佐川急便の物流コントロール 大型商業施設の物流を一括受託

商品仕入れ業務の総括目指す まとめて請け負う新サービス

佐川急便は、大型商業施設向けに、商品の仕入れ業務を一括で請け負うサービス提供を開始した。多くのテナントが軒を並べる大型商業施設の特質上、店子ごとに異なる配送業者を利用することが多かった。朝の営業開始前に商品搬入を行うため、種々多様な配送業者作業員が集中し混雑し、搬入制限時刻である午前9時半を超えても作業が続くなど、従来の搬入作業方式ではどうしてもタイムラグが発生しやすく遅れが発生しがちであった。そのネックを解消するため、佐川は自社の最寄り営業拠点に商品を一括で集め、事前に仕分け作業を行うことで施設内の個々のテナントへの搬入を可能とした。新サービスなら現場での作業効率も上がり制限時刻に遅れることもないという。
物流業務を外注する企業が増加する傾向にある昨今、より効率的な配送サービスを提供するため物流企業の競争激化が想像される。

また、同社は日産と組み、100%電気トラックの「e-NT400テストトラック」の実証運転を今夏二ヶ月に渡り実施した。日産が貸与する電気トラックのモニター車を活用し、騒音や振動による負担が少なく加速速度が高いなどその実用性を検証した。
日産では今回のデータを元に今後の開発に活かし、佐川では今後も環境負荷加減に向け様々な取り組みをおこなっていくとしている。
低公害車開発への積極的協力と実用性特化によるコスト削減を目指し、作業効率アップのための新サービス提供も行うなど、自発的に新しいことに挑んでいく佐川急便の姿勢がうかがえる。佐川は国内に約480の営業拠点があり、その大半は大口顧客の荷物を処理する能力を持っているとし、既存拠点を今後新サービスに活かしていく方針だという。

広がる物流効率化の輪 一括受託サービスの成熟過程突入か

佐川の競合である物流大手企業のヤマト運輸は、マンション向け館内物流に進出している。大規模なマンションやオフィスなどを対象に、従来個別に配送を行っていた複数の宅配業者の荷物をヤマトが集約し、一括集荷するシステムである。対象がマンションなどか商業施設かという違いはあるが、モノの考え方や仕組みには共通するところがある。他にも、日本通運が今秋、中小の製造業から製造と物流を受注する業務を開始するなど、一括受託サービスを行い双方両得であるコストと手間の削減に取り組む動きが広まっている。再配達回避に向け専用ポストの開発をAmazonと共同で行った日本郵便などの例もあり、ECによる購買行動が増えそれに伴い加速していく物流業界では、ユーザーサービスの向上と自社コスト削減の両立を目指す大きな波が起こり始めている。より便利になっていく「モノが届く仕組み」は、ユーザーにとってはありがたいことであろう。
企業努力に甘えることなく、ユーザー側も一身となり新しい物流文化の発展に貢献していきたいものである。