【比較してみた】Amazonと楽天の読み放題〜お得なのは?(2016年8月18日調べ)

ECのミカタ編集部

時代の流れと電子書籍

 先日、楽天株式会社(以下、楽天)とAmazon.co.jp (以下、Amazon)が、定額制の電子書籍読み放題サービスを開始したことを発表した。楽天が提供するサービスは「楽天マガジン」、Amazonが提供するサービスは「Kindle Unlimited」である。

 現在においてECでモノを販売するだけでなく、ライブチケットなどといった“形”では残らないコトを提供する企業が増えている。実際に消費者もモノ消費からコト消費へとシフトしてきている。書籍や雑誌などもその1つで、電子機器上で本の物語や、雑誌などに記載されている情報を提供することで、消費者にはモノではなく“コト”の価値を与えている。

 以前に、電子書籍の読み放題化をAmazonが実施するという噂が相次いだ。株式会社ジャストシステムが発表した「モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2016年6月度)」によると、当時提供が噂されていたAmazon電子書籍読み放題サービスについて、認知率は43.5%であった。 また、「興味がある」と回答した人は19.6%、「知っているが興味はない」と回答した人は23.9%という結果になった。

 さらに、電子書籍自体に「あまり関心はない」または「利用するつもりはない」と回答した人の内、Amazonの電子書籍読み放題サービスを知り「電子書籍利用にかなり前向きになった」と回答した人は5.0%、「少しは前向きになった」と回答した人は20.5%であった。

 まだまだ完全に普及しているとは言い難いが、電子書籍読み放題サービスに関心を寄せている人が増えたのは確かだろう。また、「楽天マガジン」やAmazonの「Kindle Unlimited」を早速申し込んだという人が筆者の周りでも何名か見受けられたため、電子書籍読み放題サービスのニーズが確かにあったのも事実だ。

 そこで今回発表された「楽天マガジン」と「Kindle Unlimited」、両者にどういった違いがあり、サービスごとのメリットはどこになるのかを比較していく。

Amazon「Kindle Unlimited」と楽天「楽天マガジン」比較

Amazon「Kindle Unlimited」と楽天「楽天マガジン」比較詳細は下記のURLからどうぞ。(https://ecnomikata.com/knowhow/detail.php?id=10619

 楽天が提供する「楽天マガジン」とは、定額制の電子雑誌の読み放題サービスである。元々楽天は、総合書店の「楽天Kobo」、コミック専門の「楽天マンガ」を運営しており、今回の「楽天マガジン」も加えてユーザーの多様な読書スタイルとニーズに応えるとしている。利用料は月額410円、年間3,888円だ。月額と年間が選べるということは、個人の利用目的に合わせて選択することが可能である。通常の年間利用料を計算すると、月額410円×12ヶ月で4,920円のため、継続的に利用する場合は大幅に費用を抑えることができる。

 一方でAmazonが提供する「Kindle Unlimited」は、定額制のKindle電子書籍読み放題サービスである。Kindleバイス・プレジデントのデイビット・ナガー(David Naggar)は「もう何を読むか迷う必要はありません。Kindle Unlimitedは新しい本と出会うための、非常にシンプルでお得な方法です。」とコメント。利用料は月額980円だ。楽天と違って年間契約はないため、計算してみると11,760円になり、「楽天マガジン」よりも割高になると言える。

 電子書籍ジャンルで見てみると、「楽天マガジン」は電子雑誌に特化しているため、雑誌のみ11ジャンルである。中身はファッションやビジネスからグルメ・トラベル、スポーツ・アウトドア、趣味・娯楽などと充実している。女性ファッション雑誌の「CanCam」「non-no」や、グルメ・トラベル雑誌の「おとなの週末」や、ビジネス・経済雑誌の「週刊エコノミスト」などといった有名な雑誌も揃っている。興味関心がある様々な分野の雑誌において、情報収集を行うことができるのだ。

 一方の「Kindle Unlimited」は、書籍8万冊以上・洋書120万冊以上・コミック3万冊以上・雑誌240誌以上・短編作品といった多くのジャンルの電子書籍を読むことができる。「楽天マガジン」より種類は圧倒的に多く、池井戸 潤、葉室 麟、石田衣良、堀江貴文、北条 司、手塚治虫などの数多くのベストセラーやコミックも定額で何度も読むことができる。「Kindle Unlimited」は、利用者と電子書籍との出会いの場を提供しているのだ。

 両者の独自性の面を見ると、「楽天マガジン」はキュレーション・コンテンツの記事まとめを提供している。記事まとめとは、季節やトレンドを踏まえて読者が興味を持ちそうなトピックの記事を複数誌から選ぶ。そして記事のポイントを要約して紹介するという、独自のコンテンツである。これにより、利用者は自身が欲しい有益な情報を、手軽に手に入れることができる。雑誌は情報収集のために利用されることが多く、記事まとめは「楽天マガジン」が雑誌に特化しているからこそ提供できるサービスだろう。

 また、「Kindle Unlimited」の独自性は、国立国会図書館所蔵の作品1万点以上を見ることができる。葛飾北斎の「富嶽百景」、広重の「名所江戸百景」などもあるため、今まで関わることのなかったようなジャンルに新しく出会う。そして日常に一風変わった彩りを生活の中に取り入れることができるのだ。

それぞれの特性を理解する

 比較してみるとそれぞれの特性は違っていた。「楽天マガジン」は雑誌に特化しており、利用者により効率的に有益な情報を提供することができる。そして「Kindle Unlimited」は電子書籍が豊富で、定番からニッチなジャンルまであるため、書籍を通して利用者に新たな出会いを提供している。しかし、どちらも利用者の生活を充実させるサービスであることは変わりない。

  現在ECにおいても“モノ消費”から“コト消費”へ移り変わっていることからも読み取れるように、段々とニーズが増えている電子書籍読み放題サービス。一概に“コト”と言っても、「楽天マガジン」と「Kindle Unlimited」のように場面は変わってくる。利用を検討している方は、自身が何を求めているのかをしっかり理解した上で、選択してみてはいかがだろうか。


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