取扱高は30兆円。世界で選ばれるPayPalが明かす今後の戦略

ECのミカタ編集部

 世界200以上の国と地域でオンライン決済サービス「PayPal」を提供する PayPal Pte. Ltd.(以下、PayPal)が都内で記者会見を開き、今年10月にカントリーマネージャーに就任した曽根 崇氏による日本市場におけるPayPalの取り組み、進捗、今後の戦略についての説明があった。

 PayPalは、1998年にアメリカのシリコンバレーで設立され、世界中でオンライン決済サービスを展開してきた。日本でのサービス開始は2010年からのことであり、多数の日本企業とのパートナーシップを組んでいる。

 既に知っている方も多いとは思うが、PayPalはアカウントを保持している者同士であれば、IDとPASSのみを用いて数クリックでオンライン決済ができるサービスだ。簡単かつシンプルなサービスにも関わらず、不正な取引の排除や不正が起きた場合の対処も徹底している。

 世界における直近のPayPalの動きとしては、30兆円ほどの取引がPayPalのプラットフォームで行われていることが明かされた。日本では、まだ世界ほどオンライン決済が普及していないのが現状だ。しかしPayPalは、日本のマーケットにおいて“3つのチャンス”があると考えている。ではそのチャンスから、PayPalはどのような動きでサービスの利用を促進しているのだろうか。

PayPalが考える日本でオンライン決済が普及するためのチャンス①

 PayPalが考える日本でのチャンスとは、①中小企業・スタートアップ企業②モバイル③訪日観光だ。

 まずPayPalはその簡単さや不正検地技術の高さなどが、①中小企業・スタートアップ企業の起業にとって利点が多いことを説明した。それまでPayPalは、中小企業やスタートアップ企業が課題としていることがどういったことなのか、そしてどのように解決すべきなのかを把握しきれていなかった。

 そこで今年3月には、ジャパンEコマースコンサルタント協会(JECCICA)と共に中小企業1000社以上にインタビューやアンケートを行い、EC業界における課題を調査した、「中小EC企業向け2016年EC戦略白書」を発表した。

 また、国内外の有望なスタートアップや有力ベンチャー企業への投資を行うB Dash Ventures株式会社が開催する招待制イベント「B Dash Camp」にスポンサーとして参加したりなど、積極的な取り組みによってビジネスの側面からだけではわからない中小企業・スタートアップ企業が抱える課題と向き合っている。

 合わせて、多くの中小企業をサポートするために、様々な支援企業とパートナーシップを組むことにも注力している。例えば昨年には、GMOペパボ株式会社「カラーミーショップ」、今年の2月には株式会社マネーフォワード「Money Forward」、今年10月には株式会社ecbeing「ecbeing」と連携し、様々な角度からEC拡大の為のソリューションを展開してきた。その結果、2015年から2016年にかけては、特にサービスの利用者が増えている。

PayPalが考える日本でオンライン決済が普及するためのチャンス②③

PayPalが考える日本でオンライン決済が普及するためのチャンス②③

 PayPalが考える日本でのチャンス②モバイルについて、ここ数年のスマートフォンの普及率からも考えられるように、PayPalは過去1年間でも特に“モバイルEC”の為のサービス最適化に注力してきた。

 具体的にどのような最適化かというと、PayPalにサインインしてから決済が完了するまでの流れのなかで、例えば決済画面などをデバイスに合わせて自動での最適化に対応するなど、よりユーザーがPayPalを利用しやすくなるようサービスを改善することで利用者を増やしている。

 そして③訪日観光について、訪日観光客はこの2,3年で大幅に増加しており、既に今年は2000万人が日本へと足を運んでいる。こうした状況を受けて、PayPalは宿泊施設予約時の決済を支援するべく、宿泊客が利用している予約エンジンとの連携を進めた。それまで2社との連携であったところを、今年に入ってから新たに6社と連携している。またPayPalはそのような環境整備だけではなく、日本旅館協会との提携も行い、加盟施設2800施設へサービスの利用促進が可能となった。

 このような活動により、PayPalは国内でのサービス普及に取り組んでいる。次に曽根氏は、PayPalの今後の戦略について説明した。

多種多様な戦略で国内ECを快適に進化

 これまでも積極的な活動でサービスの普及に取り組んできたPayPalであるが、今後更に日本のマーケットでサービスを拡大していくためにいくつかの戦略を練っている。

 まずは、様々な企業との連携を進めていくなかで、特にデジタルコンテンツ・デジタルグッズを展開する企業との連携に注力していきたいとのことだ。PayPalは、この一年間でそれらのサービスを展開する「Hulu」や「DMM.com」などとも連携しており、不正のターゲットにされやすいデジタルコンテンツは不正に強いPayPalとの相性がいい。

 そしてやはり、PayPalのサービスを日本国内で広めていくためには、消費者に利用してもらうほかない。そのためPayPalは、連携先の企業とともに消費者向けのキャンペーンを展開するなどし、今年は例年よりも利用者数を大きく伸ばしている。

 また、新しいプロダクトである「ワンタッチ™」によって、モバイルの利便性を大幅に強化することにも努めている。「ワンタッチ™」は、買い手がサイトから移動せずに決済ができる機能であり、PayPalログイン画面にあるチェックボックスにチェックを入れることで180日間ログインせずとも決済が可能となるため、利用者はECサイトごとに必要なログインのストレスを感じることなくオンラインショッピングを楽しむことができる。

 その他にもPayPalは、奥行きのある多種多様なソリューションを提供し、日本のマーケットのトレンドや消費者のニーズ、PayPal内でのビジネスの進捗状況によって新しいサービスをリリースしていくとのこと。2015年にeBayから分社化し独立企業として再上場を果たし、更にサービス展開が活発になっているPayPal。まだ世界に比べてもオンライン決済サービスが浸透していない日本国内において、2017年はより存在感を発揮するような取り組みが期待される。

※PayPalの連載コラムは以下関連リンクをご確認ください。


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