ヤフーBest Store発表〜小澤氏が初めて語るコマースグループの中身

石郷“145”マナブ

 ヤフー株式会社(以下、ヤフー)は、「Yahoo!ショッピング Best Store Awards 2016」を開催した。同イベントは各部門、と総合で売り上げの優秀店舗を表彰しており、その他、金額とは別に、総合的(お客様の評価/成長性)で判断した「Yahoo!ショッピング大賞」も発表するものだ。

 受賞店舗に関してまず「Yahoo!ショッピング大賞」は「ヒマラヤYahoo!店」となった。総合賞1位「JohshinWeb」、2位「コジマYahoo!店」、3位「家電と住設のクローバー」、4位「カメラのキタムラ」、5位は「チャームcharm ヤフー店」の順だ。

 また、授賞式後、執行役員 小澤隆生氏に「SoftBankは当然の事として、ヤフー内におけるシナジーが今後の要になりそうに思うが、その辺を見越して、会社としてどう変わっていくのか」という質問を投げかけたところ、思いがけず「ショッピングカンパニーの上に、ヤフオク!等も含むコマースグループができる話」が飛び出し、ヤフーの新たな施策の予感を思わせた。これは、2ページ目の小澤氏の話を見て欲しい。

 では、まず、「Yahoo!ショッピング Best Store Awards 2016」での店舗の声に耳を傾けてみよう。

Yahoo!ショッピング大賞の栄冠に輝いたのは?

Yahoo!ショッピング大賞の栄冠に輝いたのは?

 まず、Yahoo!ショッピング大賞を受賞した「ヒマラヤYahoo!店」だ。同店によれば、ヤフーの施策をとにかく忠実にやってきたことが奏功したとの事だ。正直、5のつく日も最初、半信半疑だったと本音を漏らしたが、実際に取り組んでみると店舗自体の実績が向上し、見方が変わったという。その他、プレミアム会員へのPoint5倍も提示し、その売り上げはより盤石になるように、足場を固めてきたそうだ。

 また、Yahoo!ショッピングでは、検索結果から商品を買っていくユーザーが6割〜7割程度いる為、検索結果でいかにその店の商品を出すのかという部分が大きい、としている。そこで、PRオプションを使いながら、細かく料率を調整。検索結果を通して、商品の露出ができるようにしたことで、集客のベースができたと言う。そのようにして、PRオプションで露出を上げ、次なる手段として「アールエイト」を活用。プレミアム会員に対してクーポンを出す等の施策を打つことで、確実に、それをコンバージョンに繋げていけたようだ。

コジマYahoo!店が上位となった理由は?

コジマYahoo!店が上位となった理由は?

 また、総合2位の「コジマYahoo!店」にも高い実績を出している背景について伺うと「Yahoo!ショッピングは、イベントが充実しており、月を重ねていくごとにその回数は増えて、売り上げでヤマを作るポイントがたくさんあるというのが利点だ」と話している。同店もまた、5のつく日など、イベント性の高さをYahoo!ショッピングの利点に上げている。

 ただ一方で、今後の課題としては、「コンスタントに日々のベースの売り上げが取れるようにしていきたいと思っています。顧客のニーズをしっかり分析して、フォロー体制をどうするかを意識しています」と述べていて、「最近は、SoftBankとの連携、プレミアム会員に対しての訴求で、集客の多さでベースがしっかりできつつあるというのはあるので、更に伸ばしていける土壌はあると思います」と続け、今後、成長する可能性を示唆した。

 同社としては、当初よりもアイテム数も3倍になり、今後の計画として、現状の倍以上の商品数にする意向があり、ECへの重視を明らかにした。そもそも同社が取扱商品のジャンルの幅も広いことからも、別の部門でも活躍できるようにしていくことも視野に入れていて、家電に限らず、躍進が期待できそうだ。

ロイヤルカスタマーの醸成には意味があった

ロイヤルカスタマーの醸成には意味があった

 こうした店舗への表彰を終えたところで、ヤフー執行役員 ショッピングカンパニー長 小澤隆生氏は、この一年を振り返り、また今後の戦略についても話した。

 eコマース革命から3年6ヶ月が経過し、ストア数は今や50万店、商品点数も2億点、取扱高も1407億円まで増加し、さてこれをベースにどんな戦略を見せるというのか、ということになるが、小澤氏は昨年来、ストアに4つのことを約束している。その4つは、「ロイヤルカスタマーの醸成」、「集客の大幅増」、「販促企画の拡大」、「お客様からの信頼」だ。

 「ロイヤルカスタマーの醸成」に関しては、マーケティングにおける様々な検証の中で、出てきたもの。一昨年あたりから、Yahoo!ショッピングは、大々的に、お得なキャンペーンを打ってきたが、やってみた結果、それを全員にしてしまうと資金に限界があるという当たり前の結論にたどり着いた。

 そこで、ヤフーはキャンペーンを打つべき相手を絞り、ヤフーにとって大事なお客様とは何かを考え、それで、相当するのがYahoo!プレミアム会員、Tポイント会員、Yahoo! JAPANカード会員、SoftBank契約者の4つだとして、ここに向けた施策を強化したのだ。具体的には、プレミアム会員に関して、いつでもPoint5倍とするなどしたことで、その年間客単価は、非プレミアム会員の3.5倍となった他、Yahoo!ショッピングの取扱い高のうち、Yahoo!プレミアム会員が占める割合は、62%にまで膨れ上がったという。

