楽天 IT学校 甲子園 優勝は?〜独占企画 高校生のホンネ聞いてみた

石郷“145”マナブ

楽天 IT学校 甲子園 優勝は?〜独占企画 高校生のホンネ聞いてみた 左上「新潟県立三条商業高等学校」右上「愛知県立南陽高等学校」
左下「富山県立高岡商業高等学校」右下「神奈川県立商工高等学校」

 会場には溢れんばかりの高校生の姿がいて、中には浴衣や法被を着ている生徒もちらほら。ここは、楽天株式会社(以下、楽天)が開催した「楽天 IT学校 甲子園」というイベントだ。

 彼らは自分たちが住んでいる地域にあるネットショップとともに、その店が販売する商品をテーマに、授業の一環として自ら販売ページの内容を企画制作し、販売に関わってきた。それらは決してお遊びではなく、仕事として真剣勝負の内容で、彼らの軌跡はその店の中で販売される形で世に出ている。勿論、売り上げも作っていて、昨年の取り組みだけでその額は28,133,968円。本格的なものである。

 この日のイベントはそうした取り組みの中で、彼ら学生自身が一年間、自らやってきたこと、そして店と商品への想いをプレゼンをし競い合う場であった。様々なプレゼンの後、多くの学生が固唾を飲んで見つめるその眼差しの先には「楽天 IT学校 甲子園」の審査結果があった。合唱コンクールなどのような熱狂と言えば分かるだろうか。そして、自分たちの高校が読み上げられると、キャーと歓声が飛ぶ。

 審査結果は、物販ジャンルの「楽天市場部門」と旅行ジャンルの「楽天トラベル部門」の二つに分かれていて、それぞれ優勝から第6位と審査員特別賞が発表され、特に優勝準優勝にはステージで表彰を受け、プレゼントも用意された。

 まず楽天トラベル部門では準優勝として「神奈川県立商工高等学校」、優勝として「富山県立高岡商業高等学校」が選ばれた。続いて、楽天市場部門では、準優勝が「愛知県立南陽高等学校」、優勝が「新潟県立三条商業高等学校」が選ばれた。彼ら彼女たちの言葉を借りれば、このプレゼンも放課後、自分達で率先して集まって、どうすれば、自分達の言葉が伝わるか、練習に練習を課されねたのだ。涙の意味は分かる。そのプレゼンへの想いと意気込みが並ではなかったことはそのことからもうかがえる。

 授賞式後、学生の声も聞かせてもらうことにした。優勝チームは他のメディアでも取り上げられるだろうから、僕としては敢えて優勝していないチームにも、光を当ててみよう、と楽天に提案してみた。この記事を通して、受賞していない高校の努力にも目を向けてあげてもらえたら、と思う。

神戸市立神港橘高等学校&ベル andソファ-優しい靴工房〜靴にプラスの価値を添える

 最初に話を伺ったのは、神戸市立神港橘高等学校だ。彼女達はECサイト「ベル andソファ〜優しい靴工房」で商品ページを作成した。

 彼女達が向き合ったのはビジネスシューズ。写真中央のしっかり者のグループリーダーが皆の意見を取りまとめ、自らページ修正まで行った。ページでまず自分達の写真を入れたものの、それによって商品写真が下の方にきてしまい、結果、お客様の目に触れないなど、最初のうちは試行錯誤も多かった。

 また、自分達の父親が履いている靴のネガティブなイメージを自分達の販売する商品では払拭できるようにと、そのページを思案したという声もあり、ある意味、彼女達の実体験に即していてリアルでもある。今回はできなかったが自分達が望むローファーの企画と販売をやってみたいと夢ものぞかせた。

東京都立大田桜台高等学校&SILVER BULLET シルバーバレット〜実物の雰囲気を伝えるのに奮闘

 続いては東京都立大田桜台高等学校だ。彼らはECサイト「SILVER BULLET シルバーバレット」で商品ページを作成した。

 左端に陣取る男子生徒が全体の方向性を決めて、ページのデザインは真ん中の女子生徒が行った。写真を多用し、分かりやすさにこだわった。中央右の生徒が着ている洋服がその店の商品であり、ページ上ではその触り心地の良さなどをいかに表現できるかなどにこだわったと言う。

 印象的なのは「今まで自分が買う時は消費者のことをもっと考えて売って欲しいと思っていたのに、いざ自分が売るとなると自分で伝えたくなってしまい、結果消費者よりも自分目線になっていることがあった」という声。買うと売るとでは大きく違うことを僕らもまた改めて気付かされた次第だ。

北海道釧路商業高等学校&北海道くしろキッチン〜アイスの高級感を伝えるのがモー大変

 3番目に出てきてくれたのが北海道釧路商業高等学校だ。彼らはECサイト「北海道くしろキッチン」で商品ページを作成した。

 彼らが向き合った商品は1個500円にも及ぶ高級アイスである。それだけの価値があることをどう表現するかに注力し、写真の見せ方、文字の大きさなどにも配慮しながら、商品原料の良さや濃厚な味わいなど伝える上での工夫を重ねた。

