勘違いしてない?外注選びの秘訣 逸見氏と川添氏対談(後編)

石郷“145”マナブ(編集長)

メガネスーパーの川添隆さん(左)カメラのキタムラの逸見 光次郎さん(右)

 ネット通販をやるにしても、どんな心構えでいればいいのか。今こそ、基本に立ち返る。ということで、講演などでもお馴染みのEC業界での人気者、カメラのキタムラの逸見 光次郎さんとメガネスーパーの川添隆さんを編集部に招いた。そして「ネット通販(=EC)で仕事する上で一番大事なこと」をテーマに対談を試みた。今回は、その続きだ。
(前回のラストは…)実店とECと小売両方をやっていると、その本質が見えずにECを特殊な事だと思われている。でも・・!そんな話から入る。
■ちなみに、反響の大きかった前回はこちら http://bit.ly/1s9CqmD

細部に右往左往するのではなく、本質を掴む

川添 そうだと思います。特殊なことって言えば、ECって「なんか楽している」と思われる傾向があります。楽して売れていて、また注文が入ってて、接客もしないで、ものが売れているみたいな感じ。でもそれを売るには、膨大な商品マスタを作成し、日々メンテナンスをしたりして、マーケティングの施策を打ったり、結果を見たりだとかじゃないですか。

逸見 ECこそ、意外とアナログな作業の積み重ねなんですよね。自分も店に立っていたから話しちゃいますけど、店って作業が多いんですよね。でも、作業って言っているものの、大半は接客だったり、レジでの待ち時間だったり、それで何かをやっているとかで、8割くらいはそうなんですよね。それで、残り2割で考えたり、何かしたりする。でも、実際、その8割のが長いわけです。考えてみてください。ECって1日8時間働いたとすると、待ちってあまりないんです。商品マスタを登録する、更新かける、画面メンテナンスをする、販促を何か打つ、その前月分の結果をまとめる、そのレポートを作成して報告書としてまとめる、と、みっちり8時間そういうことに費やすわけです。つまり、全く違う仕事をしているのは事実なんですが、やっていることは「お客様に商品を売っている」。そこは全く同じなんです。ただそれだけ。

石郷 シンプルに、考えていくことって大事ですね。まさに本質をつかむ。

逸見 そうなんです。やっぱり、ECをやるなら、商売をわかっている人の方がいいですよね。仕組みとかシステムを作る人を呼び込むことでもなく、全部が全部そうじゃないですけど、よく言われる、横文字の「マーケター」と言われるような人を呼び込むことは、必ずしも正しいとは言えないのは、そんな理由からです。

店舗が支援企業を選ぶ基準は?

石郷 思うんですが、店舗運営していて、外注でサポートしてくれる企業(以下、支援企業)たちがいるじゃないですか。店舗さんって、結局情報があまりにない中で、どこのシステムを使えばいいのか、の判断基準ってどう考えたらいいもんなんですかね?結局、人づてで、あの人知っているから、あそこのシステムを使おう、みたいなところあるじゃないですか。そうじゃなくて、どういう目線で選んだらいいのか、を考えたいんですよね。

川添 僕で言えば、もともとは、全然知らなかったんです。広告しかり、代理店選定しかり、ベンダー、ツールしかり、聞くより仕方ない。人脈もゼロから始めたとすると、でも、接してみると、この人の情報は確かだなと感じることはあります。どういう時か。例えばですけど、「自分達の商品は最高ですから、是非、使ってください」という単純な売り込みの人がいたとします。その一方で、「御社はどういう基準でECやられているんですか、何を目指しているんですか」というのを聞いてくる人がいたとしたら、絶対後者の方が信頼できるわけですよ。自然と「他社はどうやっているんですか」とこちら側から聞くことになるし、教えてくれて自分にとっても勉強になるから、そういう人こそ信頼できるというのはありましたね。これは、店舗をサポート支援している企業に限らず、同業の方とかでも、そういう人を僕は作っていきたいと思っています。

逸見 確かにそうですね。あと、ちゃんと話を聞いて、提案を返してくれることに加えて、大事なのが、それが継続した提案になっているか、ということかなとは思います。フェーズ1、2、3くらいに分けましょうと。「最初はまずここまで出来たら、いいじゃないですか。そうすると、コストもこのくらいですよ。初期このくらいで、ランニング30万円くらいですかね」。それで「フェーズ2になってきたら、回転数がこのくらいになって、だとしたら、このくらいの回収コストと、ランニングも月50万くらいになりますね」。最後は「たとえばですけど、2年くらいお付き合いいただく感じで、3番目のステップまで、ここは妄想かもしれないけど、こんなの作ってみましょう。そうすると、今までの3倍くらいのトランザクションになっていて出荷件数になっていると思います」という風に。

支援企業は店舗とどう向き合えばいいのか?

