタ編集部

 CDショップ・チェーンのタワーレコード。EC店舗の売上も向上し続けている秘密は、パーソナル・マーケティング・プラットフォーム「R∞(アール・エイト)」にあるという。

 バリューコマース株式会社が開催したセミナーで、タワーレコード株式会社 オンライン事業本部 本部長 前田徹哉氏が語ったことを基に、R∞の必要性について考えていく。

既存顧客を離さないためにR∞で施策を

 実店舗と共に売上が向上しているタワーレコード オンラインは、顧客の維持・育成・獲得に力を入れている。そのためにはCRMが必要であり、「R∞」を活用している。このR∞は、バリューコマース株式会社が運営しており、それぞれの顧客に合ったタイミングで施策をする、マーケティングオートメーションを実現するCRMパッケージである。なお、R∞の特徴は以下の通りだ。

【ダッシュボード】
 分析で顧客の重要度ランクや嗜好性・購買傾向を把握し、アラート機能でリピート率の低下・ランクダウンなどを確認することができる。さらに、ログデータの集計で購買履歴を計測することが可能。

【顧客の見える化】
 コンサルタントが企業に最適なランク・クラスタを定義し、最新のデータを基に自動判別する。

【キャンペーンマネジメント機能】
 蓄積したデータと分析結果を基に対象抽出から施策機能を組み合わせたキャンペーンシナリオの作成が可能。

【レコメンド機能】
 最近閲覧した商品やカートに入っている商品など、顧客1人1人に合った情報のレコメンドが可能。

【多種多様な分析】
 キャンペーン単位の効果はもちろん、前年比較によるランクダウンや離反によって維持できなかった逸失売上、率、推移まで検証可能。

【低コスト】
 ASP型のツールのため、システムの調達や環境構築等にコスト、工数がかからず、低コストで導入が可能。

 ECを運営していく中で、売上を向上させるために「新規顧客獲得」に力を入れることがある。それももちろん大切だが、売上向上には「既存顧客」が必要なのだ。それを表す法則が「2:8」であり、これは2割の既存顧客で8割の売上を作ることである。なお、タワーレコード オンラインの場合は、3割の既存顧客で8割の売上を作っているそうだ。

メルマガは顧客の目線に立って考える

 例えば、メルマガを不特定多数の顧客にクーポン付きで送るとする。しかし、クーポンは特定の商品。それをクーポンの商品を購入したことがある顧客に送れば効果的だが、その商品を購入しない顧客に勧めても効果はない。それどころか、顧客が離れていく可能性がある。

 これを解決するためには、一方的なメルマガではなく、顧客の目線に立ち、喜びそうなメルマガを送る。顧客のニーズに合わせてメルマガを送ることが既存顧客を手放さないために必要なことだ。しかし、1人1人の顧客に向き合うことは業務上難しいため、R∞を活用する。

 R∞施策の例は、顧客が商品購入20日後にメールを送る。その際に未購入だった場合は、45日後にクーポン付きのメールを送り、購入を促す。さらに、カゴ落ちの顧客には、カート投入1日後にメールをする。最短で90分後にカートの商品訴求メールを送ることも可能であり、購買行動に繋げることができる。こういった施策をし続け、既存顧客を手離さないようにするのだ。

タワーレコード オンラインの施策「メール」

 タワーレコード オンラインは前述のような既存顧客を大切にしており、様々な施策を実施している。特に、誕生日クーポンメールとサンクスクーポンメールは効果的だ。誕生日クーポンメールは、来月に誕生日がくる顧客に前月の下旬に送付。一方、サンクスクーポンメールは、前回の受注から一定期間、注文していない顧客に送付する。このサンクスクーポンメールの目的は、顧客を眠らせないことだ。

 誕生日クーポンメールの結果は、過去1年間で1回以上の購買実績のあるアクティブ顧客ではクーポン使用率が10%強であった。また、1年間で購買実績のないノンアクティブ顧客でもクーポン使用率1%を達成した。

 一方、サンクスクーポンメールでは、クーポン使用率4%台を保つ結果となった。顧客を眠らさないための施策を投入したことが一定以上の効果を創出した。

 こういった「過去1年間で1回以上の購買実績がある」などの顧客分析に、R∞の「ダッシュボード」を活用している。ダッシュボードを活用することにより、打ち手の早期化と施策の精度向上を図ることができるようになった。

 最後に前田氏は、「顧客を追いかけることは、顧客の満足度や感動に繋がり、それには、売上や利益がついてくる。」と話した。それは、あらゆる状況を見て、様々な施策を実施した結果、売上が向上し続けている「タワーレコード オンライン」があるからこそ、分かる言葉なのだ。

 売上の鍵を握っているのは「顧客」。それは、まぎれもない事実なのだ。顧客の中でも、特に既存顧客が必要であり、手離してはいけない。そのためにもR∞を上手に活用しながら、「タワーレコード オンライン」のように様々な施策を実施していくことが明日の売上に繋がるのではないだろうか。


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