Amazon/楽天/ヤフーは何が違う? 今更聞けないネット通販

石郷“145”マナブ

 先日、とある大学で登壇させてもらったのですが、初歩的な、ショッピングモールの知識といっても、意外と理解が難しかったりするものだな、と思いましたので、今日は記事を書かせていただくことにしました。ショッピングモールの代表格は、楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングです。これらは、マーケットプレイスといって、販売する場所を提供しており、この場所が集客の要素を持っているので、基本的には、これら自体はお店ではなく、お店に場所を提供するECの支援企業です。

 とはいえ、楽天市場、Yahoo!ショッピングの2つとAmazonとでは、その性質は、大きく異なります。商品の提供の仕方が異なるからです。

「出店型」の楽天、ヤフーと「出品型」のAmazon

「出店型」の楽天、ヤフーと「出品型」のAmazon

 結論から言うと「出店型」と「出品型」の二つに分けられます。楽天市場を例にとって考えれば「出店型」です。この「出店型」を説明する上でわかりやすい例が、百貨店です。

■楽天市場って?
 よく駅前にある百貨店を思い浮かべてみてください。そこにはいろんなお店があります。僕らは、そこに百貨店があるから、そこに行き、その一つ一つのお店を見て回り、興味を抱いては入店し、時に商品を購入します。

 つまり、楽天市場は、百貨店のように、いくつかのショップが集まり、そして、お店は色々な飾り付けをしていて、お客様を待ち受けます。そこでは、商品の世界観が重んじられ、写真などを使って、それぞれの店なりの売り込みをしていて、また、百貨店同様に、そういうマーケットプレイスが存在するから、その場所を使うことにお金は発生することとなり、ショップはその場所代(出店料などの諸経費)を楽天に支払うわけです。

 購入フローは、例えば、「楽天市場」でベッドを買おうとなれば、例えば、上の写真の「家具のLOWYA」がまさにそうであるように、店の看板(=ロゴ)があって、下にいくにつれ、商品が細かく丁寧に写真を交えて、紹介されていくのです。この「家具のLOWYA」しかり、楽天市場では、店のカラーが鮮明なので、お客様は「家具のLOWYA」で購入したい、という意思を持って、購入することも少なくありません。これは、この店に限ったことではなく、どこの店舗でも当たり前に、楽天ではある話です。

■Amazonって
 一方で、Amazonはどうでしょう。ちょっと思い浮かべれば、わかりますが、AmazonではAmazonで買ったというイメージが強く、Amazonの中にある○○という店舗で購入したというイメージはあまりないのではないでしょうか。それは、Amazonが「出品型」のビジネスモデルだからです。つまり、店であることよりも、商品を前面に出しています。下の写真を見るとわかると思います。

 店ではなく、商品を、というビジネススタイル故に、店が出品しているとは思えないわけです。でも、実はお店が出品しているのです。どこのお店が商品を出品しているのかは、画面中央に「〜〜〜が販売・発送します。」と書いてある、この部分。〜〜がお店の名前です。

 わざと、家具のLOWYAで売っている同じ商品の写真をここにいれましたが、余分な情報は極力削ぎ落とし、スタイリッシュに商品を表現しています。同じソファを買うにしても、これだけ見えかたが違うわけです。だから、商品を提供する側の人を、お店ではなく、ここでは出品者と書かせてもらうことにします。

出店型と出品型ではビジネスのあり方だって変わる
 両社のビジネスのあり方が、違えば、その戦略も変わってきます。

■「楽天」の特徴はいかに?
 楽天市場であれば、店のカラーを鮮明に出せるので、自分のお店のファンを作ることに注力することができます。そして、店のブランディングをしながら、店同士の相乗効果も得られます。例えば、お買い物マラソンという企画では、複数の店舗をはしごすると、商品の購入者にメリットがありますから、2店舗目に自分の店舗が選ばれるかもしれなくなるわけです。

 また、楽天市場の中にあることのメリットは、この中にあるショップ同士で、共通の「楽天スーパーポイント」を活用できるので、他のお店でたまったポイントを自分のお店で活用できることとなり、当然、自分のお店で買ってもらえるというチャンスが舞い込んできます。本当に百貨店で物を買うようなショッピングの楽しさを提案しているわけです。だから、楽天がずっと言い続けるテーマには、「shopping is entertainment」というフレーズがあるのです。

