豌豆公主にあの人気店が出店!終わる爆買いと進む越境

ECのミカタ編集部

豌豆公主 東急ハンズ

中国向け越境ECプラットフォーム「Wonderfull Platform(ワンダフルプラットフォーム)」を運営する、Inagora株式会社は、ショッピングアプリ「豌豆公主(ワンドウ)」にて、株式会社東急ハンズ(以下、東急ハンズ)の取扱商品の一部を販売開始した。

 今回は、東急ハンズの今後の狙い、これまでの展開、越境ECを行う際に大切なことを考えていく。

東急ハンズが豌豆公主に出店!

 「豌豆公主」は日本の商品に特化した中国向け越境ECプラットフォームで、中国ですでに人気のアイテムから、認知度が低い商品まで、SNS機能や様々なコンテンツを通じて浸透させることができる。また、「豌豆公主」は、商品をただ陳列・表示するだけでなく、1つ1つの商品の良さをコンテンツを活用して多角的に紹介し、販売することができることが強みとなっている。

 そのような点に注目し、今回東急ハンズは出店に至った。「豌豆公主」を通じ、「東急ハンズ」というブランドを中国ユーザーに届けることで、日本のライフスタイルを提案することを目指すという。

 現在は一部商品の販売に限定しているが、今後はブランド紹介ページや動画コンテンツを作成し、約150〜170SKUの商品を季節やライフスタイルに合わせて提案し、ユーザーの満足度の極大化を図るとともに、品目の増加を目指していくようだ。

越境ECの下地作り

越境ECの下地作り▲東急ハンズ外国語ホームページ

 ここまで、東急ハンズの「豌豆公主」出店について紹介した。次に、東急ハンズが海外進出のために行ってきた取り組みを振り返ることで、越境ECに向けた戦略を考えていく。

 まずは、上画像にある外国語対応ホームページだ。東急ハンズでは、国内を対象とした情報配信を積極的に行い、顧客との双方向のコミュニケーションを大切にしているが、その姿勢は海外においても同様で、多言語に対応したホームページを用意している。また、中華圏のTwitterであるWeiboで週に2回ほどの情報発信や、WeChatを活用することで来日見込客へのエンゲージメント作りなど、SNSを用いた施策を行ってきたのである。

 そして、帰国後に向けた施策としては、ベリトランス株式会社が提供する海外向け購入代行支援サービス「BuySmartJapan」を採用することで、海外配送を可能にしたという。

 さらに、今年の2月には、国内の一部店舗において、バイリンガル実演販売を行い、東急ハンズならではの”店頭おもてなし”を訪日外国人向けにアピールした。他にも、解説POPなどを外国語対応させることで、快適な買い物環境を作りつつ、商品が高品質・高機能・人気であることを伝えることにも成功している。

 このように、東急ハンズは、常に中国を意識した展開をした上で、「豌豆公主」への出店を戦略的に進めてきたのである。

終わる爆買いと進む越境

 今回、東急ハンズが越境EC施策を行ったことの背景には、”爆買い”ブームの終了も深く関わっているのではないだろうか。観光庁が今月19日に発表した「訪日外国人旅行者の意向調査」によると、2016年7月〜9月の中国人旅行者の買い物代金が減少傾向にあるそうだ。

 この背景について観光庁は、今年4月に中国で輸入関税が大幅値上げされたことや、消費傾向の変化により、化粧品・医薬品などの購入が増え、その一方で家電やブランド品の消費が落ち込んだことが影響していると説明している。

 そして、ブランド品などの消費が落ち込んだ原因としては、訪日中国人客における中間所得層の増加が関係しているだろう。香港スイス金融グループ「クレディ・スイス」は、中国の中間所得層が世界最大規模となり、その規模は約1億900万人に上ると発表している。その影響もあり、ブランド品よりも日用品の消費が増え、買い物代金が減少したのである。

 以上のことから、今では”爆買い”による消費はあまり見込めなくなっている。もちろん、訪日外国人の数は年々増加しているので、ある程度の消費は期待できるが、併せて行える施策として注目すべきはやはり越境ECだろう。日本交通公社の調査によると、日本を訪れた外国人旅行者が、旅行時に購入した商品を越境ECでリピート購入する割合は、約6割にも上るということだ。このように、越境ECによる消費増大など、今後のさらなる展開が期待できそうだ。

 ここまで紹介した”爆買い”の終了と越境ECの進行・拡大、また中間所得層による日用品の需要増大という情勢を読み、東急ハンズは「豌豆公主」へ出店したと考えることができる。

 そして、先ほど触れたように、東急ハンズは多言語対応ホームページやSNS対応など、”ファン作り”を行った上で越境EC施策を進めることで、スムーズな展開を可能にしたのである。最近では越境EC進出が気軽にできるようになっているが、ただ出店するのではなく、海外の情勢に注目しつつ、東急ハンズのような”ファン作り”施策を行った上で、戦略的に越境EC展開を行うことが大切だろう。


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