ヤフー、2016年通期及び第4四半期決算発表〜EC強化へ前進/ソフトバンク会員は6月以降もポイント10倍

石郷“145”マナブ

 ヤフー株式会社(以下、ヤフー)は、2016年通期、および第4四半期 決算説明会を実施した。大きくハイライトで話していくと、まず広告関連の事業は堅調に伸びていて、特にスマホの売上高比率が通期で初めて50%を上回っている。eコマースの国内流通総額は昨年の予想では10%ほどと予測していたが、通期で23%成長している。それに伴って、カード事業も順調に推移し、会員数も360万人となっている。

 少し詳細に入っていく。
 2016年度 通期 業績ハイライトとしては、調整後の営業利益 2,050 億円 (前年度比 +24.1%)。調整をしなかった時でいうと、営業利益 1,920 億円(前年度比 -14.6% ) となっている。業績ハイライトの重要なKPIに関しては、広告関連売上高 2,864 億円を達成した。注目すべきは、スマートフォン経由比率50.4%を超えている点になる。eコマースについても、国内流通総額1.85 兆円を超え、スマートフォン経由比率46.3%となっていて、特に第4四半期だけで見ると、50%を超えているという状況だ。来年で見れば、通期で50%を超えていくものになるのではないか。

 通期のハイライトをeコマース関連事業でいうと、ショッピング事業(「Yahoo!ショッピング」、「LOHACO」の取扱高)が好調で、 ショッピング広告売上高が引き続き大幅増加する傾向がみられ、「ヤフオク!」においても「フリマモード」を開始して、若年層の取り込みができつつあり、順調だとした。

2016年度 第4四半期 連結業績についても触れてみる
 2016年度 第4四半期 連結業績に関していうと、 売上高 2,227 億円 (前年同四半期比 +7.6%)調整後営業利益* 528 億円 (前年同四半期比 +76.8%) 、広告関連売上高 786 億円 (前年同四半期比 +9.6%)でスマートフォン経由比率 53.1% 、eコマース国内流通総額 4,864 億円(前年同四半期比 +12.6%)でスマートフォン経由比率 51.4%となっている。

 販売促進活動に関しては、効率化を図っており、前年の同四半期を下回る規模になっている。内訳としては、ショッピングに約5割、ヤフオク!会員サービスに約3割、決済金融事業に約1割、動画サービス等に約1割となっている。こうした背景により徐々にeコマースの力もついている実感はある。

サービス利用動向
 デイリーユニークブラウザ数でスマホ経由が65.1%と伸びている。使う機会が増えたことで、月に一回でもログインしている人の数が3月3898万人となり、前年同月比15%増にもなった。
 eコマース国内流通総額は去年の1.5兆円から、1.8兆円となり、過去最高となった。

事業別に見ていく
 基幹事業のうち、オークション関連は堅調に動いている。今期も流通総額を伸ばしていて、かつ会員向けサービスも月間有料会員ID数も3月で1773万人となり前年同月比6%増となっている。先行投資事業として、ショッピングとなる。ショッピングとしてはないものはないというのが、商品数が今年の3月で2.7億個を達成。

 それに伴い、販促費を抑えているのだが、事業取扱い高も増えていて2016年第4四半期では1376億円となり、前年同四半期比で21.4%増となっていて、広告を出そうという流れも生まれている。実際、54億円に上っており、前年同四半期比で2倍となっている。そして、それがクレジットカードの有効会員数の増に繋がっていて、年々同月比1.6倍となっている。

今後の展望、その他「Yahoo!プレミアム」の全特典をソフトバンク会員は使い放題に

今後の展望、その他「Yahoo!プレミアム」の全特典をソフトバンク会員は使い放題に

 今後の中長期の動きに関して、トピックとしては、Yahoo! JAPANも20周年、新たな目標として、マルチビッグデータの山に登るマルチビッグデータドリブンカンパニーを目指すとしている。なぜこれからはそうなるのかといえば、インターネットの全てのサービスがパーソナライゼーションが進んでいるということになる。最初は、広告の方から枠から人へということで生まれたわけだが、今では広告に限らず、ニュース、eコマースなどにおいても、そういう形になっていく。サービスの良し悪しはここで決まると宮坂氏は説明している。

 パーソナライゼーションのキモとなるのが、データなのだがら、Yahoo! JAPANの最大の強みもまたマルチビッグデータにある。ビッグデータというものを3つの視点で同社で考えていて、多様性、量、鮮度が国内でもナンバーワンなのではないか、としている。データの多様性でいっても、乗り換え案内から、金融までありとあらゆる100近いサービスが生まれていて、Yahoo! JAPANIDの月間アクティブユーザー数が約4000万人がログインして使っていて、鮮度の部分においても、毎日使うコンテンツが多いので高いとしている。今は、まだデータ面で、データを日常においてお客様が使えるものにしていく上で、決済面でもっと充実化が必要としている。そのベースを作るのがeコマースだと捉えており、eコーマースの盛り上がりに伴い、コマースデータの充実と決済データの充実化がはかられ、メディアと合わせた3つのデータの基盤が人々の生活の充実化を後押しするとしている。

eコマースの具体的な施策においては?
 eコマース戦略1.0 「売り手」爆増させることをベースにしていたが、eコマース戦略2.0 「買い手」爆増させるとしている。これまでの「Yahoo!プレミアム」会員向けの施策は成功しており、「Yahoo!プレミアム」会員 による取扱高比率 64%を占めており、特定顧客セグメントに特化した施策の効果に手応えを感じていると話している。

 今年に入ってから、関連企業とのシナジー効果を狙う動きに、攻めの姿勢がみられる。2月よりソフトバンク会員向けキャンペーンを展開しはじめた。会員基盤を活用したショッピング事業への送客を行なった結果、全体の中で、ソフトバンク会員取扱高の割合が拡大し、50%にはまだ大きく満たないものの、毎月伸びている状況だ。

 一方で、ソフトバンク会員に占める「Yahoo!ショッピング」購入者の割合は12%にしかすぎないことを考えれば、さらに伸び代があるとしている。それを受け、ソフトバンク会員は6月以降もポイント10倍とし、更に「Yahoo!プレミアム」の全特典をソフトバンク会員は使い放題にするという発表も合わせて行なった。

 また、同社が掲げたショッピング事業取扱高の成長目標については、前年度比30%増の持続的成長を目指すとした。また、取扱高を最大化し複数の収益モデルへつなげるとしており、ショッピングでは広告売上増加、オークションでは手数料収入増加、会員サービスでは会員収入増加、決済金融では手数料収入増加などにつなげていく。

 マルチデータカンパニーとしての地位を築いていくことを、宮坂社長は強調しており、具体例としては下記のようにして、レコメンドの精度も向上していくことになるだろうとした。

 宮坂社長の話を伺っていて、もはやECも今までは生活の中で、別々に切り分けられた「物売り」だったが、そのレベルを超えて、一人一人への適切なアプローチの一手段として、人々の生活全般の質の向上を図るための重要な要素へと成長していくことになりそうだ。既成の概念にとらわれていては、もはやECはできない時代に入っていくことになるのかもしれない。

ECノウハウ


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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