石郷 まさに、そこなんですけど、その意味では、支援企業がしっかりしていないと、店舗にいくら営業しても店舗が響かなかったら意味ない。そしたら、支援企業が、店舗に対して、そもそもまずどういう心構えでいたらいいのかなって、たまに思うんですよね。

逸見 そうですね。そういう意味で言えば、うちなんかは実店舗を持ってますから、支援企業の方から一回店に入らせてくださいって言うくらいの気持ちでいて、欲しいですね。店に来たら、何をどう売っているのか、どういう説明をしているのか、どんなお客様が来ているのか、わかるわけじゃないですか。それがそのまま、ネットに応用できるかわからないですけど、その上で「ああいうお客様を取りたいんですか?」「ああいう商品が売りたいんですか?」と。そこで、私達も「そうです」って話なのか、あるいは「もうちょっと高めの年齢層のお客様を取りたい」とか「もうちょっと安いものが取りたい」とか、基準が揃ってくるじゃないですか。

石郷 さっきの話と共通していますよね。店舗が、実店舗で働く人も、ECをやっている人と同じ感覚でいれば両方良くなるんだってことと。すごく当たり前ですが、その店舗ごとの視点で考えてくれる支援企業が結果的には自分にとってはベストパートナーであるということですね。

川添 ただ、僕は支援企業側の立場も考えちゃうんですよね。いい仕事ができるってことは、支援企業だけが良いっていうのはダメなんですよ。やっぱり店の担当者がしっかりしていないと。中には、相談が下手な人がいるわけです。仮に、何も知らなくても自分たちを卑下したりしないほうがよくて、できないものは「できない!」で仕方がないわけです。でも、何かを教えてもらうためには材料が必要で、店からもその材料、すなわち情報をちゃんと出して、こうしたらどうなんですかって聞かなきゃダメなんです。ところが、自分は情報を出さないのに、教えてくださいっていうのが意外と多いんです。それでいながら、支援企業に、他の事例と指差して、これと同じようにやってくださいと言ってみたりする。でも、できるわけない。つまり、へりくだり過ぎてもダメだし、踏んぞり返ってもダメ。

関係性を築くということ

石郷 対等なんですよね。なんか社内でも同じじゃないですか?「それは部下にやらせます」とかいってみたり。そこは違うでしょって。「やらせる」んじゃない「やってもらうんだ」と。

川添 そうそう。まさにそこ、メガネスーパーの社長もめちゃくちゃ指摘するところです。だから、今、情報を出すって話をしましたが、これにしたって提案に期待しすぎてもダメなんです。それを一緒になって考えるってことですよね。あなたプロだから全部知っているんでしょ?これって過剰な期待なんですよね。こっちはこっちで、こうやって売りたい、向こうは向こうとしてこうしていったらできますよと。変に上下ができると、相手が言わなかったりするわけです。

石郷 なんか思いますよね。何かビジネスのスキームを組む時に、3社いたら、3社とも同じ利益をとって初めて、そのスキームが長く続く。ちょっとうちだけ貰っちゃおうみたいな話をした瞬間に、これはもう続かなくなると。同じことが関係性の中でもあるんですよね。

川添 新しいサービスを取り入れるとき、使えるお金がいきなりあるわけではないので、まずは店舗に必要な(利用できそうな)サービスから取り入れるってことになるんです。そうなると僕らからも初期段階は、ここは改善してほしい!とか、こういう機能があるとより成果が出る!とかあれやこれや言うと思うんです。すると、支援企業もそれを反映してくれるから、結果、そうやってサービスとして反映されやすくなるじゃないですか。店も支援企業もWinWinでやっていけるんです。うちだって、色々言った立場だから、そこで価格を安くとか、勿論、言いませんよね。

