ワンダーコアで脚光「Shop Japan」CVR164%改善の裏側

福島 れい

左:株式会社オークローンマーケティング Eコマース本部 マネージャー 前田 智美さん
右:Kaizen Platform,Inc. EC Media Unit / Customer Success Lead 今井 利幸さん

 「倒れるだけで腹筋ワンダーコア~♪」 このフレーズ をご存知だろうか?そう、健康器具などで人気を集めるShop JapanのCMのものだ。コミカルで印象深いCMからは、プロモーションがうまい会社という印象を持っていたのだが、人気の秘密はそれだけにとどまらないようだ。今回はShop Japanを展開する株式会社オークローンマーケティング Eコマース本部の前田 智美さんと、A/Bテストを戦略的に用いShop Japanのサイト改善に取り組んでいるKaizen Platform,Inc.EC Media Unit / Customer Success Lead 今井 利幸さんにお話を伺い、Shop Japanの売れる理由に迫る。

Shop Japan ロングセラーの陰にサイト改善あり!

Shop Japan ロングセラーの陰にサイト改善あり!


ーーShop Japanと言えば「ワンダーコア」の印象が強いのですが、実際のところ、どんなECサイトですか?

前田さん:弊社は20年ほど前から「TVショッピング」で健康器具や生活雑貨など様々な商品を販売してきました。ECサイトの顧客層としては、30代~40代の女性が多く、中でもスマホECサイトに強いというのが特徴です。 最近では「ワンダーコア」がご好評いただいていますし、2007年にヒットした「ビリーズブートキャンプ」も弊社の商品です。

ーーTVショッピングから始まって、現在は「スマホ」に強いということは、オムニチャネル化を進めていらっしゃるのですね。

前田さん:オムニチャネル化を進めようという意識があるというよりは、お客様のニーズに応えてきたところ、オムニチャネル化が進んだと言ったほうがいいかもしれません。スマホを利用してお買い物をする方が増えているのなら、Shop Japanもスマホを強化しようということですね。

ーーその中で、前田さんはECサイトの運営をされていらっしゃるのですか?

前田さん:私が担当しているEコマース本部では、「集客担当」と「サイト運営担当」に分かれ、CVRの改善を目指しています。商品ごとにページの印象を変えたり、A/Bテストをするなど試行錯誤を重ねていました。しかしスピード感を意識するあまり、その場その場の対応になりがちで、どれだけやってみても「もっとできそう。」という思いがあり、「でも正解がわからない。」という状況に陥っていました。

今井さん:そこで私が、CVR改善のサポートをさせていただくことになりました。Kaizen PlatformはA/Bテストの環境、グロスハッカー(デザイナー)、専門のディレクターが集まったプラットフォームです。A/Bテストの経験やノウハウが豊富なディレクター(今井)が課題・仮説をオークローンさまへ立案し、グロスハッカーがそれに沿ったデザインを作成、テストを実行するという一連の流れをスムーズに行える環境が整っていますので、「もっと改善できそう」な感覚を実行できるようになっているのです。

Kaizen Platform

ーー改善の効果はいかがでしょうか?

前田さん:例えば「スレンダートーン」という商品では、もともと弊社で使用していたオリジナルの商品ページと比べてCVRが164%になりました!オリジナルのページも弊社なりの試行錯誤を重ねたものだったので、この効果はうれしいですね。「スレンダートーン」以外にも現在10種類の商品で改善に取り組み、そのすべてで効果が出ています。

月次積み上げCVR数を可視化したグラフの例。
Kaizen Platformでは、A/Bテストの結果を管理画面上でわかりやすく可視化してくれる。


今井さん:上のグラフは、ある商品ページでA/Bテストを行った結果をグラフで表現したものです。グレーがオリジナルのCVR、青がA/Bテスト期間中のCVR、緑は最も効果が高かった商品ページのみを使用したとして想定されるCVRです。

ーーオリジナルのものと比べて、大幅に改善されていることがよくわかりますね。この成果に至るまでの取り組みを教えていただけますか?