 また、楽天の中は、ある種、百貨店のようなものですから、店舗の個性と個性がぶつかり合うわけです。店をブランディングする必要性があるから、看板(見せ方)や商品の並べ方、商品ページ、何の商品を仕入れるのか等、一つ一つが店のイメージを構築していくわけです。購入者が気に入れば、店自体のファンになるから、ご贔屓の店が生まれ、それを理由に、リピーターが生まれることもあり得るわけです。

 整理すると、先ほど触れたポイントの活用やモール内全体で一斉にセールをする「楽天スーパーSALE」のような機会と【環境】を作り、それらを、店としてきちんとお客様と向き合えるような【システム】を提供することで、ショップを伸ばしていきます。そして、何より、忘れてはならないのがノウハウです。

 その中でも、楽天市場の特徴をシンボリックに示すのは、“ひとけ”の演出すなわち、店自体が賑わっている感じをどれだけ出せるか(よく人が集まるところを「ひと気がある」とか言ったりしませんか?)ということになります。

 ただ、それはテクニック的なものではありません。楽天もテクニック的なものを考えていたようですが、そうではない価値、そこに楽天の真骨頂があることに気づいたようです。それは、それぞれの店舗ごとにいかに違った個性を出していくことがあってこそ、賑わいがあると。だから、楽天は、わざわざ全国に支社をおいて、地方のネットショップ運営者達に楽天の社員が足繁く通って、その店舗なりの個性を模索しているのです。楽天市場が特に、楽天社員と店との距離を近く感じるのは、こういう人間関係が築かれているからこそ、だと思います。

楽天市場をもっと理解したい人に

■Amazonらしさとは?

 一方で、Amazonは、店の看板なくして、商品を出品できますから、誰でも、良い商品さえ、持っていれば、効率よく、確実に成功を収めやすいと言うことになります。検索してみるとわかるのですが、商品をメインにするからこそ、Amazonのトップ画面では、商品を検索することを前提としており、検索すれば、一気にその商品のページにたどり着きますし、Googleなどで検索して商品にたどり着いたら、Amazonの商品ページだったということはないでしょうか。

 つまり、1商品に対して、基本、1つの商品ページしかありません。店をどうしようかなどの思考はないまま、購入までのステップが少なくて済みます。

 ちなみに、もし同じ商品を複数者が出品していたらどうなるのか、ということになりますが、原則、サービスの質がいいお店がメイン(商品説明に近いところ)にきて、そのほかの出品者は、横の部分に掲載されることになります。「この商品は〜〜でも購入いただけます」という具合に。つまり、出品者にとっては、在庫数、配送など、その商品自体の自らのサービスを向上させて、お客様の満足度が高いものにしていけば、メインを取ることができます。何に注力すればいいかが、シンプルかつ明確です。

amazonをもっと理解したい人に

Amazonはモノを売るための効率的手段を徹底する

Amazonはモノを売るための効率的手段を徹底する

 だから、Amazonはいかに良い商品を一つでも持っていれば、成功させることができるかという仕組みづくりが優れているわけです。上の写真を見て欲しいのですが、出品する際も、自分が販売しようとする商品を検索し、すでに出品されていれば、ただ出品というボタンを押すだけで良いのです。

 勿論、初めてAmazonに登録される商品であれば、自分で登録をする必要がありますが、それはAmazonに集まるお客様を全て自分の店舗で独占できます。いずれにせよ、一つの商品に対して、1つのページしかないということは、それぞれの商品ごとに、出品者同士のバトルが生まれ、いいポジションを得るには、配送など、いかにその商品に対しての自分たちのサービスを向上させるかで、その商品の一番目立つところを取る必要があるわけです。その部分で、今度は、Amazonは、Amazonにしかない自らの強みを出品者に提供するわけです。それは何でしょうか。

 実は、Amazonは、支援企業と店という2つの顔があります。先程来言っているように、マーケットプレイスといって、商品を販売する場をあらゆる人に対して提供することもしていますが、自らもメーカーから商品を仕入れ、販売もしています。その場合は、冒頭に説明した、お店が出品するための環境を提供する支援企業ではなく、Amazon自体がお店であり、Amazonから出荷されていると言うことになります。

