⼈間の可能性をひたすら信じて……VALX只⽯昌幸が語るD2C成功の秘訣

ECのミカタ編集部

株式会社レバレッジ 代表取締役 只石昌幸氏

2019年にフィットネスブランド「VALX」を創設し、圧倒的な成功を収めている株式会社レバレッジ。ECのミカタでは、「EC業界の異端児」として知られるレバレッジ代表の只⽯昌幸⽒にEC事業者の悩みに答えてもらう新連載「只⽯に聞け!」を開始します。只⽯⽒本⼈にこれまでの歩みを伺ったイントロダクションの後編では、レバレッジ創業〜「VALX」ブランド創設、そして現在の⼤躍進に⾄るまでの道のりをたっぷり語ってもらいました。

家訓は「起業だけはするな!」でも起業することに

──キーエンスを辞めた後は、どんなことをされたんですか?

とりあえず⼀⼈でできる仕事を始めたんですが、その中でアフィリエイトのビジネスが軌道に乗りました。その後、アフィリエイトから⾃分の名前を知ってもらおうと思って⾏き着いたのが、ブログだったんです。アメーバブログ(アメブロ)もいろいろな⼈から教わって、⾐⾷住のどれかを書けば注⽬されるということで「新規開店のレストラン」に特化したレストランブログを書き、それが⽇本⼀になりました。

僕は「いかに⼈に⾒られるか」を追求するプロモーションが、当時から⼤好きだったんですね。そこで、⾃分みたいに「ブログで⼈⽣変えませんか?」っていうテーマをもとに、アメブロのコンサルを始めました。それがレバレッジの創業につながりました。

──レバレッジ創業後はしばらく⼀⼈で会社を運営されていたそうですが、組織化したきっかけは何だったのでしょうか?

あまりにも忙しくなったので、渋々⼈を雇ったというのが実情です。祖⽗のことがあり、「起業だけはするな」が家訓だったので、親にも言えず、黙って登記しました。それから1年後に「実は起業した」と伝えたら、すでにキーエンスを辞めたことも含めて、全部知っていたと⾔われました。

仕⽅ないから起業は認めるけれど「借⾦はするな」「⼈だけは雇うな」と念を押されましたね。祖⽗2⼈も借⾦はそこまで⼤きくなかったのに、従業員を抱えていたが故に苦しんだという教訓があるから。

でも、その2つの⾔葉が呪縛になって僕は⻑いこと借⾦をしなかったために、事業も⼤きく⾶躍しなかったんですよね。それが今や借⾦36億円ですから。デットファイナンスで銀⾏から36億円も調達しているベンチャー企業の社⻑なんて、世の中にそんなにいないんじゃないですか。

「いかに⼈に⾒られるか」を追求するプロモーションが、当時から⼤好きだったという

レバレッジ⼤躍進の原動⼒は「若⼿に任せる」

──レバレッジにとって、⼤きなブレイクスルーとなったのが 2019年に⽴ち上げられた「VALX」ですが、どういったきっかけで始められたのでしょうか?

当時、レバレッジではパーソナルトレーナーのマッチングサイトを運営していて、約2000⼈のトレーナーを抱えていたので、このトレーナーを起点に世の中に浸透させていけば、間違いなく売れるという若い社員の⼀⾔がきっかけで、ブランドを⽴ち上げました。僕が「レバレッジがやるからには⽇本⼀にならなきゃ。今のザバス(※)を超えられるか?」って聞いたら、提案してきた彼は「そうじゃなきゃやらないですよ」と即答したんです。実際に、始めたら本当に猛スピードで成⻑しました。

僕⾃⾝、パーソナルトレーナーの指導のもと⾝体を鍛えていたので、プロテインの良さは知っていたんです。だから全国に広めたいと⼼から思えたんですね。プロテインもシェイクするのは⼤変かもしれないけれど、振って飲むだけでタンパク質が摂れるって、すごく便利じゃないですか。料理する必要もなく、⽇々の⾷事で⾜りないタンパク質を摂れる。プロテインのすごさはわかっていましたが、まさか⾃分でそれをビジネスにすると思わなかったですね。

僕⾃⾝のオリジナルのアイデアで事業を進めたのはアメブロぐらいで、それ以外はほぼないんですよね。でも、それでいいと思っています。だって、これがやりたいと⼿を挙げた⼈に任せれば、その⼈が⼀⽣懸命やるじゃないですか。僕は、社⻑がすべきことは空気作りだと思っていて、熱意を共有して⾼みを⽬指すようなチームができれば、あとはそれぞれの⼈間のポテンシャルを信じるだけでいくらでも突き抜けますよ。

(※)株式会社明治が製造・販売するプロテインブランド

──事業がそれぞれ⼤きくなっていく中で気づいたことはどんなことですか?

