LINE活用でEC売上を126%アップ!? 創業156年の和菓子屋が 急速に結果を出せた秘訣とは?

安藤 祐輔

日本国内においておよそ9000万人が日々使っているLINE。そんなLINEをECサイト運営に生かしている企業も増えています。しかし、一筋縄にはいかないというのも事実。そこで今回は、自社EC運営にLINEを活用し、売り上げを伸ばす金沢の老舗和菓子屋『末広堂』の事例を参考に誰でもできる「ECにおけるLINEの活用方法」の秘訣を学びます。

※注:この記事は、株式会社 Kuroco(本社:東京都中央区、システム開発事業部:松井 賢太 )・株式会社 バイモソフト(本社:東京都渋谷区、ECAIサポート:野田 優 )のECサイト運営を支援する株式会社ハックルベリー(本社:東京都世田谷区、プロデューサー:小坂悠真)主催のセミナー「創業150年の和菓子屋が、EC売上を126%アップさせたLINEの活用方法とは?』」を記事化したコンテンツです。

後継者不足に悩む老舗和菓子屋がスピーディーにECを開設できたのか

後継者不足に悩む老舗和菓子屋がスピーディーにECを開設できたのか

末広堂は、慶応3年(1867年)に金沢で創業された老舗和菓子屋です。砂糖を使わない『きんつば』をはじめ、『黄味しぐれ』『うすかわまんじゅう』など人気の商品が多数あり、由緒あり歴史ある和菓子屋として地域に根付いていました。
そんな中、新たな取り組みとして、ネットショップを始めることになり、非常に短い開発期間で開設まで辿り着けたといいます。
そこにはどんな理由があったのでしょうか。

1 株式会社クロコが事業継承をした。

大きな要因として、事業承継という形で株式会社クロコのグループ会社が運営を引き受けるということがあり、その中でもチームの松井さんが加わっていたのが大きな影響を及ぼします。過去にECサイトの構築を担当したことがあるという松井さん。1人でも、ネットショップ開設から運営までの全体像を把握している人材がいるというのはスピーディーに開発を進めていくのに必要不可欠です。

2 Shopifyの完成度の高さ

2 Shopifyの完成度の高さ

もう一点は、Shopify自体の開発のしやすさといった面もあると思います。
普通ならば、一つ一つの機能を開発チームとの議論を通してながら、一つ一つ時間をかけてテストし、進めていく形になります。しかし、Shopifyでは、「アプリ」という形を通して、インストールからいくつか設定を行えば、欲しい機能をすぐに導入することができます。
実際に、今回末広堂のネットショップを構築した、松井さんはこう語ります。

今回のECサイトの構築は短期間でかつ初期費用をできるだけ抑えなければならないという条件がありました。そこで白羽の矢が立ったのがShopifyでした。Shopifyでの構築は初めてでしたが、先述の条件も満たしていましたし、プラグインが充実していたり月額費用も抑えられるためよかったです。(松井)

結果的に今回の末広堂の構築から学ぶShopifyのメリットとしては、「アプリで機能をできるからこそ、限られた時間の中でも選択と集中をして構築ができる」という点と「普通なら行わなければいけない構築を省き、アプリの導入で代用できるため、コストを抑えることができる」という二点が挙げられます。

また、加えて今回は松井さんが関わっていたため不要でしたが、全体像を把握している人材を確保しておくこと。身近にいないのであれば、プロのサポートを受けるというのは、費用を抑え、スピーディーな構築を実現するために重要な要素だと感じました。

売上の向上に向け様々な取り組みを行う、末広堂。飛躍の鍵となったのは、CRM施策としてのLINE活用!?

売上の向上に向け様々な取り組みを行う、末広堂。飛躍の鍵となったのは、CRM施策としてのLINE活用!?

ECサイトが完成し、順調に売り上げが伸びる中、さらなる打ち手として末広堂が次に取り組んだのはCRM活用によるCVR・リピート購入率の改善でした。
そこで末広堂が取り組んだのはLINE連携を用いた、ステップ配信です。

ステップ配信とは?

ステップ配信とは?

ステップ配信(Step Delivery)とは、顧客との関係を強化し、彼らの関心を維持するためのマーケティング施策のこと。

ステップ配信を用いたマーケティングでは、顧客は時間をかけて製品やサービスについて詳しく知ることができ、一度に大量の情報に圧倒されることなく、自分のペースでサービスとの関係を続けていけるため、ある種購買を強制しない「やりとり」が、顧客との関係を強化し、製品やサービスへの購買意欲を高めます。
また、自動化された配信による時間とリソースの節約と、より明確な行動のデータが収集できることから、他のマーケティング施策にも活用でき、より効果的に施策を運用することが可能となります。

初めてのLINEステップ配信も簡単・便利にできる強い味方「ECAI」

初めてのLINEステップ配信も簡単・便利にできる強い味方「ECAI」

ECAIはECサイトとLINEの連携を行うWebアプリ。ECAIの特徴や強みについて野田さんはこのように語ります。

ECAIは、無料で導入できるLINE連携ツールです。CRMに興味をお持ちの方は非常に多いと思いますが、初期投資が必要になってしまいますとリスクが大きいため、LINE連携を諦めてしまうお客さまもいらっしゃいます。導入のハードルを下げることで、より多くのお客様にLINE連携を体験していただくことができるかと思います。(野田)

ECAIの特徴としては、とにかく使いやすさに重点を置いており、他の拡張ツールと比較してもユーザーとの距離がとても近いという点があります。
また、もう一つの特徴として、ユーザーとの距離感の近さを生かした、細かなアップデートも特徴としてあり、日々機能の追加と向上を続けています。

末広堂のLINE活用。成功の秘訣はナーチャリング・クロスセル、そして限定配信!

