ECサイトのM&A成功事例、あなたのサイトが1億円に!?

福島 れい

 M&Aと聞くと、「大企業が行うもので中小企業には関係ない」と思っていないだろうか。実は売上1億~10億円前後の中小企業間で行われるM&Aの方が、日本のM&Aの約半数を占め、圧倒的に多いのだという。今回は、株式会社ストライク(M&A仲介会社:東証マザーズ上場)のEC業界責任者、安藤氏にEC業界で起こっているM&Aについて伺った。

M&A成功事例 : 女性用衣料のECサイトを売却

 比較的新しい市場であるEC業界では、M&Aという経営手法はまだまだ認知されていない。しかし、EC市場の急激な成長に伴い、参入企業も増加。運用実績のあるECサイトの企業価値は非常に高まり、M&Aが増加しているのだ。

 あるECサイトを1億円で売却した事例をご紹介したい。

 1億円の値が付いたこのECサイトは、30代のオーナーが1人で立ち上げ、高級女性用衣料のECサイト運営を行っていた。業界の先駆けということもあり、開業してわずか5年で会員数は40,000人、アルバイトも10人を超え、年商約1億円規模のサイトへと成長した。

 しかし企業の成長に伴い、個人で経営することに限界を感じ始めたという。また、オーナーには他に実現したい夢があった。このような気持ちで経営を続けても従業員やお客様のためにはならないと判断し、より経営の上手い企業に任せたいと思うようになった。これが譲渡に至った理由だ。今回手にした資金で、自分の夢を叶えていく。

 ECサイトのM&Aは相手が見つかりやすいのが特徴である。シナジー(買収による相乗効果)がわかりやすく、投資の対象として判断しやすいのだ。紹介したサイトも、M&Aで譲渡すると決めてからはあっという間だった。買収企業を募り始めてすぐに6社が名乗りでて、最終的に1億円で売却することが出来たという。

ECサイトのM&A(売買)の特徴

ECサイトのM&A(売買)の特徴

 今度は買う側のメリットを考えてみよう。

 例えば、製品に強みを持つ企業では、利益率の高い自社製品をECで販売すれば収益の増加を見込める。しかしEC運営やWebマーケティング等の知識を持つ人材がいないことも多くなかなかEC事業に参入できない。こんな企業がM&Aを行うことで、ECサイトと一緒に人材も確保できる。新規でECサイトを立ち上げるよりも、既存のECサイトを買収した方がはるかにリスクを抑えられるのだ。

 さらに面白いのが、運営に失敗して閉鎖を考えている場合でも、売却することが出来るという。これまで投資をしてきたECサイトをただ閉鎖してしまうと後には何も残らないが、売却し投資回収ができればそれに越したことはない。買い手としてはゼロから始めるのにかかる時間や労力を買うという考えで、双方にメリットがある。

 ここで取り上げたのはECサイトのM&Aのほんの一例だが、EC業界の成長に伴い競争が激化していくことを考えると、EC関連企業のM&Aは今後ますます増加していくことが予想される。これまでECサイト売買を考えていなかったEC企業においても、将来的な戦略の1つとして動向を追っておく必要があるだろう。


記者プロフィール

福島 れい

ECのミカタ編集部に所属するバドミントンと和服、旅好きの記者、通称れーちゃん。ミニ特集「アパレルECの未来(https://goo.gl/uFvr2C)」等、これからEC業界がどんな風に発展していくのか。に注目しながら執筆しています。2017年の執筆テーマは、”私にしか書けない記事をタイムリーに”。

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