逸見 それぞれが、ビジネスに主体性を持つってことですよね。向こうのベンダーから言われた通りにやったのに、だから向こうが悪いとかじゃない。そもそも、あなたが会社から言われている役割は何ですか?って、最初の話にもつながってきます。もし、担当者がわからないなら、最低限それを社内で確認しておきましょうって話ですよね。

石郷 丸投げじゃダメなんですよね。でも、意外と多いというのも事実。

逸見 そう。ただ、作ってくださいと言ってみたりすると、絶対、途中で困ってくるわけですよね。だんだんウェブの開発が増えて、コストがかさんできて、そこまできちゃうと、社内で言い出せなくなっちゃうわけです。そうすると金額をまけてくれという話になってきたりするわけです。じゃないと支払わない、という具合に変な関係ができてくるわけです。そうすると、それを請け負う側も、これなんとかしてやってくれ〜っていうことになって、もう、そうなると、ろくなプロジェクトにならないですよね。

石郷 これって、店舗とお客様との関係性にも言えていて…(次ページへ続く)

お客様との関係でも、まっすぐ同じ目線で

石郷 なんにおいてもそうなのかもしれません。もしかしたら、お客様との関係すらも。以前、やずやの方とCRMのことを話していたりすると「お客様は神様じゃないんです」ってことなんですよね。対等な関係の中で、信頼関係を築くことってことなんですよね。

逸見 コールセンターの朝礼に参加するのですけど、クレームとかあったら遠慮なく言ってねっていうんですよね。あなたたちのやっている業務は絶対に間違っていないから、自信持ってやってくれていいよっていうんですよ。もし何か相手から脅されたとしても、会社として対応するから。個人として対応しなくていいからって話すんです。こっちにもお客様を選ぶ権利がある。

川添 うまくいっていなくて、普通にやっている時、クレームを異常に気にするんです。

石郷 過敏になっているんですよね。

川添 そうそう。そうすると、これやろうよって言っても「クレーム来たらどうしよう」っていうのが最初に出るんです。あるいは、新しい仕組みも、そこに自分が当たりたくないから、意見を出してきたりするんですよね。じゃあそれって件数何件って聞くと、2件とかなんですよ。

逸見 年間で2件のために、それを防ぐための仕組みを作れって言ったのか、とかですよね。クレームが来ても、当時、セブンアンドアイグループにいた時なんか、「じゃあ私行っちゃおう」って、そこに行っちゃったりしたんですよね。大概のクレームは、誠意を持って接すれば、なんとかなるもんです。そこで目先の事態に気を取られていたら、ダメで、本質を見ないと。

 やっぱり正しい考え方、人として、ちゃんとやるってことなんじゃないかと思います。対お客様、対クライアントでも、一緒なんだよね。その中で、やりたいことがあるんだったら、幾つかのステップがあれば、きっとやれるようになるよねと。「この商品を売りたいんです」そう言って、最初はわかっていなくてもそこは「だからなんとかしたいんです」でもいいんです。仮に、ECだって初めてでいいんです。けど、「今はこうやって売ろうと思っています」という店舗側の強い意志と、それをするために全体の流れの中でスタッフが考え、時に、サポート企業とも向き合って、皆で作り上げていくんです。いつの時代だって、そういう「考えることは誰だってできる」んです。そこが、本当に、一番大事なとこだと思います。

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 思うに、ネットショップに関わるスタッフ、実店舗に関わるスタッフ、支援企業のスタッフそれぞれに意思を持ち、そのためにはその企業が、店が何を目標としているのか、そして、その中においての自分の位置を分かった上で、全体を見通す視野を持つことがいかに大切か。

 ただプレゼンテーションに終始するような支援企業は店舗からの信頼をも集めないし、店舗もまた情報をもらうばかりでは店に未来はない。自分たちの立ち位置を考えた上で、率先して胸襟を開いて、共通の目標に向かって、前へ進んでいくかで、おそらく5年先、10年先のネットショップ、EC業界のあり方が変わるのではないかと思う。

 本質的にして、根本的な話は、ビジネスに関わる全ての人にとって参考になる、貴重な話であったように思う。改めてお二方に感謝の意を述べ、この記事を締めたいと思う。ありがとうございました。

記者プロフィール

石郷“145”マナブ(編集長)

メディア編集部 ゼネラルマネージャー。キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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