アマゾンジャパン、公正取引委員会と決着〜問題の本質は?解決に至るまでの流れ

石郷“145”マナブ

 公正取引委員会は、アマゾンジャパン合同会社に対して、独占禁止法の規定に基づいて、審査を行っていたが、その動きを終了したと発表しました。どういう流れで、終了したのか、アマゾンジャパンはどう動いたのか、それを追ってみました。

 そもそも、事の発端はアマゾンジャパン合同会社がAmazonマーケットプレイスの出品者との間の締結している出品関連の契約にありました。公正取引委員会の記載によれば、まずAmazonマーケットプレイスに出品する商品の販売価格や販売条件について、その出品者が他の販売経路で販売するのと同じ程度まで有利な内容にするか、また、それよりも有利にするようにとうたった項目があったようです。

 また、色やバリエーションについても、他の販売経路で販売するものすべてを、Amazonのマーケットプレイスに出品してほしい旨も記載があったようです。

 一見すると、これらは消費者にとってはより多くの商品をいい条件で購入できる機会が増えることにはなりますが、一方で、公正取引委員会は、これを独占禁止法第19条(不公正な取引方法第12項〔拘束条件付取引〕)の規定に違反する疑いがあるとみたわけです。

(整理)Amazonマーケットプレイスに係る出品関連契約における価格等の同等性条件及び品揃えの同等性条件

(1) Amazonマーケットプレイスに商品を出品しようとする者は,平成28年4月30日以前においてはアマゾン・サービシズ・インターナショナル・インク(米国法人)との間で,同年5月1日以降においてはアマゾンジャパン合同会社との間で,出品関連契約を締結することにより,商品を販売するためにAmazonマーケットプレイスに商品を出品することができる。

 (2) 全ての出品者には,出品関連契約の一つである「Amazonマーケットプレイス参加規約」に定められた条件が適用され,また,ほとんど全ての出品者は,出品関連契約の一つである「Amazonサービスビジネスソリューション契約」に定められた条件にあらかじめ同意する必要があり,これらの条件の中には,価格等の同等性条件が含まれている。

 (3) 一部の出品者は,上記(2)の「Amazonマーケットプレイス参加規約」及び「Amazonサービスビジネスソリューション契約」以外の出品関連契約も締結しており,これらの出品関連契約に定められた条件の中には,品揃えの同等性条件が含まれている。

 (4) 平成28年5月1日,アマゾン・サービシズ・インターナショナル・インクは,平成28年4月30日以前において出品者と締結した出品関連契約をアマゾンジャパン・ロジスティクス株式会社(上記1の表の「設立」欄参照)に譲渡した。これにより,現在では,出品者を一方当事者とする出品関連契約の他方当事者は,全てアマゾンジャパン合同会社となっている。

Amazonが出品者に行った、価格などの同等性条件に関する調査

 実際、公正取引委員会の説明するところによれば、Amazonは、平成27年10月頃以前において、出品者による価格等の同等性条件の実施状況を把握するなどの理由から、一部の出品者がAmazonマーケットプレイスに出品する商品の販売価格又は販売条件に係る調査は行っていたようです。

 この調査の結果、出品者によって価格等の同等性条件が実施されていないことが判明した場合には、当該出品者に対し,出品関連契約に価格等の同等性条件が定められていること等を通知し,又は説明することがあったと言われています。

 また、平成29年1月頃以降、アマゾンジャパン合同会社は、出品者による品揃えの同等性条件の実施状況を把握するなどのため、一部の出品者がAmazonマーケットプレイスに出品する商品の品揃えに係る調査も行っていたようです。同じく、この調査の結果,出品者によって品揃えの同等性条件が実施されていないことが判明した場合には,当該出品者に対し,Amazonマーケットプレイスに出品する商品の品揃えの拡大を求めることがあったと言われています。

これらがどんな影響をもたらすのか

 同委員会によれば、こうしたことの影響として、下記のようなことをあげています。
 [1] 出品者による他の販売経路における商品の価格の引下げや品揃えの拡大を制限するなど,出品者の事業活動を制限する効果
 [2] 当該電子商店街による競争上の努力を要することなく,当該電子商店街に出品される商品の価格を最も安くし,品揃えを最も豊富にするなど,電子商店街の運営事業者間の競争を歪める効果
 [3] 電子商店街の運営事業者による出品者向け手数料の引下げが,出品者による商品の価格の引下げや品揃えの拡大につながらなくなるなど,電子商店街の運営事業者のイノベーション意欲や新規参入を阻害する効果

アマゾンジャパンはこれに対してどう向き合い、公正取引委員会はどんな結論を出したのか?

 こうした一連の流れを受けて、最終的にアマゾンジャパン合同会社が公正取引委員会に申し出た内容は、大きく4つです。

 ひとつは、同委員会による確認を経た上で速やかに、締結済みかつ有効な出品関連契約における価格等の同等性条件を削除し,又はこの契約における上記の条件に係る同社の権利を放棄して行使しないとしました。あわせて、今後、契約において価格等の同等性条件及び品揃えの同等性条件を定めないことを誓約し、これらの旨を出品者に周知するとしました。

 ふたつめは、アマゾンジャパン合同会社が、上記の措置を講じた後に締結する出品関連契約において価格等の同等性条件及び品揃えの同等性条件を定めないことを誓約しました。

 3つ目は、アマゾンジャパン合同会社が、上記の措置を講じた後速やかに,上記の措置を講じた旨について,出品者との交渉、出品者からの問い合わせ対応等を行うべく、同社の従業員等に周知するとしています。

 最後に、アマゾンジャパン合同会社は上記の措置を講じた日から3年間にわたって年1回,上記三つの措置の実施状況について,同委員会に書面により報告するとしています。


 こうした一連の動きを受けて、公正取引委員会は,アマゾンジャパン合同会社によるこれらの措置が、独占禁止法違反の疑いを解消するものと判断し、かつアマゾンジャパン合同会社が申し出た上記の一つ目から三つ目の措置が講じられたことを確認した上で、これらの審査を終了することとしました。

 Amazonと公正取引委員会の件、遂に決着ではありますが、何が正解かはまだわかりません。安くなる分には、消費者にとってもメリットがある話であっても、Amazonが店舗に対して、他よりも高く設定しないでくださいね、というとやっぱり影響力が大きすぎちゃうのかも。難しい問題です。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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