創業10周年のBAKEが挑戦するブランドの確立と新たなファンの醸成

藤井竜太朗【MIKATA編集部】

株式会社BAKE ブランドプラットフォーム事業部 部長 西岡純一氏

焼きたてチーズタルト専門店「BAKE CHEESE TART」を皮切りに、焼きたてカスタードアップルパイ専門店「RINGO」、バターサンド専門店「PRESS BUTTER SAND」など次々と大ヒット菓子ブランドを作り上げ、今年で創業10周年を迎えた株式会社BAKE(以下、BAKE)。売上9割減に追い込まれたコロナ禍を経てECへ本格参入し、この10月にはEC販売を基軸とした新ブランド「しろいし洋菓子店」も立ち上げた株式会社BAKEのブランドプラットフォーム事業部 部長の西岡純一氏に同社のデジタル新戦略とこれからのBAKEについて話を聞いた。

複数ブランドのこだわりが1カ所で体験できるECサイトに

——設立10周年戦略の一環である「しろいし洋菓子店」の立ち上げを機に、ECにいよいよ本腰を入れていくとのことですが、やはり新型コロナでの売上の落ち込みが理由で、ECに本格参入することを決めたのでしょうか。

コロナで各店舗が売上の状況も厳しく、多くの店舗を閉店せざるを得なかったということもあるので、デジタルシフトが進むことを見越して世の中に合わせた対応を当社もとりたいというところもあり、2020年の6月に公式オンラインショップ「BAKE the ONLINE」を立ち上げました。

「今の時代に合ったBAKEらしいブランドを出したい」という思いから誕生した「しろいし洋菓子店」

ECサイトが重要なマーケティング機能の一つに

——当時の店舗主義ビジネスでは「BAKE CHEESE TART」「RINGO」「PRESS BUTTER SAND」などで「1ブランド1プロダクト戦略」を採用していましたが、2020年からは個別のブランドではなく、全体を「BAKE INC.が手掛ける菓子」として見せる「マスター・ブランド戦略」にシフトしました。なぜこのような戦略をとることになったのでしょうか。

例えばPRESS BUTTER SANDが好きな方にも、RINGOのような他の商品を一緒に訴求することで、当社の他ブランドにも興味を持っていただくほうが戦略的には良いのではないかという判断ですね。

BAKE CHEESE TART、RINGO、PRESS BUTTER SANDの各ブランドそれぞれについてきてくださったファンの方々にも、いわゆるコーポレートブランド(BAKE INC.)として認知していただきたい。それを実現させる手段の一つとして、BAKE the ONLINEは各ブランドの商品を集約し、全てBAKE INC.が手掛けるブランドとして見えるようにしています。

統合されたBAKE the ONLINEのトップページ

——各ブランドを一つにまとめたことで、社内やお客様からはどんな声が入ってきていますか。

PRESS BUTTER SANDが好きなお客様が、初めてBAKEのチーズタルトを食べて、「こんなおいしいのがあったんだ」といったお声をいただけることも徐々に増えていて、当社の他ブランドを見ていただけるようになってきているのだと思います。

当社では、実店舗は「購入していただく場」という機能が主だったので、お客様からお声をいただけることは実感できることが少なく、食べた後の感想を聞けるのは本当にECの強みだと実感しています。なので、ECサイトがすでに重要なマーケティング機能の一つになっていて、当社の要と言っていいと思います。

これまでBAKEでは、お客様のご意見から発想を得てプロダクトを作るというよりは、社内の「こういうものを作りたい」というクリエイティブ志向で、製品を作って出していたので、どちらかというとBAKEからの訴求が多かったんです。ただ、時代が変わっていく中で、「そろそろマーケティング視点を入れて作っていかなければ」という機運が高まり、現在のような体制になりました。

BAKE the ONLINEにおいて、お客様の声を収集できる口コミ機能などはかなり力になっていて、このBAKEというブランドが変わろうとしているタイミングにおいて、かなり重要なツールになってきております。

事業成長させていくためにも、買ってくださる方に喜んでいただくことや、お客様が考えていることをしっかりとくみとって提供することが売上に直結してくるのではないでしょうか。

——お客様の直接の声は何物にも代えがたいですね。

本当にそう思います。良い意見をくださる方もいらっしゃいますが、ご指摘をいただくこともあり、我々が新しいアクションや次の一手の参考にしているのが、そのお客様のご要望なんです。

例えばECだと、お客様のご要望で手提げ袋をつけたり、配送のリードタイムも短くするなど、お客様からいただく声を参考に、我々も成長していることを実感しています。

BAKE INC.のOMO戦略の概要

BAKEのこれから

——実店舗とECのOMO(Online Merges with Offline、オンラインとオフラインの融合)をさらに進めていくとのことですが、どういったことをやっていくのでしょうか。

まず、ポイントサービスの共通化や「お客様がどういう購買体験を必要としているのか」ということを掘り下げて動いていきたいと思っています。

自分がお店に行くときも、事前に在庫があるかどうかを確認したいと思うので、お店に行く予定があればお店で購入、お店に行く予定がなければECで購入できるという、状況に応じた選択ができるような状態にしていきたいですね。

BAKE INC.のオウンドメディア「CAKE.TOKYO」

——実店舗は海外に19店舗(国内は67店舗)あるそうですが、越境ECの予定はありますか。

越境はやりたいとは思っているんですが、まだできていない状態です。海外ではアメリカや中国、韓国、フィリピン、シンガポールを中心に出店していて、それぞれの地域のお客様からの支持は得られている状況ですので、なるべく早くやりたいと考えています。

——今後はどういった展開をされる予定でしょうか。

現在当社で運営しているWebメディアの「CAKE.TOKYO」に掲載した商品を、BAKE the ONLINEで販売できるようなスキームを作っていきたいと思っています。 BAKEを知っているファンはリピートしてくださいますが、新規のファン獲得という意味では、他店のお菓子を発掘してオウンドメディアに掲載して入れ込んでいくことで他店のお客様を「BAKE the ONLINE」に流していけるような仕組みを作るのは、地域創生にもなりますし、当社として新しい挑戦になると考えています。

公式オンラインショップ「BAKE the ONLINE」はこちら