越境ECを成功させるのは誰なのか。シェアサービスが日本の越境ECを成功へ導く

利根川 舞

株式会社エスプールロジスティクス 副社長 執行役員 小林正憲氏 株式会社エスプールロジスティクス 副社長 執行役員 小林正憲氏

「いざ越境ECに取り組んだが、ちっとも売れない。」
「越境ECに興味はあるけれど、何から取り組んでいいのか分からない。」

「越境EC」という言葉が広がって早数年。越境ECに対する注目度は高いものの、なかなか軌道に乗らない、という声は少なくない。そう感じているは、決してEC事業者だけではなかった。

日本では現在もEC市場規模は成長しているものの、少子高齢化によって将来的には市場規模は縮小するとの見解がなされており、多くの企業が国外の市場に参入しようとしているのが現状だ。

ところが、越境ECを始めるためには、言語や法律、物流などの課題だけでなく、各国の市場調査やプロモーションが必要になり、莫大な資金が必要になる。もちろん、コストを抑えて越境ECに取り組むことも可能だが、国内の事業も見なければならず、なかなか越境ECに本腰を入れられないこともあるだろう。そうなると、誰が越境ECにチャレンジできるというのだろうか。

越境ECに関するすべてが集約される『CLOSER』誕生

越境ECに関するすべてが集約される『CLOSER』誕生

株式会社エスプールロジスティクスでは今年の4月から越境ECの支援をスタート。越境ECに興味を持つEC事業者は集まるものの、なかなか軌道に乗る店舗が出なかった。同社の副社長 執行役員 小林正憲氏は次のように語る。

「過去の話ですが、「エスプールロジスティクスは越境ECに対応できていないから契約を切る」と言われた経験がありました。その経験を元に、越境EC支援サービスを開始しました。しかし、温度感の高いお客様は越境ECに取り組んでくれるものの、反対に興味はありながらも『国内の物流をお願いしている物流パートナーが越境EC支援をスタートさせるまで、待つ。』とおっしゃるEC事業者様もいました。それらを踏まえて行き着いたのは、お客様が信頼できる物流パートナーであれば、弊社に物流を切り替えなくても良いのではないか、という考えです。」

そこで誕生したのが『CLOSER』という新サービスだ。

『CLOSER』は年会費6万円という低価格で、越境ECにおいて起こりうる様々な課題を解決するために作られた会員サービス。このサービスのいいところは、越境EC初級者から上級者までを網羅しているところだ。スタートアップコンサルから貿易の実務、訴訟リスクにも相談に乗ってくれる等、越境ECをする上で、立ちはだかる煩わしい問題課題を突破するための要件を揃えている。

「荷主様にとって、越境ECだけ弊社で担当するというと在庫が分散し、横持ちコストがかかる等勿体無い部分がありますよね。であれば、今お願いしている物流パートナーに『CLOSER』に加盟していただき、越境ECに対応できるようになってもらった方がいい。物流パートナーとしても、0から越境EC支援を始めるのは大変ですが、『CLOSER』に加盟すれば、揃えなければならない細かい要件を自社で用意することなく、すぐに越境EC支援を事業としてスタートすることができます。そうすることで、現在は首都圏に越境EC対応の物流倉庫が偏りがちですが、地方の物流倉庫であっても越境EC支援事業を立ち上げられ、私たちが支援をすることができます。」

個別サービスにはなるが、米国で食品を販売するために必要なFDA(アメリカ食品医薬品局)に関する業務や欧州AmazonのFBAを利用するEC事業者にはVAT番号の取得、納付、還付代行などのサービスも提供している。法律的な部分以外にも、検索ワードの設定やInstagramでのプロモーションなど、提供されるサービスは多岐に渡る。

「今回、国内で初めて越境におけるB to C直送に特化した海上保険も作りました。今はオプションのサービスも多いのですが、徐々に年会費6万円の中に収まるようにしていきたいと思っています。」(小林氏)

業界全体で成功に導く、越境ECの黒船『CLOSER』

多くの企業が越境ECにチャレンジし、残念ながら撤退をしたEC事業者も少なくない。この状況を日本全国の力で変えていこうというのが『CLOSER』なのだ。

小林氏は語る。「EC事業者様には『CLOSER』を使ってどんどん積極的に海外進出をして欲しいと思っています。越境ECを盛んにすることで輸出も増えますから、日本国内の社会貢献にもつながると思っています。『CLOSER』は私たちが物流事業に固執していたら、誕生しなかったシェアリングサービスです。ロジスティクスのミッションは生産から供給までの流れをスムーズにして生産性を上げていくことだと思っています。」

これから始めようという越境EC初心者から、自社サイトを持って越境ECに取り組む上級者まで、幅広い層を支援しながら、その支援する層も加盟店という形で増やしていく。

日本のEC業界にすでに浸透してしまっている越境ECに対するイメージを払拭し、EC業界全体で成功に導く、希望の船となり得るのか。帆を上げ進み始めた『CLOSER』に注目だ。


記者プロフィール

利根川 舞

ECのミカタ 副編集長

ロックが好きで週末はライブハウスやフェス会場に出現します。
一番好きなバンドはACIDMAN、一番好きなフェスは京都大作戦。

ECを活用した地方創生に注目しています!
EC業界を発展させることをミッションに、様々な情報を発信していきます。

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