Shop Japanで行ったワークショップの様子


今井さん:最初に行ったのは、Shop JapanのEコマース本部のメンバーが集まって行った「ワークショップ」です。この場で目標(KGI)を改めて共有、目標(KGI)達成のために必要なプロセス目標(KPI)を明確にしました。これをKPIツリーという形に落とし込み、これをベースに次にとるべき対策を明確していくのです。

KPIツリーの考え方


前田さん:このワークショップには、「サイト運営担当」と「集客担当」の双方から多くのメンバーが参加しました。みんなで揃って目標の共有、課題の認識ができ、良い場となりました。


ワークショップの実施後、取り組んだ具体策は次のページで。

スレンダートーンCVR164%改善施策に迫る!


ーーでは、「スレンダートーン」はどのようにCVR164%改善を達成したのでしょうか?

今井さん:取り組んだのは、商品ページのA/Bテストです。まず、前田さんとオリジナル商品ページの課題と仮説、そしてグロースハッカーに依頼する指示内容を作成します。この指示内容に沿って、複数のグロースハッカーがデザインを作成、これを用いて最も効果が高いデザインを計測していきます。

前田さん:実際にグロースハッカーが作ってくださったデザインが下のものです。弊社から依頼した1つの指示内容から全く印象が異なる商品ページができました。

指示内容を踏まえてグロースハッカーが作成した商品ページの例。


今井さん:次は、この出来上がったデザインを並行して展開し効果検証、最もCVRの高いデザインを探します。

前田さん:課題と仮説に沿ったデザインといっても様々なものが想定でき、自社で制作するのは大変です。これを経験あるグロスハッカーが制作してくれるというのも助かりました。

ーーA/Bテストの結果はどうなりましたか?

今井さん:デザインごとのCVRは、下のグラフのように管理画面上に反映されます。実際の結果はお見せできませんが、イメージとしてご覧ください。「スレンダートーン」の場合は、最も効果が高かったものでCVRが164%になりました。一定期間テストした後に、最も効果が良かったものを選び、それに絞って展開することで、継続して高いCVRを得られるという仕組みです。

商品ページごとにCVRを可視化したグラフの例。
この場合、紫のグラフが示すデザインを使用すれば、CVRが最も伸びる。


ーー数ある商品の中ではじめに「スレンダートーン」に取り組まれたのはなぜでしょう?

前田さん:はじめに「スレンダートーン」のCVR改善に取り組んだのは、ダイエットを始める方が多いとされている春ごろまでにテストを終えることを目標に逆算して、良いタイミングだったことが大きな理由の1つです。その後、テストを開始した「ワンダーコア」では、シリーズを選択するページを挟む等、弊社の要望に沿う形で行っていただき、10種類の商品のテストに入りました。どの商品でもCVRが改善できており、今後もさらに商品の幅を広げてテストを展開していく予定です。

--A/Bテストを成果につなげるために抑えるポイントを教えてください。

今井さん:A/Bテストを成果につなげるポイントは何より、毎日継続していくことだと思います。Shop Japanさんの場合、前田さんをはじめとするEコマース本部のメンバーのみなさんの日常業務の一部に、Kaizen Platformを組み込んでいただき協業できたことも、このCVRを得られた理由の1つだと思います。

ーー最後にShop Japanの今後の展望についてお聞かせいただけますか?

前田さん:Shop JapanのECサイトをご利用いただくお客様は、性別や年齢の違いだけにとどまらず、Google検索から、SNSから、TVを見てと様々なルートからいらっしゃいます。こうしたお客様のニーズは、それぞれ違うでしょう。お客様を細分化し、その各ニーズに対応し、「Shop Japanは今よりもっとハッピーなライフスタイルにしてくれそう」と認識していただき、選んでいただきたいと考えています。


記者プロフィール

福島 れい

ECのミカタ編集部に所属するバドミントンと和服、旅好きの記者、通称れーちゃん。ミニ特集「アパレルECの未来(https://goo.gl/uFvr2C)」等、これからEC業界がどんな風に発展していくのか。に注目しながら執筆しています。2017年の執筆テーマは、”私にしか書けない記事をタイムリーに”。

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