仕事は楽しめないと駄⽬ということですね。もう間違いなく⾔えるのは、「楽しめない奴は、絶対にクリエイティブに考えられない」ということです。⼊社初⽇に新⼊社員に伝えるのは、とにかく楽しんでほしいと。悩みは抱え込まないで、すぐ上司や同僚に相談してほしいですよね。

僕はゴルフでいつも(スコア)100を切れなくて、練習してもなかなか上達しないんですよね。それは僕がゴルフ⾃体を楽しんでなくて、(ビジネス上の)付き合いでやっているからなんですよ。でも仕事に関しては、たとえどこかに閉じ込められても、携帯1台あれば喜んでやると思います。

この 7⽉に英会話のレッスンでフィリピンのセブ島に1カ⽉滞在しましたが、レッスンのない休⽇にも仕事をしていて、ミーティングを23本⼊れた⽇もありました。英語の先⽣に「ミスター・タダイシ、あなた⽇本でもそんな⾵に仕事しているの?」って聞かれたので、「好きでやってるだけだから」と答えたら、「だから成功するのね」と⾔われて。⾃分は⼼から仕事が好きなんだなっていうのを、セブ島で気づかされましたね。正直、仕事のほうが英語の勉強の100倍楽です(笑)。「VALX」が伸びるのは、根底にこのビジネスが好きだということがあると思いますね。だから社員たちにも仕事を好きでいてほしいですね。

社⻑がすべきことは空気作り

──レバレッジの平均年齢は28.2歳と若いですが、そういった若い社員に仕事を任せられるのも⼤きな強みですね。

僕の想像をはるかに超えてやってくれるから、⽬標設定も全部任せています。僕が設定すると彼らの⽬標を下げちゃうような気がして。話を聞いてみると、⽬指すところがすごく⾼くて驚かされますよ。

任せること=強さの秘訣じゃないでしょうか。⾃由でないと、⼈間の脳はイノベーションを起こさない。誰かに監視されて、⾔われたことをそのままやろうとすると、それが障害になるんですよね。結果を問わずにやらせてみて、信じて待つっていうのが⼀番だと思います。

──実際に任せてみて、想像と少し違ったような仕事の結果になったときはどうされるのですか?

報告や確認をするコミュニケーションの機会は結構あるので、やっぱりちょっと違うなと思ったら修正できます。僕がアドバイスするだけでなく、外部のプロフェッショナルをアサインして、知⾒を集めて進めてもらっているので、知識はいくらでも吸収できるんですよ。あとは、その担当者がどこまでやるか。その⼈がもう突き抜けちゃえば、いくらでもやるんですよね。

──「突き抜ける」と「熱狂」は、只⽯さんのテーマなんですね。

ミッションの中に「熱狂」という⾔葉が⼊っている会社なので、集まってくれる⼈みんな⼼から⼈⽣に夢中になりたい⼈たちなんですよね。本当にいい仲間に恵まれたなと思っています。

他社を⾒ていると、もっと20代の⼦たちを信じて任せればいいのになって思いますね。変に年配がしゃしゃり出てきて、⾃分のやり⽅をクリエイティブな若い世代の⼦たちに押し付けてチェックして……というようなことをしていたら彼らの崇⾼な脳は動かないですよ。

レバレッジの採⽤の基準はたった2つ。素直で、熱いこと。素直だと何でも吸収してくれるし、熱いからこそ(仕事に)思いっきり取り組んでくれます。まわりのみんなが全⼒でやっているから、⾃分ももっとやってみようっていう相乗効果でレバレッジを前進させていると思っています。

商品開発への思い

──「VALX」が成功した最⼤の理由は何だとお考えですか。

他のD2Cブランドの⽅々に伝えたいのは、⾷品、健康・美容⾷品、アパレルなど、それぞれのジャンルや領域で、とにかく⼀番を⽬指してほしいですね。そうすることで、よりクリエイティブになるし、より知恵を絞るようになるし、広告に頼らなくなります。広告に頼っていたら、絶対⼀番になれないです。このページを読んでくださる⽅々には、会社全体で⼀番を⽬指すことを本気で考えていただきたい。それが今のチームのメンバーを⿎舞して、本当にクリエイティブな発想につながると考えています。

──只⽯さんがD2Cビジネスをする上で、最も⼤事にしていることは何でしょうか。

本物を作ることへの追求。これに尽きます。本物を作るための商品開発がD2Cマーケティングにおいては70%から80%ぐらいだと考えています。原価なんて気にしては駄⽬だと思うし、今は本当にいいモノだったらある程度⾼くても買っていただけると思っています。

世界のマーケットで競争したい

世界のマーケットで競争したい「会社全体で⼀番を⽬指すことを本気で考えていただきたい」と只石氏

──只⽯さんとレバレッジはまだ夢の途中だと思います。今後はどういったことに注⼒していきたいでしょうか。

やはり世界のマーケットで戦って、⽇本発ブランドとして世界⼀になりたいです。僕は⽇本という国には本当にポテンシャルがあると思っていますが、競争が得意ではないですよね。僕はずっと「⽇本⼀を獲る、世界⼀を獲る」と唱えてこれまでやって来たように、競争が⼤好きな⼈間なんです。だから、世界のマーケットでも⼀⽣懸命に戦えば勝てるのではと⼼から信じています。

まずはプロテイン、サプリメントのD2Cで世界⼀を獲りたいです。そうすれば、フィットネス⼈⼝も勝⼿に増えると思うんですよね。⾼校球児は、野球の素晴らしさを世の中に伝えたいために甲⼦園優勝を⽬指しているわけではなくて、あくまで⽇本⼀を⽬指して⽇々汗を流していると思いますが、我々もまず世界⼀を⽬指してやっていきたいですね。後のことは世界⼀を獲ってから考えます(笑)。

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