eBayで伝統工芸品を海外に!越境ECが文化を守る

福島 れい

まずは京都から。観光客を越境ECユーザーに

 先ほど、イーベイ・ジャパン株式会社が記者発表会を行い、日本の伝統工芸品の越境EC展開を支援する「小売・製造業者 海外展開支援プロジェクト」を京都から開始すると発表した。これは日本における伝統工芸品の生産が減少し、最盛期の1/5程度となっているという課題に取り組むべく、立ち上がったプロジェクトとなっている。今回は第1弾として「京都」の伝統工芸品からスタートし、今後、他の街や地域などに拡大していく方針だという。

 「京都」と言えば国内外から”古都”として人気を集めている街だ。京都を訪れる観光客数や宿泊数、観光消費額など軒並み過去最高の市場規模となっている。しかし、登壇した京都市長 門川 大作氏が語った内容には衝撃を受ける。

 「京都でタクシーに乗ると、運転手さんが”西陣織”について詳しく教えてくれることがある。観光客の方は、さすが京都の運転手さん、勉強しているんだなぁと思われることでしょうが、現実は違います。この方は西陣織の職人なのです。西陣織の売れ行きが悪く、生計が立たない、そこで副業としてタクシー運転手をしているのです。」と門川市長の言葉だ。世界一の品質とも言われる西陣織だが、高い品質だけでは売れない。こうした質の高い伝統工芸品が日本中にたくさんあるのだ。

 今回のプロジェクトはこうした伝統工芸品に光をあて、伝統工芸品を、文化をまもる取り組みなのである。具体的な取り組みとして、イーベイはアメリカで展開するeBay.com上に特設ページを公開し、商品を紹介する。ここでは、商品の概要説明だけではなく、歴史や伝統、使い方などを深堀して伝え、日本商品への興味関心を促す構成となっている。

 並行して、翻訳や配送など対応が必要になるがこれらの店舗参入支援を株式会社フォネックス・コミュニケーションズが担うことで、越境ECの経験がない中小企業でも出店しやすい体制を整えた。独立行政法人中小企業基盤整備機構、京都市、京都商工会議所が 協力しプロジェクトを後押しする。また、ペイパルが決済サービスのユーザー向けにメール配信をするなどし、集客支援を担うという。

 こうした取り組みから感じるのは、ECはただモノを売る場にとどまらず、大きな可能性を秘めたプラットフォームであるということだ。門川市長が「職人さんの中にはいいものを作れば売れるという考えも根強くある。それはそれでいいのだが、それだけではいけないという事実も受け入れなければいけない。」とも語っていたが、ECをはじめ、多様な取り組みができる場や流行などは上手く活用し、味方につけていかなければならないということなのだろう。すでにEC事業を行っている企業であっても、日々変わりゆく現状を把握し、活用する意識が欠かせない。


記者プロフィール

福島 れい

ECのミカタ編集部に所属するバドミントンと和服、旅好きの記者、通称れーちゃん。ミニ特集「アパレルECの未来(https://goo.gl/uFvr2C)」等、これからEC業界がどんな風に発展していくのか。に注目しながら執筆しています。2017年の執筆テーマは、”私にしか書けない記事をタイムリーに”。

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