ZOZO決算発表 ファッションECは8000億円まで伸ばす 施策として進める5つの指針とは

桑原 恵美子

株式会社ZOZO(代表取締役社長兼CEO:澤田宏太郎、以下:ZOZO)は2024年4月30日に2024年3月期 通期決算発表(2023年4月1日~2024年3月31日)を行った。

商品取扱高、営業利益ともに過去最高実績を更新

取締役副社長兼CFO 執行役員の栁澤孝旨氏(以下、栁澤氏)によれば、2024年3月期における商品取扱高は5743億円(前年同期比5.5%増)、その他商品取扱額を除いた商品取扱高は5369億円(前年同期比7.1%増)。また、営業利益は600億円(前年同期比6.5%増)。

商品取扱高は達成率98.9%となったが、ZOZOとして重要視している「その他商品取扱高を除く商品取扱高」は100.3%、営業利益は100.1%とともに達成。営業利益率は11.2%と前期比で0.1ポイント下落したものの、商品取扱高、営業利益ともに過去最高実績を更新した。

厳しい気候条件が続いた影響でZOZOTOWN事業は計画未達となったものも、Yahoo!ショッピングは積極的なプロモーションが効果を発揮し、計画を大きく上回った。その結果、収益に直結するその他商品取扱高を除いた商品取扱高は計画を達成することができた。営業利益も一部費用の計画超過はあったものの、出荷単価の上昇に伴う配送費用のコスト低減並びにコストコントロールが奏功し、計画達成。

※今季より、Yahoo!ショッピングからLINEヤフーコマースへと事業名称の変更。2024年3月よりヤフーオークションにZOZOUSEDが出店を開始している影響で、LINEヤフーコマースはヤフーショッピングとヤフーオークションとの合算値となっている。

ZOZOTOWN事業とLINEヤフーコマースの取り扱い高拡大による粗利増加

営業利益押し上げ要因は3つ。1つ目がZOZOTOWN事業とLINEヤフーコマースの取り扱い高拡大による粗利増加で100.9億円のプラス。2つ目が、広告事業の成長による売上増加で19.6億円のプラス。3つ目が取り扱い高拡大等による送料収入等の増加、周辺サービス等の売上増で14.3億円のプラスとなった。

一方、営業利益の押し下げ要因は主に4つで、1つ目が社員数増加、物流拠点増加等による固定費の増加による25.1億円のマイナス。2つ目は取り扱い拡大に比例して増加する変動費の増加で35.1億円のマイナスにつながった。3つ目がポイント費用を中心とした実質PR費用の増加で14.3億円のマイナス。4つ目は新物流拠点稼働開始に伴う備品の購入やクラウドサーバー費用の増加、一部の業務委託費の科目振替による影響等で23.8億円のマイナスとなった。

アクティブ会員の増加数は想定を下回る結果

年間購入者数は、前四半期比から0.9万人のマイナスとなった。

内訳として、アクティブ会員数は前四半期比から5万人増えて1078万人だったが、ゲスト購入者数は前四半期比マイナス6万人の89万人。これは「冬のセール期間中に暖冬影響を受けたことや、春物の立ち上がりがシーズン以降は気温が低い日が続き、初動が芳しくなかったことで、新規会員の獲得が低調な推移となってしまったことが理由。アクティブ会員数の増加をゲスト購入者数の減少幅が上回ってしまった結果、年間購入者数は前四半期比で微減という結果となった」(栁澤氏)

ZOZOTOWN出店ショップ数は微減、平均商品単価は微増

ZOZOTOWN出店ショップ数は微減、平均商品単価は微増

ZOZOTOWN出店ショップ数の推移では、第4クォーター末時点のショップ数から10ショップ減。第4クォーターの出店数は17ショップで、新規出店数の誘致は計画通りに進んではいたものの、ブランドの統廃合やブランドの消滅等により退店が多かったため。

平均商品単価(ZOZOTOWNの商品取扱高を同期間の出荷枚数で除すことにより算出)は4003円で前年同期から0.4%プラスとなった。この秋冬もブランド各社による定価引き上げは続いたが、前年実績と同等水準となっている。これは冬の本セール期間中に入って以降も暖冬の影響を受けて、アウター類等の高単価商品の売り上げが伸びきらなかったこと、およびセール比率が上昇したことなどが主な要因である。

ファッションECは8000億円まで伸ばせる

ファッションECは8000億円まで伸ばせる

ZOZO代表取締役社長兼CEOの澤田宏太郎氏(以下:澤田氏)からは、事業の概況説明があった。

「その他商品取扱額を除いた商品取扱高は5300億円まで到達してきているが、ファッションECに関してはアクティブ会員の数を増やし、その1人当たりの購買頻度数を伸ばすことで、8000億円までは伸ばせるはず。この数値を目標にしながら施策を進めている」(澤田氏)

施策として進めているのは以下の5つの指針だ。

① より幅広い層の取り込み
② 一人当たり購買頻度向上
③ 生産支援
④ コスメ拡大とその次
⑤ テクノロジーの収益化

10代への認知拡大とともに、ママ層へのアプローチも

より幅広い層の取り込み」に関しては、10代に向けてK-POPアーティストのイベントに協賛するなどの様々なプロモーションをやった結果として、若年層のZOZOに対する認知度上がってきたというデータが出ている。そしてもうひとつ重要なターゲットとして去年から取り組んでいるのが、ファミリー層(ママ層)へのアプローチだ。

「このセグメントの方が家族のファッション消費を握っているので、重要なターゲットと捉え、安達祐実さんをキービジュアルに動画の作成等を行い、積極的にプロモーションしている」(澤田氏)

②の「一人あたりの購買数向上」に関しては、ZOZOのAIとプロのスタイリストが「似合う」を見つける無料の施設「似合うラボ」や「似合う」がわかるコンテンツを配信する「niaulab TV by ZOZO」など、「似合う」を軸としたソリューションで、購買の上流を囲い込む戦略を取る。

また、リアル店舗のショップスタッフがコーディネート画像や動画を投稿できるFAANSというアプリの情報が、キュレーションメディア「WEAR」に集まることによって、よりアプリとしての品質が上がり、最終的には「似合う」情報を手軽に提供できる形に進化。さらにZOZOTOWN上でリアル店舗の在庫も表示できるショップ数も増えているため、ZOZOTOWNからのリアル店舗の集客も併せて行っており、上流の生態系を成立させるインフラが整いつつあるという。

その他、⑤の「テクノロジーの収益化」では、アメリカで展開しているZOZOスーツ事業で、ZOZOスーツを着用しなくても計測できる技術が開発され、ダウンロード数も増えていることから、サブスクなどビジネスモデルの転換をはかっているという。

最後に質疑応答の場面で、若年層の想起率が上昇について、SHEIN等の競合サイトと比較した際のZOZOの優位性についての質問に対し、「若年層をターゲットに競合サイトが成長してきたような背景があったので、ZOZOも従来18歳以上であったターゲット年齢を、15歳以上まで引き下げようと様々なプロモーションを行った結果、若年層の認知拡大や新規顧客の獲得が進んだ」と澤田氏は回答。扱う商材などの違いもあり、単純な比較はできないものの、「ZOZO単体で見ればポジティブな結果となっているため、引き続きフォーカスを続けていく方針」とした。


記者プロフィール

桑原 恵美子

フリーライター。秋田県生まれ。編集プロダクションで通販化粧品会社のPR誌編集に10年間携わった後、フリーに。「日経トレンディネット」で2009年から2019年の間に約700本の記事を執筆。「日経クロストレンド」「DIME」他多数執筆。

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