化粧品ECの停滞を脱する千趣会の施策、CRMとデータ活用

ECのミカタ編集部

利用者が増加しているEC市場にあって、化粧品EC市場が停滞していることをご存知だろうか。化粧品は対面接客を望むユーザーが多く、EC向けではないと言われることもある。だが、ECだからこそできる化粧品ECの接客方法というものがあるはずだ。その真相に迫るべく、株式会社千趣会が開催したセミナーに参加した。

今回は、千趣会マーケティングサポート株式会社中山悦二郎氏による発表を基に、化粧品市場とEC、そして接客について考えていく。

化粧品販売チャネル「通販」が増加傾向

 化粧品市場について、富士経済の調査によると、化粧品出荷額はこの20年間(1996年~2015年)、1兆4,000億円~1兆5,000億円の間を維持している。また、小売額としては2010年に2兆1,417億円に上っている。さらに総務省の家計調査によると、化粧品への消費支出額は50代がピークであり、20代の1.72倍を支出している。これらの結果より、化粧品市場全体としては売れる可能性は決して低くなく、高単価を狙うのであればターゲットを50代に絞るといった方法も考えられる。

 化粧品の販売チャネルには、ドラッグストア、専門店・百貨店、訪問販売、通販などがあるが、富士経済の調査によると、この中でも通販が年々伸び続けていることが明らかとなっている。その理由は、販管費が抑えられることや、大手化粧品ではなくても良い化粧品が手に入ることが挙げられる。通販特有の「口コミ」や「商品レビュー」が商品選びの参考になることも、それを後押ししている。

顧客一人一人に合った接客“CRM”を

 化粧品の購買行動には、初めはサンプルで試し、その後本品を購入するという特性がある。その理由は、化粧品は自分の肌に合う・合わないがあるため、いきなり本品を購入することが難しいからだ。そのため販売側としては、サンプルから本品の購入をいかに促進するか、ステップメールやインセンティブなどの本品誘導プログラムが鍵となる。

 しかし、化粧品は消耗品であるが、健康食品ほどのリピート性はない。顧客によって消費量や消費時間が大きくことなるため、より踏み込んだ細かい顧客管理、つまりCRMが必要となる。

 顧客1人1人の消費ベースが異なるからこそ、より細かいCRMが求められる。例えば、先進の通販企業では、アンケートで肌質や肌のトラブルを確認しカウンセリングに繋げるなどの工夫をしている。また、電話対応時のパソコン画面に、購買履歴の値や出来事によって顔の各パーツの大きさや角度が変化する「フェイスマーク」と呼ばれる表示がされており、これにより、クレームの時はまゆげが下がるなど一目で相手の表情が分かるようになっている。

 さらに、顧客の考慮すべき情報を自動ホップアップさせることで、親密なコミュニケーションを図るなどもしている。これらの施策により、顧客に「私のことよく知ってくれている!」と高評価を得ることができるのだ。

上手なデータ活用で「休眠顧客」を呼び戻す

 ここでは、既存顧客だけでなく、一時期は商品を購入していたもののいつの間にか店舗に来なくなった「休眠顧客」も重要な存在となる。休眠顧客の復活のためには、これまでのデータの活用や分析が必須だ。その休眠顧客をもう一度店舗に戻すためには、これまでのデータを活用して分析する必要がある。

 例えば、過去の購入商品を分析し、顧客が購入しそうな商品のクーポンやキャンペーン案内を送る。その後、休眠期間別レスポンス分析や復活客LTV計算をする事後分析が要となる。その何度も行う分析が新たな案を生み出し、休眠顧客をもう一度店舗に戻し、リピート顧客に繋ぐことができるのだ。

 セミナーの最後に中山氏は、以下のように話した。
 「分析ばかりだと本来の目的を見失って近視眼的になる恐れはありますが、分析をしなければ判断基準を見失ってもっと困ることになります。」

 最初は結果が出ないかもしれない。しかし、地道な顧客分析を繰り返し、小さな知見を重ねることが、やがて大きな成果となる。顧客一人一人に合った接客、”CRM”を行うことで、休眠顧客も見逃すことなく、全ての顧客に満足させ、リピート顧客に繋げることができるだろう。この地道な顧客分析とCRMが化粧品ECの明日を支えるのだ。

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