 ちなみに、Amazonが販売している時と、お店が出品している場合はどうやったら見分けられるのかは、先ほど触れた、真ん中の部分、そこが出品者名ではなく「Amazon」が販売出荷しますと書かれてあれば、Amazon自体が商品を販売しているということになります。

 このAmazonが自社で販売していることが、結果的に、出品者にもメリットをもたらすようになっています。つまり、それは物流です。自社で仕入れて販売していますから、自分で安定した売り上げが保てるので、それを背景に、Amazonは全国に物流拠点を持っているのです。

 つまり、この倉庫を出品者に開放して、Amazonの倉庫から、すぐに発送することができる他、そのほかの出荷状況に関するカスタマーサービスを一括で請負、ここに出品する人の顧客満足度すらも高まる環境を整えたわけです。これがフルフィルメントby Amazonということになります。だから、商品さえ持っていれば、商売ができる環境ができる。これがAmazonの最大の強みなのです。

amazonをもっと理解したい人に

出店者のメリットとして、ヤフーは出店料が無料なのが特徴

出店者のメリットとして、ヤフーは出店料が無料なのが特徴

 これで、出店型と出品型の大きな違いを理解できたでしょうか。どちらが優れているということではなくそれぞれに良い部分を持っています。さて、ここで質問です。Yahoo!ショッピングは「出店型」「出品型」のどちらでしょうか? 

 Yahoo!ショッピングは「出店型」です。出店型の中でも、それぞれの個性があって、一番わかりやすい違いは、楽天市場が、出店することなどにコスト、すなわちお金がかかるのに対して、Yahoo!ショッピングは出店することそのものの無料化して、多くの人に、ECができるように門戸を開放したことにあります。ヤフーでは、これを「eコマース革命」と呼んで、以降、躍進を遂げています。

 出店料無料となったことで、多くの人がECで商売をするチャンスに恵まれたことから、今や日本一と言われる45万店と言われる出店数を誇り、2.6億商品が集まっています。一方で、集まりすぎると、商品の質が落ちるのではないかと思われがちですが、ヤフーが巧みなのは、ここから様々な施策により、ある意味、努力する店舗としない店舗を振り分け、する店舗にしかるべきメリットがいくように仕向けています。

 例えば、ヤフーはもとから、いろいろなコンテンツを持っており、ヤフー独自のプレミアム会員(有料462円:税抜き)を持っています。そこで、ヤフーはその会員に対して、ヤフーショッピングでの優遇策を用意したのです。すると、会員はその元を取ろうとして、他のモールよりも、ヤフーショッピングを優先して買おうとします。実に、その優遇策で、先日の2016年末の発表では、売り上げに占める取扱い高の6割がプレミアム会員になったと言います。

 つまり、それらはいうまでもなくリピートの可能性が高いユーザーであるからショップも安心して、広告投資などをしやすくなるわけです。また、PRオプションという商品のキーワードを入札する広告商品を用意して、商品のキーワードの入札は(商品価格の)0.1%刻みで1~15%の料率で設定できるようにしました。つまり、料率が高いものが、検索結果の上位にくるようになるという風にすれば、そこに入札したショップが、有利に販売ができる機会を得ることができます。

 ヤフーはそこで言います。私たちは、出店のところから無料にして、自由に場を与え、あとは自由競争だと。ただ、そのヒントは出すから、勝つべき店舗がヤフーが提案する施策をうまく活用してのし上がればいいと。

Yahoo!ショッピングをもっと理解したい人に

  これで、3つのショッピングモールの違いを理解できたでしょうか。何度も繰り返すようですが、これら3つは、集客する場所を提供しているという点では、共通していますが、商売のあり方は全く異なります。

 だから、僕は思うのです。自分たちの商品をどう売りたいかという、商品への想いとそこからくる戦略が大事だと。自分たちのやろうとしていることに合わせて、どのショッピングモールがふさわしいかを考えることが、ショッピングモールでの展開を考えているお店には重要なことになります。

 大いなる可能性を持ったショップや商品は、どこを活用することで花咲くことになるのでしょうか。もう一度言います。大いなる大志を抱いて、ECの潜在能力を最大限引き出せるのは、商品への想いと、戦略を持つショップのみです。さぁECの大海原へ。


ECノウハウ


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

石郷“145”マナブ の執筆記事