末広堂のLINE活用。成功の秘訣はナーチャリング・クロスセル、そして限定配信!

ECAIを活用して、LINEを使ったCRMを運用する末広堂。末広堂・松井さんは今回が初めてのLINEを用いたCRMだったと言います。
そんな中でも、注目すべきは
パターンごとの顧客へのナーチャリング
購入がない顧客へのクロスセルやクーポン配布
タグごとに絞った限定メッセージ配信
の3つ。

アプリを通して、どこからLINEへ流れてきたのかを特定できるため、その数値を意識して声がけをすることはもちろんの事、ステップ配信を利用して各パターンごとに末広堂の紹介をしてECサイトの認知や、各製品の紹介をしていくことで、認知を広げ顧客のナーチャリングを行っています。また、ナーチャリングで購入がなかった人には、クーポンを配布したり、一回だけ購入された方にはリピートを促すために他の商品の紹介(クロスセル)を行ったり、クーポンを配布するなどして再度アクションを促すような取り組みをしています。

また、流入経路ごとにタグ付けができるため、そのタグごとに絞ってメッセージを送ることもできます。それぞれの属性に合わせて限定的な配信などをすることで顧客セグメントごとの個別の対応ができる点は魅力だと思います。(松井)

またこの末広堂の活用方法、そして担当の松井さんの使用方法に以下のような特徴があるとECAIの野田さんはおっしゃいます。

Shopify連携によって購入者のタグを自動でつけることが可能になります。その設定を通して、顧客の属性に合わせて適切なメッセージを使い分けているのは効果的な使い方だと思います。また、全体をみるとまだまだ他の事業者さんにはできていない、パイオニア的な使い方だったかなと思います。
ソース元を特定し、そのソースごとにどういう配信をすればいいのかという仮説を立てて、PDCAを回していくやり方は、自社ECだと特に有用だと思います。獲得チャネルごとに、購入頻度や購入単価は変わって来ますので、非常に上手い使い方をされているなという印象でした。(野田)
一見、特別なことはしていないようにも思われる末広堂のCRM施策。しかしその取り組みには、実は皆ができていない活用法や仮説立て、そして適切にPDCAを回していくという基礎的な部分の徹底からこのような成果に繋がっているのではないでしょうか。そして、末広堂は事業継承を経て、ECについて熟知している松井さんという人材がいたからこそ、これだけの結果に繋がった特殊なケースだとも言えます。しかし、一般的にはなかなか松井さんのような人材がいないことも事実。構築を始め、様々な施策を進めていく上で、ECのエキスパートと二人三脚で運用していくというのはやはり重要なのかもしれません。

大きな収穫を得たKUROCO。今後の取り組みとは

大きな収穫を得たKUROCO。今後の取り組みとは

これまで、何件ものLINEを活用したCRM事例をみてきた野田さんも感心する末広堂のLINE活用。松井さんは今後の取り組みについてこう語ります。

今回の取り組みでLINEの知見が貯まったので、弊社のクライアント、そしてEC以外のところでも活用できるとおもっているので、ノウハウをコンサルティングという形で広げていきたいと考えています。また、店舗・EC・LINEの複数方向からの連携ができたので、そういった点も含めて先行ECビジネスを活用したところでもコンサルティングとして広げていきたいと思っています。
今回はECAI・ShopifyでのLINE活用になりましたが、他の利用方法をされている方もいらっしゃるとのことなので、今後は店舗でもLINEでの活用を広げていきたいと思います。(松井)

今回の末広堂の事例を通して、手探りの取り組みでもしっかりと仮説を立て、PDCAサイクルを回していくというのはどのビジネスにおいても、基礎であり真髄であると感じました。また、末広堂の取り組みに注目が集まりがちですが、便利で安心の機能を提供し親切なサポートで取り組みを応援するECAIの存在も必要不可欠だったと思います。
加えて、創業156年の老舗でもクイックにECを始めることができるということが理解できたと思います。しかし、そのためには、松井さんみたいに全体像を整理できて、システム理解が高い人材が必要になるのは明白であり、実際なかなかみるからないという課題もあると思います。
もし、今回の事例をみてECを始めたい、Shopifyを始めてみたいという方はぜひ信頼できるパートナと一緒に一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。


著者

安藤 祐輔 (Ando Yusuke)

東京消防庁に入庁後、筑波大学体育専門学群へ進学。スポーツ経験のある学生の採用に特化した採用支援事業を学生時に起業し、ケンコーコム(現Rakuten Direct)へ。その後、海外向けEC事業などに携わり、Socketを創業して「Flipdesk」をリリース。代表を退いた後、「Shopify」向けアプリの企業であるハックルベリーを立ち上げた。計4度の起業。
ハックルベリーでは、「Shopify」向けの集客アプリの開発を行っている。

https://huckleberry-inc.com/