 写真で牛のポーズをしている通り、牛から出るミルクがこのアイスの味をより深いものとしている訳で、印象的な体験として実際に牧場に足を運んだことを挙げていた。質の高いものが生まれる環境とその素晴らしさを自らの体験を持って実感する機会に恵まれたようだ。ただ、やっぱり受賞できなかったことについては悔しさを滲ませた。

新潟県立三条商業高等学校&オリジナル家電のシバデンライフ〜嬉しかったお客様のメッセージ

 ラストは、楽天市場部門の優勝校「新潟県立三条商業高等学校」である。ECサイト「オリジナル家電のシバデンライフ」で掃除機の商品ページを作成した。

 彼らが言うには、ターゲットは主婦に設定し、実際に自らのチームメイトの一人を夫役に仕立て、そこで想像力を働かせて、ページ制作につなげ、実用面を強くアピールした。微笑ましいのはリーダーの男子生徒が「僕は何もしていなくて」と控えめなのだが、逆にだからこそ、女子生徒達が彼を支えようと、一体感が生まれていた。

 驚いたことに、彼らが制作した商品ページを見て、年配のお客様からメッセージもいただいたとか。自分達のやっていることが、リアルなお客様の心にきちんと届いていることを身を以て実感した様子だ。

  印象的だったのは先生の「必然だった」という一言。今回のこのイベントを開催するにあたってはまず校内で複数のチームから選抜される。そこで選ばれたチームが、この全国の学校が集まるこの日のイベントでしのぎを削る。この優勝チームは校内で選抜されてからも気を抜くことなくこの日を迎えていたと先生が話しており、勝負強さのベースはあった。この優勝はまさに必然であったのだ。

高校生のEC活用ってどうしているの?直接聞いてみた

 各校の生徒に直接、話を聞いて新鮮な部分もあった。とある生徒何人かに話を聞いた際に「普段ECを使っているか?使っているならどこのサイトか」と問うと「ZOZO」「メルカリ」「Amazon」と言う具合に「楽天市場」が入っていないという絶妙な返答ではありながら、彼らにとって思いの外、ECを活用し、商品を手に入れていることがわかった。つまり、身近な存在なのである。

 しかし、クレジットカードを持っていない彼らが、ではどうやってネットで商品を買っているのか、気になった。そこで圧倒的に多かったのはコンビニ払い。勿論、それも親のお金ではなくきちんと自分のお小遣いで支払っていることもわかった。彼らのような世代もECを使う以上、店の立場に置き換えてみれば、決済の多様化が急務であると思った。

 また、話は変わるが、多くの生徒が「ネットだから簡単に商品が売れると思っていたけど、実は結構色々考えなければならないことがあって、地道な努力の積み重ねの上で成り立っていることを実感した」と口を揃えていた。しかし、それを考えることは苦労はありながらも、面白かったとも話してくれた。少なからず「仕事」「働く事」の醍醐味を感じることにはなったのではないか。

 僕は、もっと彼らのような学生に「仕事の厳しさ、面白さ」を伝え、早い時期から働くことへの興味や関心を抱く機会を作る事は必要であると思う。働くことはその学生のその後の人生の大半を占め、若い頃からそのイメージができていることは彼らの将来に決してマイナスなことはない。

 楽天 IT学校 甲子園は、若き世代が来たる未来を夢見るような世の中にして行くために必要な取り組みであって、楽天に限らず、このようなリアルな仕事の現場に触れるイベントの機会は増えるべきだということを痛感した次第だ。楽天 IT学校 甲子園においては、このまま走り、ECの未来に、ニッポンの未来に、明るい未来を灯してくれるPioneerになってもらいたいものだ。

【入賞】
・楽天市場部門
 神戸市立神港橘高等学校 × ベル and ソファ(兵庫県)
 下関市立下関商業高等学校 × やまぐち旬彩 海峡本舗(山口県)
 東京都立大田桜台高等学校 × SILVER BULLET シルバーバレット(東京都)
 神奈川県立小田原東高等学校 × Hamee 楽天市場店(神奈川県)

・楽天トラベル部門
 愛媛県立今治北高等学校 × 道後温泉 ふなや(愛媛県)
 京都府立京都すばる高等学校 × 京都 嵐山温泉 渡月亭(京都府)
 甲府市立甲府商業高等学校 × 河口湖温泉 湖楽おんやど富士吟景(山梨県)
 沖縄県立八重山商工高等学校 × グランヴィリオ リゾート石垣島 グランヴィリオガーデン(沖縄県)

【売上No.1賞】
・楽天市場部門
 青森県立弘前実業高等学校 × コンプモト 楽天市場店(青森県)
・楽天トラベル部門
 熊本県立熊本商業高等学校 × 阿蘇ファームランド(阿蘇ファームヴィレッジ)(熊本県)

ECノウハウ


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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