SoftBankユーザー、ホークスとの連携が新たな局面へ

SoftBankユーザー、ホークスとの連携が新たな局面へ

 次に「集客の大幅増」では、SoftBankとの連携だ。プレミアム会員に関しては成功したことで、次なるターゲットとしたのが、SoftBankユーザーだ。今年の2月後半から、かなりの頻度でテレビCM中で、「SoftBankとYahoo!ショッピング」の連携をアピール、SoftBankユーザーであれば、毎日Point10倍とすることで、露出の機会と流入のキッカケを作り出した。SoftBankとYahoo!ショッピングが初めてタッグを組んだということであり、反響も大きいという。

 そして「販促企画の拡大」だ。SoftBankホークス優勝セールは一昨年、大好評だったが、今年も優勝していないのにもかかわらず、ホークスセールを実施し、一昨年以上の実績となった。また、一昨年実施した11月11日の「いい買い物の日」の実績も高く、これらの実績を背景に「年末セール」「ウルトラセール」と立て続けにセールを実施し、年末のストアの売り上げに大きく寄与した。ここで、小澤氏が強調するのは「セールが下手だ」と言われ続けてきたYahoo!ショッピングが、セールで売上を作れるようになってきた、という事実だ。大型セール以外にも、ゾロ目の日、5のつく日などで、小刻みにお得な日を設けて、売り明けを上げる作戦も功を奏している。

 4つ目が「お客様の信頼」だ。ロイヤルカスタマーというのは、見る目も厳しい。ここに関しては、むしろここから手がけるというニュアンスが強かった。お客様の声によれば、配送の改善に対しての要望が強いとした。お客様に明確に、出荷日が表示されるよう、見直したほか、システムの整備により二重価格を防ぐようにしているなど、システム面での強化が見受けられた。また、キャンセル率の高さが目立ってきていることから、それらをストア評価に反映していくことで、ヤフー側からも、それらが是正されるように促していくという。

小澤氏が初めて明かす「コマースグループ」の中身は次のページで

コマースグループが4月に誕生。ヤクオク!がショッピングが変わる?

コマースグループが4月に誕生。ヤクオク!がショッピングが変わる?

 授賞式後、記者と話す場が用意され、その中で、敢えて「eコマース革命の第二章は、お得革命と言っているが、僕としてはその本質はシナジーにあると思っている。SoftBankは当然の事として、ヤフー内におけるシナジーが今後の要になりそうに思うが、その辺を見越して、会社としてどう変わっていくのか」と質問を投げかけた。すると、小澤氏から下記のような話が出たのだった。

「4月には、カンパニー制がもう少し上のレイヤーでグループ制になり、コマースグループができあがります。そこにはヤフオク!Yahoo!ショッピング、決済、PSC(いわゆるYahoo!プレミアム会員対応の部署)が一つのグループ化に置かれます。ということはそこにおけるお客様の誘導を拡充していこうなど、PLの弾力性をつけようという意図があるので、ヤフー内のシナジーというのは、今まで以上に見つけていかなければならないですが、組織から変えていこうという動きがあります。」

「例えば、ヤフオク!にしても、結局、Eコマースには変わらない。今は、かなりブランドが分かれているので、お客様はそこで使い分けをしているんですが、「Yahoo!ショッピング」の中で、「ヤフオク!」の商品を掲載したり、「ヤフオク!」の中で「Yahoo!ショッピング」の商品を掲載してもおかしくないわけです。」

「新品がこのくらいの価格で、であるとすれば、「ヤフオク!」ではいくらなのだろう、と調べようとすると、また、ブラウザで検索し直さなきゃいけないわけです。ところが、今後は、そこがシームレスになるということです。事実、最近、検索結果の中にヤフオク!が入り出していて、それなりに売れています」と。

 ある意味、ここに間違いなくシナジーが生まれるだろうし、それが店の売り方にとって少なからず影響も出てくるだろうが、間違いなく、顧客満足度は高くなる。さらなる勢いをこのような観点からも蓄えていくのだと思われる。

ヤフーは着々とECの足場を固める

 以前、Yahoo!ショッピングの魅力について、問うたとき、小澤氏は、ブログやYouTubeを引き合いに出して、ブログは文章の才能、YouTubeは映像での才能、そして、Yahoo!ショッピングはECの才能を発揮するためのプラットフォームだと説明していた。

 だから、50万店ものストアを集めたのだ。無料化して、多くの人たちに、自分もチャンレンジできる可能性をちゃんと示しているが、ただ、その中で才能を発揮するにも、良き道しるべが必要であって、そのためのフォローもしっかり用意している。自らの施策で、店に未来絵図をきちんと示して、そちらへ促す。商品と商品へのこだわりと売り方で、その店に軸があれば、きっとこの道しるべで、その店は頭角を示すことになるだろう。

 店舗の声にもあったが、この施策に関して半信半疑だったがやってみたら、効果が出て今はその施策を積極的に取り入れているという事実は、Yahoo!ショッピングがそうしたお店に対して、良き道しるべになっているからこそのことだと思う。このYahoo!ショッピングと店の二人三脚は、来年の「Yahoo!ショッピング Best Store Awards」にどのような影響を及ぼすのだろうか、そこが楽しみだ。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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