高速道路SA・PAにおける利便性向上で物流効率化・労働環境改善へ 中長期的整備を公表

新井勇貴

高速道路各社/SA・PAに中継拠点、ニーズ踏まえ中長期的に整備

日本高速道路保有・債務返済機構と高速道路各社(NEXCO東日本、NEXCO中日本、NEXCO西日本、本州四国連絡高速道路)は2023年12月26日、「高速道路SA・PAにおける利便性向上に関する検討会」によって策定した「高速道路SA・PAにおける利便性向上に関する整備方針(以下:本方針)」を公表した。本記事では一部概要を抜粋して紹介する。

短期と長期に分けた対策があげられる

本方針では、物流効率化と労働環境改善に向けた高速道路SA・PAの整備方針として「SA・PAにおける確実な休憩・休息機会の確保」と「新たな需要への対応」の2点で検討された。

前者ではこれまでの取組内容を踏まえ、短期と長期に分けた対策と代替案も含めた様々な方針が検討されている。一方、後者ではこれまでの取組内容を踏まえ、対策メニューとして複数案が出された。

以降でそれぞれの一部概要を確認する。

SA・PAにおける確実な休憩・休息機会の確保について

◆駐車マスの拡充
短期的な対策として、レイアウト変更や園地部の活用を検討。中長期的な対策として、SA・PA隣接地の拡張や新設、駐車場の立体構造化を検討する。

◆確実な駐車機会の提供
短期的な対策として、短時間限定駐車マスを試行導入し拡大させる。中長期的な対策として、一定時間以上の利用に対する有料化を検討。

◆休憩施設空白区間の解消
短期的な対策として、ミニPAやIC内側の駐車場を活用。中長期的な対策として、本線や路外SA・PAの新設を検討する。

◆物流効率化・労働環境改善
短期的な対策として、ダブル連結トラックやキャリアカーへの予約駐車マス追加、シャワー施設、24時間営業店舗を設置。中長期的な対策として、中継拠点のあり方を、物流事業者のニーズを踏まえて検討する。

その他、画像処理技術や赤外線レーザー等を活用した混雑状況の把握や情報提供も対策として進められる予定だ。

新たな需要への対応について

こちらでは主にEV充電器等をはじめとした「カーボンニュートラル」に関する取り組みが検討された。

これまではSA・PAにおける急速充電器の整備や、高速道路上に水素ステーションを設置するなど、複数の取り組みを推進してきた。

今後の対策としては「充電器の増加と高出力・複数口化」や「高速道路外のEV充電器量のための料金調整」「機能高度化施設と一体となって整備される駐車場の整備費用の一部支援」などがあげられている。

今後温室効果ガス排出量削減に向け、本取り組みの効果が期待されるだろう。

様々な変革を求められる物流業界

本方針では、物流効率化と労働環境改善に向けた高速道路SA・PAの整備方針が検討された。

短期的な取り組みとしては現場で働くトラックドライバーのニーズを踏まえ、引き続きシャワー施設を始めとしたリフレッシュ施設や24時間営業店舗の拡充が進められる見込みだ。そして、中長期的には物流業界全体のニーズを踏まえた拠点の立地、運営事業者のあり方などについて検討するとしている。

カーボンニュートラルへ向けた取り組みも推進しており、持続可能な物流の実現へ向け一歩近づくことが期待される。物流業界は現在、「2024年問題」を筆頭に様々な変革を求められている。社会インフラとして欠かせない物流機能維持のためにも今後の取組、本方針の実現に注目が集まるだろう。