売れる同梱物の法則〜化粧品・健食EC売上TOP5社比較

ECのミカタ編集部

EC店舗における同梱物の効果

 EC通販事業者において、注文商品と同梱するチラシやカタログ、サンプルなどの同梱物は、販促のために重要な存在だ。なぜなら、注文商品は必ず開封されるものであり、同梱物は必ず一度は顧客の目に触れる機会を得る。同じく販促に活用されるメルマガやDMの開封率を考えると、必ず開封される、開封率100%ということがどれだけ重要なことか分かるだろう。

 また、顧客が注文商品を開封する時というのは、トラブルがあった時などイレギュラーな例は除き、販売側と顧客とがやり取りする中で顧客が最もポジティブな状態にある。つまり、リピート購入、さらにはファン化へとつなげる好機であるのだ。そこで、商品だけでなくその梱包状態で顧客の満足度を上げ、同梱物で顧客の商品以外への興味関心を惹くことが重要になってくる。

 では、実際にどのような同梱物が効果的なのか。今回、『EC業界大図鑑2016』P32~39に掲載されている、インターネット通販売上ランキング2016(インプレス調べ)から、特に同梱物に力を入れているECサイトが多いと考える化粧品・健康食品ジャンルの上位5社を対象とし、調査を行った。

 調査の方法としては、5社それぞれの自社サイトから新規のアカウントで注文を行った。注文商品は、それぞれのサイトの送料規定に則り無料となるように、注文日(2016年12月7日)時点で、化粧品・健康食品のランキング上位に表示されている商品から行った。

EC店舗の同梱物に見られるパターン

EC店舗の同梱物に見られるパターン上段左より、DHC、DHCカタログ、オルビス、
下段左より、ケンコーコム、爽快ドラッグ、ファンケル、
の商品+同梱物の画像
※DHCカタログは商品とは別に請求。
※爽快ドラッグは同梱物がないため注文品開封画像。

 今回、化粧品・健康食品における売上上位5サイトで注文をした結果、同梱物にはおおよそ下記のようなパターンがあることが見えてきた。なお、納品書・商品明細・領収書は省略している。

挨拶文:顧客に御礼や想いなどを伝える。手紙風、手書き風が効果的。
注文ガイド/サービス案内:注文、返品などのサービスに関して案内する。
チラシ:商品やサービス紹介。クーポンやキャンペーン、定期購入への誘導も。
冊子:商品のコンセプトや開発背景など詳しく紹介。知識的コンテンツも。
カタログ:商品カタログ。雑誌風になっている場合も。
お客様の声:お客様の声を集めてまとめて掲載する。
お声ハガキ:お客様の声を募る。
注文用紙:FAXや郵送での注文受付。
サンプル:商品を少量試すことができる。
プレゼント:商品以外のおまけ的なもの。

 これらの同梱物は全て必要なわけではなく、そのサイトの戦略や商品、顧客層に合わせて組み合わせて活用される。また、サイトによっては同梱物を選べる場合もある。

 一つ共通しているのが、ただ商品を紹介するだけでは、顧客の興味関心を惹くことはなかなかできない。そのために、チラシであればクーポンやキャンペーン、定期購入でお得な案内をするし、商品について詳しく知ってほしい場合は、冊子などで読み物感を出すと、一度は目を通してもらえる可能性が上がる。また、化粧品や健康食品は使用感や効果が重視されるため、お客様の声といった口コミ・レビューを参考にする人が多く、高額な商品や特に推している商品はサンプルを同梱することも有効だ。

 さらに、商品の紹介だけでなく、そのサイトやブランド自体に好感を抱いてもらうことが、価格だけの勝負にならず、ファンを作るためには重要だ。そこで、手紙風、手書き風の挨拶文や、サイトの世界観を伝えやすいカタログ、好感度を上げるプレゼントなどが活用される。また、特に化粧品・健康食品はウェブ上で伝えきれない部分も多いので、それらを同梱物で補足するという役割もある。

 では、今回調査を行った5サイトで、実際にそれぞれどのような戦略がとられているのかを見ていく。

EC売上上位5サイトの同梱物戦略

EC売上上位5サイトの同梱物戦略「化粧品・健康食品」売上ランキング2016上位5サイト同梱物(2016年12月7日調べ)
詳細はこちらをご覧ください→ https://www.ecnomikata.com/knowhow/detail.php?id=13092

