クラウドファンディングの可能性〜多様性を活かす社会

ECのミカタ編集部

最近「クラウドファンディング」という仕組みが注目を集めている。クラウドファンディングとは、「Crowd(クラウド)=群衆」と「Funding(資金調達)」という言葉を組み合わせた造語で、インターネットを通じて不特定多数の人から資金を集める仕組みのことを言う。

クラウドファンディングがどういった可能性を持っているのか、日本で最初に立ち上がり、最大の利用数のあるクラウドファンディングサービス「READYFOR?」を通じて、目標金額を達成したプロジェクトの例をご紹介する。

障害のある方々と一緒に、継続雇用を目指すアクセアリー作りを!

障害のある方々と一緒に、継続雇用を目指すアクセアリー作りを!

 今回紹介するのは、Holly heal®というブランドの天然石アクセサリーの制作を行うみたけさやかさんと、障がい者雇用施設FDA(特定非営利活動法人Future Dream Achievement)の利用者さん、そしてその理事長である成澤俊輔さんが、共に創り上げたブランド「Holly heal® on Sunday 」の製品を多くの方に知ってもらうため、「ACTIVE CREATORS(アクティブクリエイターズ)」という展示会に出展しようというプロジェクトだ。

 「Holly heal® on Sunday 」では、FDAの利用者さんにみたけさんが「シュシュ」の作り方を教え、その作り手さんたちが作ったシュシュを製品として扱っている。シュシュを作るというきっかけは、天然石のアクセサリー作家であり、その作品をECサイトを始めとして百貨店などでも販売を行っていたみたけさんが、趣味として日曜日にシュシュ作りをしていたところ、それを「事業にしたら良いのに」という声をもらうことがあったことが最初だった。

 そんなきっかけがあり、シュシュを一緒に作る人を考えた時に、元々みたけさん自身が、障がい者雇用における仕事の質と賃金への疑問を持っていたこともあり、「世界一明るい視覚障がい者」というキャッチコピーで活躍をしている成澤俊輔さんの存在が思い出されたそうだ。そして、成澤さんが理事長を務めるFDAの利用者さんの中にはとても素敵な感性を持っている人がいること、手仕事に向く人がいることなどから、共に「Holly heal® on Sunday」というブランドを生み出すことになった。

 今回のプロジェクトの目標金額は840,000円、支援締切は10月31日(月)午後11:00となっている。集まった資金は、シュシュ400個の制作費、展示会の出展費、展示会当日の人件費の他、展示会出展に伴って必要なものに使われる。支援金額に応じて、手紙やブランドページへのクレジット、活動報告書やシュシュなどの「リターン」が用意されている。

 クラウドファンディングではまず、想いや志といったものがある。もちろんそこから支援者を納得させるだけの計画性も必要になる。だが最初に想いや志があり、それを形にできる可能性を与えたのが、クラウドファンディングという新しい仕組みなのだ。それは今回のプロジェクトではどのようなものなのかを知るために、みたけさんと成澤さん、FDA利用者の皆さんで行われた対談会に参加してきた。

対談イベントに参加、想いを形にするために必要なこと

対談イベントに参加、想いを形にするために必要なこと

 「Holly heal® on Sunday」のシュシュは、何よりも「いい作品」を目指している。いわゆる障がい者支援の製品というわけではなく、世の中に通用する、百貨店で販売されているような作品を目指している。そのためにあらゆる角度からのこだわりがある。

 素材には、京都から届く職人が一つ一つ手作りする「ファンシーヤーン」という糸が使われている。作品一つ一つには物語があり、それを表す名前がついている。また「Holly heal®」の姉妹シリーズということで、天然石も付けられている。パッケージは、売り場に置かれた時に売り手が作品の魅力を感じ、それを引き出して販売できるように、試行錯誤の末にたどり着いたものだ。

 そして何より重要なのが、作り手さんだ。シュシュは指編みで作られる。対談会では、二人の作り手の方が登場した。FDAの利用者さんということで、お二方とも障がいを持ち、自由にならない点がある。それでもコツコツと練習を重ね、作品を作り続け、今では作品作りをとても楽しみ、そのクオリティーも高まっている。実際にシュシュを見せた人からは、とても高い評価を得ているそうだ。

 シュシュ作りという手仕事には、同じ作業を繰り返し続けるという集中力が必要になる。この点が、障がいのある人に向いているということもあった。また、作品作りにおける「感性」の部分は、障がいの有無に左右されない。手仕事には個性が出る。むしろ「多様性」という面では、障がいのある方だからこそ生み出せる部分がある。今回の取り組みは、障がい者雇用の面でも大きな一歩になるかもしれない。

 また、作品のクオリティーが高まったその先には、「使う人の笑顔を想う」というところまでいきたいとのこと。「いい作品」は、人を楽しくさせる。シュシュというものは、なくても困らないが、あるとうれしいもの、生活に喜びをプラスしてくれるものだ。

 今回のプロジェクトが形になることで、従来の社会の仕組みには収まらなかった多様性が世の中を彩る、そんな新しい社会の在り方につながるのではないだろうか。そこで、インターネットを利用して世界中の不特定多数の人にアプローチできる「クラウドファンディング」という形は、新たな可能性なのだと思う。

第一目標達成!応援に感じることと次なる目標へ

 実はこのプロジェクト、多くの人の共感を得て、支援締切日より前の10月27日に、目標金額に達した。しかしそこで終わりではない。より可能性を広げるべく、第二目標を立て引き続き支援を募っている。以下、みたけさんから、第一目標達成と次なる目標についてのメッセージがある。

【目標金額達成のお礼とNEXTゴールについて】
 
本日早朝に100%達成になりました。本当にありがとうございます。支援者の方から直接ご連絡があり、知ることが出来ました!
 
言葉にならない想いです。
 
まだ4日ある中で、ギリギリまで可能性を追いかけたいと思いました。
 
残り4日間でブランドサイトの構築費用を集めさせてください。
 
もともとは、新しいブランドとしてのWEBサイトを本格的に構築することを最初から検討していたのですが、初期段階では、達成が難しいかもしれないから…と一旦外した内容でした。
 
実際にこうして歩み始めてみると、わたし達の仕事の背後には、モノづくりへの真摯な姿勢など、応援してくださる方、これから買ってくださる方々へ伝えたら喜んでいただける内容がいくつもあります。これを知っていただくためにも、背景の語れる素敵なサイトを作りたいと思っています。お見積もりは、一流アクセサリーブランドサイトを制作経験のあるデザイナーさんにお願いしています。福祉+ARTのコラボレーションと言ってくださった支援者の方もいらっしゃるように、美しいものが作れたらいいなと思っています。
 
どうぞ、引き続きご支援ください。よろしくお願いいたします。
 

2016年10月27日 みたけさやか

★プロジェクトの詳細は「READYFOR? シュシュ」で検索★


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