ほぼ日、3/16上場へ。コンテンツマーケにオムニチャネル、次なる展開は?

ECのミカタ編集部

「ほぼ日刊イトイ新聞」2017年2月20日のサイトトップより

コンテンツマーケティングの成功事例としても注目されることの多い(株)ほぼ日は、2月13日(月)、東京証券取引所JASDAQ市場(スタンダード)への新規上場が承認されたことを発表した。上場日は3月16日(木)となる。

ネット通販黎明期より「ほぼ日」の歩み

ネット通販黎明期より「ほぼ日」の歩み「ほぼ日ストア」2017年2月20日のサイトトップより

 株式会社ほぼ日(以下、ほぼ日)は、1979年、糸井重里の個人事務所である(有)東京糸井重里事務所を前身として創業した。インターネット通販を開始したのは1999年11月、さらに2001年の10月には、現在の売上高の約7割を占める「ほぼ日手帳」の販売を開始する。この翌年の2002年、(株)東京糸井重里事務所に組織変更がなされる。ほぼ日手帳はその後、2004年の9月より(株)ロフトにて、リアル店舗でも販売が開始された。

 2011年11月には、「東日本大震災後にご縁ができた気仙沼との関係づくりの拠点」として「気仙沼のほぼ日」を開設、2013年11月には「(株)気仙沼ニッティング」として会社設立となった。(株)気仙沼ニッティングは、「被災地に新たに事業を創ることで東北復興に貢献しよう」と立ち上げた、手編み商品の企画・製造・販売を行う、ほぼ日の子会社(非連結)だ。

 さらに2014年6月、店舗兼イベントスペースとして、東京の南青山に「TOBICHI(とびち)」を開設した。また2016年6月には、犬や猫の写真SNSアプリ「ドコノコ」(iOS版)を配信開始(同年7月Andoroid版配信)するなど、近年の「オムニチャネル」「スマホ化」にも対応した新たな動きも進んでいる。

 そして2016年12月、(株)ほぼ日に社名変更がなされ、2017年2月1日には新ロゴが発表された。そして、今回の上場へと至っている。

※(参考)新規上場申請のための有価証券報告書(Iの部)

コンテンツマーケティングの先駆け、「ほぼ日」の特徴

 ほぼ日は、オリジナルコンテンツ中心の無料ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の企画運営により集客を行い、オフィジナル企画の文具及び日用雑貨等を、「ほぼ日刊イトイ新聞」内のインターネット通販で販売することを主要な事業としている。なお「ほぼ日手帳」ならびにその他一部の商品、書籍は、卸販売も行われている。

 ほぼ日の他とは違う大きな特徴は、「ほぼ日刊イトイ新聞」で、商品紹介だけでなく、エッセイ、対談、インタビュー記事など、オリジナルの読みものが毎日更新されている点ではないだろうか。ECサイトでありながら、商品の紹介よりも読みものがサイトの大きな割合を占める。しかし、その読みものは、いずれも商品とコンセプトが近いものであり、読みもののファンになるユーザーは、自然と商品のファンになるという構造になっている。

 それはいわゆる「コンテンツマーケティング」と呼ばれる手法なのだが、ほぼ日の特徴的なところは、多くのECサイトでは売るためのコンテンツ作りになっているところを、ほぼ日ではそれを感じさせない、つまりユーザーが、売り込まれていると感じない作りになっているのだ。さらに、読みものに対するユーザーの反応は、商品の開発や改良にも活かされるという、良い循環が生まれている。

 また、ほぼ日の売上高の約7割を「ほぼ日手帳」が占めているという点も、大きな特徴だ。この手帳も、年々様々な改良がなされており、バリエーションも通常のオリジナルに加え、小さいサイズ(weeks)や大きいサイズ(カズン)、さらに英語版も登場している。加えて、手帳に付属するカバーのバリエーションも売上に貢献している。

上場で何が変わる?「ほぼ日」今後の課題とは

 ほぼ日は行動指針として「やさしく、つよく、おもしろく。」を掲げている。この指針が読みものや商品にも反映されており、この指針は上場後も変わることはないようだ。

 一方で、ここまで独自の成長と成功を収めてきたほぼ日だが、上場にあたり、今後の課題も複数あげられている。例えば、ほぼ日の強みであるオリジナルの読みものと「ほぼ日手帳」だが、もしユーザーがそこに共感を見出さなくなったとき、一気に事業が傾いてしまうという危険性もある。また、ほぼ日は、代表である糸井重里氏の存在感がまだまだ大きい。

 他にも様々な課題があげられているが、逆に言えば、それらのことをほぼ日が認識し、今後どのように対処していくかということは、注目すべき点だろう。今回の上場により、目立った変化も見られるかもしれない。EC業界の中でも独自の存在としてあるほぼ日、上場後の動きはますます目が離せないものとなりそうだ。

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