 上表を見ると、化粧品・健康食品という同じカテゴリであっても、5サイトそれぞれに特徴が表れているのが分かる。

 まず、全体を見ての特徴として、DHC、オルビス、ファンケルといった、商品ブランドを前面に押し出しているサイトというのは、同梱物も豊富で凝ったものが多い。逆に、爽快ドラッグやケンコーコムのようなサイトでは、特定の自社ブランドではなく様々なブランドの商品を、いかに豊富にリーズナブルに購入できるかという点を重視しているようで、同梱物は少ない。

 この中で、自社ECを運営する事業者の多くが倣うべきなのは、やはりDHC、オルビス、ファンンケルのようなブランド重視の同梱物戦略だろう。

DHCの同梱物の特徴

 DHCの特徴としては、商品カテゴリ、目的別のカタログが豊富なところをあげたい。同梱カタログは2種類だが、別途請求する形で合計4種類のカタログもある(送料無料)。お客様の声は、この別途請求のカタログの方に同梱されていた。また、注文代金に応じてサンプルを何種類かの中から複数選ぶことができるので、注文する際の満足度も上がり、カゴ落ちを防ぐなどの効果もあるのではないだろうか。さらに、プロモーション系の冊子もしっかりとした作りになっている。これらの同梱物は、特に化粧品・健康食品ということで、ウェブ上だけでは説明しきれない部分に訴求し、顧客に商品に対する納得感や安心感を与える効果があるだろう。

オルビスの同梱物の特徴

 オルビスの特徴としては、同梱物が多すぎず少なすぎず、必要な点をシンプルに押さえている点をあげたい。また、同梱物ではないが商品が届く際の満足度を上げる点として、北海道・沖縄を含め送料無料で配送を行っている点がある(注文金額5,400円(税込)未満で商品が小型の場合はメール便での配送)。どんなに商品や同梱物が良くても、配送が遅かったりトラブルがあったりすると、その効果が下がってしまう。配送を早く的確に行うということも、同梱物の価値を高めることになるだろう。

ファンケルの同梱物の特徴

 ファンケルの特徴としては、チラシではお得感、冊子では商品の世界観を伝えるという風に、おすすめ商品のプロモーションを重視している点をあげたい。また、サンプルだけでなく、プレゼント品が豪華だ。今回注文した際には(2016年12月7日)、ポーチと手帳が同梱されていた。商品が届いて開封した際に、一番豪華な印象を受けたのがファンケルの同梱物だった。この、開封した際の印象というのは、いわゆる初対面の人の第一印象のようなもので、同梱物の役割として非常に大きい。ここでポジティブな感情を顧客が抱くことで、同じ商品であっても満足度が上がり、次の注文へと繋がりやすくなるだろう。

同梱物はまず何から始めるべきか

 今回の調査を踏まえ、自社ECを運営する事業者が同梱物の施策を考える際に、まず何から始めるべきだろうか。サイトの戦略や商品、顧客層に合わせて組み合わせるべきと前述したが、その中でも始めやすいところや、押さえておくべき点はある。

 まず、挨拶文や注文ガイド/サービス案内は、ウェブ上やメールなどで行っている場合は多いが、商品と同梱しておくと良いだろう。いくらウェブ上で商品を目にしていても、実物を手に取るのは届いた時が初めてだ。特に初回注文の際の挨拶文は、そのサイトに親近感を持たせる大きな役割を果たす。また、返品や交換など注文やサービスの手続きに関わる部分は、いちいちウェブを見に行くよりも、届いたそのままに手続きできる方が煩わしさが減る。万が一トラブルがあった際も、顧客にネガティブな感情を必要以上に抱かせることを防ぐことにもなる。

 また、チラシはすでに作成しているという場合も多いかもしれないが、同梱物として使用する場合、何らかのお得な情報や定期購入に誘導できているかを見直してみてほしい。ウェブ上と同じ説明では、あまり効果が期待できない。逆にウェブ上では説明しきれない部分に訴求したいという場合は、冊子のような読み物感を出すことで、読み込んでもらいやすくなる。

 さらに、顧客のポジティブな感情を引き出すという点では、サンプルやプレゼント品の効果が大きい。安売りや割引はあまりできないという場合も、こういった点で差別化につなげることもできるだろう。

 以上、今回の調査のまとめとなる。上記を参考にしていただくとともに、もし自社にとって気になるECサイトがあれば、実際に注文してみるというのも手だ。同梱物の効果というのは、やはり実際に商品が届いて自分で開封してみた時に一番実感することができる。その際に、顧客にいかに注文して良かったと思ってもらえるか、もっと言えば期待以上の満足感を抱いてもらえるか、それが同梱物の役割として非常に大きい。ECサイトの施策は何もウェブ上だけでなく、何より商品と共にある。そういった意味で、今回の調査を役立ててもらいたい。


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