佐川急便×日立物流 センター共同活用を国交省が認定

佐川急便と日立物流の物流センター共同活用による新たな輸送ルート

SGホールディングスグループの佐川急便株式会社(以下「佐川急便」)と株式会社日立物流(以下「日立物流」)は、両社連携のもと2017年1月より千葉県柏市の柏・沼南エリアで実施している物流センターの共同活用による物流効率化を進めている。その取り組みが、国土交通省が進める「改正物流総合効率化法」の規定により、総合効率化計画として認定された。

物流センター共同活用の経緯と効果

 佐川急便と日立物流では、2016年3月の戦略的資本業務提携締結以降、両社の強みを活かしたさまざまな協業を国内外で展開している。その一環として、2017年1月より千葉県の柏・沼南エリアにおいて、「日立物流沼南物流センター」の一部を、佐川急便の荷捌き拠点としても共同活用している。

 この柏・沼南エリアは従来、佐川急便においては「佐川急便柏営業所」が集配を担当していたが、通販事業の伸長に伴い宅配事業の貨物量が大幅に増加し続けている。そこで、同エリアにある日立物流沼南物流センターの一部を、佐川急便柏営業所に出荷する荷物の一時保管スペースとして共同活用するようになり、その後このスペースに可動式のローラーを新設し、2017年1月から荷さばき拠点としての本格運用が開始された。

 この取り組みにより、同エリアの輸送における従来の経由地であった「佐川急便柏営業所」を経由しない新たな輸送ルートが構築され、トラックの走行距離の短縮や台数の削減(「集配車両14台の作業時間・走行距離の短縮」「大型車両2台/日の台数削減」)と、それに伴うCO2排出量の57%削減など、物流業務のさらなる効率化と省力化が可能になった。

 さらに、日立物流沼南物流センターの出荷待機スペースを有効活用することにもなり、また、集荷時間の延長など、日立物流を含む、柏・沼南エリアでの顧客サービスの向上も可能になる。こういった効果が、今回の認定の背景にある。

国交省「物流総合効率化法」の概要

 今回、この佐川急便と日立物流の取り組みが認定された、「改正物流総合効率化法」とはどのようなものなのだろうか。

 2016年10月に改正された「改正物流総合効率化法」では、消費者の需要の高度化・多様化に伴う貨物の小口化・多頻度化等への対応や、流通業務に必要な労働力の確保など、EC業界にも関係の深い問題の解決が目的とされている。

 この制度では、二者以上の連携により、流通業務の総合化および効率化を図り、環境負荷の低減および省力化に貢献する事業を「流通業務総合効率化業務」として認定し、支援を行う。事業例としては、輸送網の集約、輸配送の共同か、モーシフトなどがあげられている。支援内容は、以下の通りだ。

1. 事業の立ち上げ・実施の促進
・計画策定経費・運行経費の補助 ・事業開始に当たっての、倉庫業、 貨物自動車運送事業等の許可等のみなし

2. 必要な施設・設備等への支援
・輸送連携型倉庫への税制特例
→法人税:割増償却10%(5年間)
→固定資産税:課税標準 1/2(5年間)等
・施設の立地規制に関する配慮
→市街化調整区域の開発許可に係る配慮
・旅客鉄道を活用した貨物輸送への税制特例(貨物用車両・搬送装置)
→固定資産税:課税標準2/3(5年間)等

3. 中小企業者等に対する支援
・信用保険制度の限度額の拡充
・長期無利子貸付制度 等

物流の効率化、省力化はEC業界にとっても急務

 先日、宅配大手であるヤマト運輸の、荷受制限や料金値上げの可能性が報道され、大きな波紋を呼んだ。ヤマト運輸だけでなく、物流・宅配業界全体で、荷物の急増や人手不足は深刻な問題だ。特に荷物の急増という点では、EC業界の成長が大きな原因となっている。また、宅配の2割を占めるという不在再配達も、この問題に拍車をかけている。

 この問題を解決するために、物流・宅配業界の各社では、受取主に事前に受取日時を認識してもらい、都合が悪い場合は事前に日時を変更してもらうなど、不在再配達を防ぐ取り組みや、自宅以外でもコンビニやロッカーを活用した受取拠点の多様化を進めている。

 さらに、今回のような、そもそも宅配を行う物流の段階で効率化を図るという取り組みも、物流・宅配業界の問題解決に貢献できる。改正物流総合効率化法においては、国交省の各種支援も受けられるので、自社の物流を立ち上げたい、物流を見直したいと考えているEC事業者にとっても、直接的に役立つ部分もあるのではないだろうか。

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